俺の母は親衛隊にも負けませんでした。
「いらっしゃい、あなたが月光門さん?」
約束の時間になり、月光門は凛花の家を訪れた。玄関が開くなり麗にやたらとキラキラした目を向けられて、やや動揺している。
「え、ええ、はい。月光門と言います」
「そして下の名前はあかりと言います」
「そのまんまひらがなであかりです」
「もひとつ言うとその自分の容姿に似つかわしくないかわいらしい名前を若干コンプレックスに思っています」
「あらぁ、そうなのね」
「……ええ、まあそうなのですが」
そして、それが当然と言わんばかりに親衛隊もまた月光門の後ろについてきている。
「それで、後ろの子は誰かしら? 呼んだのは月光門さんだけなのだけど」
「フッ、我らは月光門先輩親衛隊。月光門先輩が行く所どこまでもついて行く者」
「例えそれがトイレでもお風呂でも上級生の教室でも。全てを知るためどこまでも追いかけ、月光門先輩に襲い掛かる異常者を排除するのが我々の役目」
「ちなみにゲームの中ではIPごと永久BANされたためどこまでもの範囲外な者」
「「「それが、我ら月光門先輩親衛隊!!」」」
「あらあら、こんなに愛されてるなんて、大変ね月光門さん」
「いえ、その、彼女らにも悪気があるわけではなくてですね……」
謎の決めポーズをとる親衛隊を見て、麗は微笑んだ。
それから、月光門を家の中に上げる。
「なんにせよ今日うちに招待したのは月光門さんだけ。凛花の友達の進太郎くんは別だけど、あなた達はお家に帰ってくださいな」
そう言って麗は月光門を抱きしめられた。胸の間に沈められるように抱かれて、月光門は窮屈そうにしている。
当然親衛隊は黙ってそれを見ていないし、聞きもしない。
「それできない! 我らは月光門先輩をお守りするための存在! いかなる場合でも月光門先輩から離れる事はできないのだ!」
「そうだ! そして月光門先輩を乳でサンドするのはお止めいただきたい! 月光門先輩が何かに目覚めるやもしれないから!」
「我々は一向に構わないが! 親衛隊としてはお止めいただきたい!」
月光門の予想通りに親衛隊の態度は頑なだ。そう簡単に態度を変えるとも思えないが、果たして麗はどうやってこれを言い包めるつもりなのだろうか。
「そう。好きな人を守りたいってのは立派だと思うわ。でもね……」
一度月光門を放してから親衛隊の3人を抱えるように寄せ、小声で何かを囁いた。
「……ね? それに好きな子には嫌われたくないでしょう?」
なにごとかを言い終えた麗がそう締めくくると、親衛隊は全員平静を装うもどこか怯えた様子だった。
「ま、まあそこまで言われては我らも親に顔を見せに行くのもやぶさかではあるまい」
「力に屈したとかそういうのではなく、ここならば月光門先輩も我々なしで安心してすごせるだろうと判断したまでの事」
「そんなわけで我々は家に帰って月光門先輩の無事をお祈りしていますので、これにて!」
そう言って親衛隊の3人はそそくさと出て行った。
月光門は素直に驚いた。何を言っても怖い物なしの暴風のようだった彼女らが一言で逃げ帰るとは。当然、何を言ったのか非常に気にかかる。
「あの、凛花くんのお母さん、いったい彼女らに何と言ったのです?」
どんな脅しをかけたのだろう、今後の参考になればと月光門は聞き出そうとするが、麗ははぐらかして教えなかった。
「大した事は何も言ってないわ。ただお家の場所を確認して、最近火事が多いから気を付けてねって言っただけ」
きっと、ただあなたに嫌われたくなかっただけなのよ、と笑って言われ、それ以上は何も話すつもりもないのか家に上がるよう急かされた。




