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俺はVRMMOで男と結婚する事になりました。  作者: カイロ


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俺は生まれ変わった夏条の話を聞きました。

 今日の凛花のお弁当はウィンナーとエリンギの炒め物がメインだ。

 醤油とちょっぴりの砂糖で濃いめの味付けがなされたそれは、ご飯との相性がバツグンで実に食が進む。

 母の作るおかずの中でもかなり好きな部類に入るが、今日ばかりはまだほとんど手を付けていない。

 なぜかと言えば、それは目の前のニコニコ笑っている人物が要因である。気になって食事どころではないのだ。


「なんで男の制服着てるんだ、夏条」


 屋上で夏条を発見した時から気になっていた。どうしてセーラー服ではなく学ランなのか。

 おそらくまず一番に聞かれるとわかっていたその質問に、夏条は胸を張って答える。


「私、前に進太郎さんたちと別れた時、言いましたよね。進太郎さんの彼女になるのは諦めるって」


 ああなんだ、そういう事か。凛花はどういう事か納得したとようやくお弁当に手を付け始める。やはり、いつも通りに母の作るご飯はおいしい。一気に頬張る。


「だから今度は男装してアタックってわけか。この2週間は男物の制服が届くまでずっと待っていたって事だな。悪いが、その程度じゃあ俺は……」

「ふっふっふ、甘いですわ進太郎さん。私、その程度で済ませるような甘い人間じゃありません。やるからには全力で、です」

「どういう事だ……?」


 不敵な笑みを浮かべる夏条に、進太郎は眉を顰める。

 そして、凛花はそれをお弁当食べながら観客気分で見ている。

 概ねの話をすれば、これは夏条と進太郎のラブコメみたいなものだろう。自分が入り込む必要はないんじゃないかと思った凛花は、完全に部外者の気分であった。


「私、男になったんですわ」

「いや、服装だけでそう言われてもなあ」

「いえ、ですから私はとことんまでやりました。具体的に言うとついてます」


 吹き出した。まさに言葉の通りに噴飯である。進太郎の顔に思いっきりぶっかかる。


「……リン、食べ物で遊ぶのはよくないぞ」

「……っ仕方ないだろ今のは! いきなり横っ面ぶん殴られたの変わんないって!」


 凛花は持っていたポケットティッシュを進太郎に渡す。顔についた米粒を拭い去りながら、進太郎は首を横に振る。

 夏条の衝撃のカミングアウトに、凛花は固唾を飲んだ。ついでに口の中の物も飲み込んだ。


「ともかく、信じられんな」

「見ます?」

「やめて! 俺がご飯食べづらくなるから!」


 ベルトを緩め始めた夏条に制止をかける。凛花のお弁当のおかず的に、おいしく頂けなくなる気がしたからだ。

 まあ、ズボンの下がどうなっていようと凛花としてはどちらにしても食事どころではなくなってしまうので止めるよりほかないのだが。


「……とりあえず、夏条が男物の制服を着ている理由は分かった。が、俺は男に興味はないから、無駄な努力という事になってしまうな」

「……? 進太郎さん、凛花さんが好きなのでは?」

「ああ。だが俺が好きなのは凛花であって、男が好きだという話ではないんだ」

「なるほど」

「わかるんだ……」


 凛花にはよく分からなかった進太郎の性的嗜好だが、夏条はすぐに理解できたらしい。

 やはり、この二人は似合いのカップルになれるのでは、と凛花は改めて思う。


「そういうわけでな、そこまでしてくれた夏条には申し訳ないが、俺は」

「いいえ、まだ進太郎さんも私も納得できる方法が一つ、ありますわ」

「ほほう、それはどんなのだ?」


 進太郎が聞くと、夏条は凛花の手を取って抱き寄せた。下の方が今どうなっているのかはともかく、割とかわいい部類に入る女性の顔が近付き、凛花はドキッとする。


「まず、私と凛花さんが付き合います」

「ほう」

「そして進太郎さんが凛花さんと付き合います」

「え、ちょっと夏条さん」

「進太郎さんは凛花さんと繋がり、私も進太郎さんと間接的に繋がれますので、誰も不幸にならない関係が築けますわ」

「俺! 俺がとんでもなく不幸じゃないですかね!?」

「なるほど……!」

「なるほどじゃねーんだよ!」


 進太郎と夏条は不幸にならないかもしれないが、二人分の不幸を凛花が押し付けられている。誰も不幸にならないとはとても言い難い。

 ただ、夏条は相当な美人ではある。髪も綺麗だし、握られている手だって柔らかくて女の子という感じしかしない。

 が、今は男になってしまったらしい。進太郎が説明しなかったのも悪いが、原因の片棒は凛花が担いでいたのも事実。だからと言って飲める提案かと聞かれればそんな事はない。

 進太郎に助け舟を出そうかとするも、乗り気な返事を返していた。このまま地獄のサンドイッチの具になってしまうのかと思った時。


「すまんリン、冗談だ。お前の同意なしにはそんな事せんさ」

「し、心臓に悪すぎるよ……」


 進太郎の宣言に、凛花は安堵してため息を吐き出す。

 そして進太郎は夏条に向き直って言った。


「そういうわけで、夏条の提案を通すには、まず凛花が夏条を本気で好きになってから、という事にさせてもらおう」

「えっ完全に蹴ったりはしないのか」

「だって俺のためにわざわざ性別まで変えたんだし、このくらいの条件付きでOKするのは妥当なとこだろう」

「うん……それもそうだよな」


 夏条がここまでする原因の一端である凛花も、流石に頷かざるを得なかった。

 そして、言い渡された条件を胸を叩いて夏条は飲む。


「わかりましたわ、凛花さんが私の姿を見るたびに例えそれがどこだろうと自分から尻の穴おっ広げておねだりするくらいのベタ惚れっぷりに仕上げて見せましょう!」

「そ……そんな変態にはならねぇよ俺!!」


 こうして、厄介だった夏条涼は心を改め、超厄介な夏条涼として再び学校へ通う事となった。

 自分に恋してくれる人がいればいいなあ、なんてたまに思っていた凛花だったが、なんで男ばっかりなんだ、と心の中で叫ぶのであった。

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