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あなたの隣に  作者: ミサ
14/23

誤解された想い

 あれから2週間が経った。

 朝倉君からは連絡が無い---どうしよう?私から連絡したいけど何て言う?

 会いたいけど、彼女でもない私から電話を貰っても迷惑かも………

 食事だって【アンジェリア】のモデルとして、きちんと食べてもらおうと思っての事だし……それさえ最近はないから、もしかしたら2人きりになりたくないのかもしれない。

 会えるとしたら次の企画会議の時になる。まだ2週間も先---私はため息をついた。



 それでもやっぱり彼に会いたくて---私はその日の夕方、久しぶりにカレーを作った。

 多めに作り『たくさん作ったからお裾分け』という、建て前で彼の家に行こうと思っていた。

 そんな私が出かける準備をしていると、家のインターフォンが鳴った。

 誰?セールスなら速攻追い返すつもりで、玄関を開けると彼---朝倉君が立っていた。

「え?朝倉君……どうしたの、いきなり」

 私は予期せぬ出来事に驚いたけど、反面会いたかった彼が目の前にいる事が嬉しかった。

「う…ん、ちょっと頼まれ物が---」

「頼まれ物?」

 朝倉君は持っていた紙袋を私に差し出した。

「これは?…」

「リョウさんから預かって来た。借りてたハンカチとお礼のお菓子だって言ってたぞ」

「何で、朝倉君がリョウさんと?」

「今日、【ディア】の編集部に仕事で行った時に彼に会ったんだ」

 彼の説明を聞き納得した私は、紙袋の中身を見た。

 綺麗に折りたたんだハンカチと有名なメーカーのお菓子のギフトが入っていた。その中にカードも入っていて『ありがとう、ほんの気持ちですが』と直筆のメッセージが書いてあった。思わず笑みが零れた。

「わざわざ、返してくれなくてもいいのに---リョウさん律儀だなぁ」

 私はカードを見ながら呟いた。

「じゃ…俺はこれで…」

 朝倉君はそう言うと、背を向けて帰ろうとした。

「え?帰るの?」

 私は思わず朝倉君に呼びかけた。

 何で?久しぶりに会ったのに---

 彼は呼び止められた事が意外だった様に振り返った。

「一応、用は済んだから---」

「今日、カレー作ったの!作りすぎちゃって、1人で食べきれないから食べてくれない?」

 あぁ……自分が必死なのが解る……ちょっと恥ずかしい……

 だけど、私の思いが通じたのか朝倉君が頷いてくれた。それを見て思わず笑みが零れた。

「良かった!いつもご馳走になってて悪いなと思ってたから…今日、朝倉君の家におすそ分けで持って行こうかと思ってたんだ」

 朝倉君を家の中へ招き入れると、私は台所へカレーを温め直しに行く。

 彼はテーブルに着いて、私の方を黙って見ていた。

 視線が気になったけど、お皿を取り出したり、サラダを準備したりして気づかない振りをした。



 炊き立てのご飯と温めたカレーをお皿によそって朝倉君の前に置いた。それからサラダや福神漬けなども出した。

「食べて、味は保証しないけど」

 私はそう言うと、彼の向かいの席に座った。

「…じゃ、いただきます」

 朝倉君がカレーを口に運ぶのを、私はどきどきしながら見ていた。

「どう?」

「うん、美味いよ。辛さも丁度いいし」

「良かった。ねぇ、少し持って行って。さすがに1人で食べるには多いから」

「いいのか?」

「いつも、私が貰ってるんだからたまにはお返し」

 私はそう言うと、席を立ち台所へ行くと容器にカレーを移していく。

 朝倉君は綺麗に食べてくれた。

「ご馳走様でした。美味かった」

「朝倉君…少しは元気になった?」

 食器を片付けようとした朝倉君に、私は思い切って声をかけた。

 彼は黙ってこちらを見ていた。

「好きな人に…思われないって辛いよね---」

 彼の視線が辛くて私は思わず俯いてしまった。

「……麻生?」

 朝倉君が私に近づいて来るのが気配で分かる。私は思い切って顔を上げると彼を見た。

 思いの外、距離が近かったみたいで彼は後ろへ仰け反ってしまった。

「元気出してね、片思いの辛さは私もわかる−−−」

「お前…好きな奴いるのか?」

 朝倉君が間髪入れず聞いてきた。

 うっ………墓穴掘ったかも……思わず顔をしかめてしまった。

「それは…」

「もしかしてリョウか?」

 え?何でそこでリョウさんが出てくるの?

 思いもよらない人の名前があがりびっくりしたけど、これ以上私は彼の追求を受けたくなくて視線を逸らした。

「---やっぱり、そうなのか?」

 だから、違うんですけど---お願い!これ以上は聞かないで!

「朝倉君には関係ない……」

 彼の追求が怖くて、思わず口から零れていた。

 何故か、朝倉君はしばらく何かを考える様にじっと下を向いて黙っていた。

 その沈黙に耐え切れず、私は彼に呼びかけた。

「…?朝倉君…?」

 私の声にハッと我に返ると、彼は一気にしゃべりだした。

「そうだな…ごめん。俺には関係ないよな……リョウはいい男だよ。この前はみる目ないなんて言って悪かった」

 朝倉君---何、言ってるの?

「俺……応援するから」

「応援?」

 私は彼が何を言ってるのか、理解できなかった---応援って、何を?

「ああ…リョウと上手くいく様に応援するよ」

「いらない!---そっとしといて」

 朝倉君、どういうつもり?---私がリョウさんを好きと思ってる?応援って………私が彼を好きでも平気なんだ。

 私はショックで、思わず彼から顔を背けた。

 室内に沈黙が流れる。

「ごめん…余計な事だよな−−−俺、帰るよ」

「朝倉君、私は……」

 だめ!このまま誤解されたままじゃ---言わなきゃ『私が好きなのはあなたです』って。

 彼は、鞄を手にすると玄関へと向かった。

「じゃ、また。企画会議の時に」

「朝倉君っ」

 私は彼の後を必死で追う。

「ねぇ、待って!私は−−−」

「ごめんな。お前は大事な友達だから、幸せになってくれたらと思って余計な事言った。もし、何か悩み事とかあれば相談にはのるから言えよ」

 靴を履いてから朝倉君は真っ直ぐ私を見た。

 そうか……彼にとっては私は『大事な友達』なんだ。友達に『好き』って言われても迷惑なだけだよね?

 私は言いかけた言葉を飲み込むと、『わかった』と小さな声で答えた。

「じゃ…また」

 朝倉君はそう言うと、帰って行った。


 その夜、私は思いっきり泣いた。


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