俺達はゲーセンへ遊びに行きました。
というわけで、凛花達はゲームセンター「ソエル」にやって来た。5人で。
宣言通りに母、麗はついてきた。
なんでも親衛隊は麗の存在を恐れているそうなので、近くにいさえすれば親衛隊は現れないだろうという話だ。
高校生が保護者同伴でゲーセンというのはなんとも恥ずかしいが、凛花の母はそこそこ若く見えるので一見わからないだろう事が凛花には救いだ。
そして麗の言うように、親衛隊は道中現れる事はなかった。
「へえ、このゲームは4人で遊べるのか」
進太郎の目に止まったのはソエル内の一角に設置された4台のとあるゲーム、それは4人対4人で遊べる対戦型のカードゲームだった。
周囲には他のプレイヤーは誰もおらず、今なら凛花達4人で遊べそうだ。
「よーし、それじゃあこれやってみようか?」
多数のカードを組み合わせて戦うリアルタイムストラテジー系のゲームであるそれは凛花の興味を多分に惹き、月光門と涼にも声をかけた。
2人も拒否はせず、早速スターターパックを購入して挑戦する事にした。
4人は負けた。
同時にスタートしたもののそれぞれ別のマッチングに割り当てられ、別の店舗の3人のプレイヤーとの共闘となった。
そして自分達はスターターパックの種族もバラバラのデッキなのに他のプレイヤーは多量のレアカードで構成されたデッキであった。
本来は腕前によってリーグが分けられ、凛花達4人と共に戦う事になるプレイヤーも同じく一番下のリーグにいるはずなのだが、たった今始めたばかりの凛花にさえわかるほど上級者の動きで嬲られた。
結果的に3対4となり手も足も出せずに負けてしまったのだ。
「よろしく頼むぞ」
「礼を言わせてもらおう」
「よろしくお願いしますね」
「は……? 冗談だろ……?」
試合終了後のチャットも慣れたもので、やはり初心者とは思えない手際の良さで煽られた。
つまりは初心者狩りにボッコボコにされ、初心者と組まされた初心者狩りにガッツリ煽られたわけである。
「この何もわからないままに蹂躙され理不尽に煽られる感じ」
「ああ、まさにアーケードゲームって感じするよな」
「弱肉強食、というわけですわね。よくわかりはしていませんが何となく理解はしました」
「私はちょっとどうかと思うんだが……」
初心者を叩き潰す彼らは一般的に悪である。
しかし、ある意味でそれは愛と言えるかもしれない。
彼らはこうして世の中は不条理であり不平等である事を教え、事前の情報収集の大切さを教えてくれているのだ。
そう、彼らは決して自分のリーグで歯が立たなくなった事の腹いせに初心者を狩ってストレス解消をしているわけではないのだ。
凛花はそう思った。
「って、思うかーーーー!! ふざけんなサブカ野郎共!!」
凛花は全ての怒りを握りしめ、その想いを力の限り叩きつけた。
「あっこらリン! 気持ちはわかるが台パンはいかんぞ台パンは!」
こうして凛花の400円はあっという間に吸い込まれてしまった。スターターパックを買った分を含めれば1000円近くになる。
高校生にはそれなりの大金を瞬く間に失い、怒りと失意のままに凛花は筐体から立った。
カードイラストは綺麗だし、プレイヤーの分身である主人公も複数から選べ声優も豪華であるため面白さが何もわからないまま終わったりしていないのは、凛花にとって救いではある。
「……今度来た時は徹底的に情報集めて俺がボコボコにする側になってやるからな!」
桜野凛花もオトコノコである。負ければ当然悔しいし、こっぴどければ酷いだけそれはなおの事。
復讐を誓い、もうちょっと初めてでも優しく遊べそうなゲームで進太郎達と遊んで帰るのだった。
「色々あったが、私はあの処刑人の彼とか好きだな、斧のデザインが特に」
夕暮れとなり、ステラから帰る5人は遊んだゲームの感想などを話し合いながら歩いていた。
最初に遊んだゲームも、それ以降に遊んだものもやはり誰かに楽しんでもらうために全力で作り上げたという想いは確かに伝わってくるのだ。
「私は……よくわかりませんでした。ああいうのはあまり馴染みがないもので」
「まあどう思うかなんて人それぞれだしな。……それはそれとして夏条手ぇ放してくれないかな」
当たり前だと言わんばかりに涼は凛花の手を握っていた。
それを見て、麗は笑う。
「凛花ってば、そんなに照れなくてもいいじゃない。誰も笑わないわよ」
「せめて笑いながら言うのやめてよ、母さん」
「これはそういうのじゃなくて、嬉しいからよ」
その嬉しがるのこそを凛花はやめてほしいのだが。勘違いだし。
そしてなぜか困り気味に月光門も麗に続く。
「まあ、私もそういった事は当人の自由だとは思うが……何だ、ほどほどにな」
「……あの、一応言っておきますけど付き合ってませんからね? 俺と夏条」
「ええ。まだ付き合っていませんわ」
「今後そういう予定があるみたいな言い方しないでほしいんだけどー!」
誤解を解くのが大変そうなので進太郎に助け舟を出そうかと視線を向けるが、なぜか進太郎は悔しそうにしていた。
「くっ、俺がリンと夏条がガチの恋をするよう言ってしまったとはいえ、まるでリンを取られたような気分だ……! あっでもこれはこれで興奮するものがあるな」
新たな性癖を発見した進太郎は独自の世界に入ったようで、楽しそうに妄想を始めた。
しばらく帰って来そうにないので、凛花は諦めて今は流れに身を任せる事にした。




