俺は結婚式当日を迎えました・・・・・・が。
毎度ご利用ありがとうございます、こちらはミリオンスターワールド運営チームです。
本日は兼ねてより決定しておりましたメンテナンス兼アップデートを行わせていただきます。
そのため誠に勝手ではありますが下記時間においてゲームのプレイおよびログインができない状態となります。
お客様により快適にゲームをプレイしていただくため、より遊びの幅を広げるためですので、ご理解とご協力の程を何卒よろしくお願い申し上げます。
ミリオンスターワールド運営チームより
メンテナンス予定時間17:00~22:00
「ぬあああああああああああああッ!!!!!」
学校が終わり、全速力で帰宅した凛花は5時半には家に着いた。
そして、パソコンの電源を入れてMSWを起動しようとしたら、上記の文面だ。このまま死滅するのではないかという咆哮を上げながら、怒りのあまりになぜかブリッジをきめた。
「ちょっと凛花、あんまりうるさくしちゃ駄目でしょー。一体なにやって……なにやってるの?」
「いや……それが自分でもよくわかんない」
叫びを聞きつけて凛花の部屋に入ってきた母に見事な反りのブリッジを見せてしまい、我に返ると何でもないからと母を部屋から追い出した。
母が階段を降りて居間に戻ったのを聞いて、一人になったと確信してからもう一度パソコンの画面を見る。やはり先ほど見たのと同じ文面がそこにある。
最悪だ。なんでよりによって今日なのか。というかどうしてそんなプレイヤーが一番増え始める時間からメンテナンスを開始するのか。
凛花は慌てた。このままでは今日中に進太郎と結婚できなくなってしまう。いや別に進太郎との結婚を待ち望んでいるわけではないし、正確に言うならばLinkerと進化カードの結婚式だ。
それはともかく、これ以上自分の勝手で親友を待たせたくないと思った矢先にこれだ。運営側にも事情はあるだろうが、なんで今日この時間からなのか。
しかしこれ以上運営に文句を言う意味もない。時が過ぎるのを待つしか解決策がない以上、凛花はただ待つだけだ。
昨夜の決意が曲がらないように、凛花はメンテナンス終了のその時をただただ待つ事にした。
毎度ご利用ありがとうございます、こちらはミリオンスターワールド運営チームです。
本日17時より行っておりますメンテナンスですが、致命的なエラーを発見したためメンテナンス期間を延長させていただきます。
お客様が一刻でも早くゲームがプレイできますようスタッフ一同鋭意作業中でございますので、どうかご理解をお願いしたく存じます。
つきましては延長の謝罪といたしましてお客様全員にお詫びの品を配布させていただきます。
ご理解とご協力をお願いいたします。
ミリオンスターワールド運営チームより
メンテナンス予定時間17:00~未定
「はぁぁぁぁーーん!!!!」
10時になり、パソコンの電源を入れた凛花の目に飛び込んできたのはそれだった。思わず、再び奇声を発してしまう。
不幸は重なるとよく言うが、こうも立て続けとあっては笑ってもいられない。
「こらぁ凛花、もう遅いんだから大声出したら……なにそのかっこう」
「……さあ、なんだろ」
なぜか凛花は三点倒立をしていた。麗に言われて気付いたので、無意識の怒りというやつがとらせた行為だろう。
ともかく、母を部屋から追い出すと月光門へスマホで連絡をとってみる。もう寝ていてもおかしくない時間だが、多分起きているだろう。
予想通り、数コールして繋がった。
「あ、先輩見ましたか? メンテ終了未定なんですって」
「うん、私もさっき見てね。今までバタバタしていた所だよ」
「ああやっぱり……」
ケーキを送るだのという話をしていたのを忘れなかった凛花はそれを聞いて安心した。月光門の方はというとまるで安心とは程遠い心境だろうが。
「そういうわけで再び直前になってキャンセルしてしまう事になったんだが、お店の人、すごく怒った声だったよ。電話越しでもわかるくらいだったし、また電話かけるの怖いな……」
「あの、先輩の気持ちだけで充分なんで。何か送ったりとかしなくてもいいですからね」
「む、そうかね……」
月光門の気持ちを無駄にしてしまうようで言うか迷ったが、やっぱりそこまでしなくていいと凛花は断った。言葉は残念そうだったが、口調はどこかホッとした様子だった。
というかこのまま本当に送られてきたら凛花はめちゃくちゃ困るのだ。
麗の目にも入るだろうし、二人でケーキを食べる事になるだろう。そこはまだ良いのだ。どうせ凛花一人でケーキワンホールとか食べきれないし。
しかし、なんでケーキなんてものが送られてくるのかは説明しなくてはならない。
正直に「進太郎との結婚祝いだ」と言ってみたらどうだろう。何がどうだろうだ、どうもこうもありゃしない。
何かごまかすとしてももし月光門かケーキ職人が気を利かせて「結婚おめでとう」なんてチョコ文字の書かれたプレートが乗っていようものなら誤解は避けられない。確実にめんどくさい母を相手する事になる。
「うむ……凛花くんがそういうのであれば、私からは言葉だけ送らせてもらおう。おめでとう」
「あはは、まだ早いですよ先輩。結婚は、まあ多分明日ですね」
その後軽く談笑してから通話を終了した。
凛花と同じく公式を見ているだろうが、次は念のために進太郎へ電話をかけようとして、視線に気付いた。
麗がドアの隙間から目を見開いて凛花を見ていた。おそらく、今の会話を聞いていたのだろう。
そして間違いなく、勘違いをしているのだろう。
「りんか……結婚するの」
「ちょ、違……いや違わないけども!」
「大変だわ……! お父さんにお電話しなくっちゃ」
「違うーーーー!! いやだから違わないけどもそうじゃなくってぇーー!!!」
大急ぎで父に連絡しようとする麗を止めて事情を説明するのに3時間はかかった。
さすがにもう電話するような時間ではなくなってしまったので、凛花は進太郎へは電話せずにそのまま寝た。




