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Eye of Glaia Online 〜ナイフ縛りが趣味の男は意図せず配信界をザワつかせる〜  作者: 天沢与一


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第1話:やたら丁寧なチュートリアルに従ってみる

 視界の端に現れた文章に従って声の方向へと進む。


 すると、開けた場所に籠を持った女性が怯えた顔で座り込んでいた。近くには緑色のぷるんとした物体もいる。


 スライム……かな?



「魔物よ!助けてっ……!」



 いかにも最初の敵って感じだ。


 攻撃方法は……あ、文章の中身が変わってる。


 チュートリアルに従ってイベントリを開き、練習用のロッドを装備して、スキルをスキルスロットに設定した。


 そしてこうなった。




《装備》

武器:練習用のロッド

サブ武器:なし

頭:なし

手袋:なし

外套:始まりのローブ

服上:始まりの服

服下:始まりのズボン

靴:始まりのブーツ

—————

攻撃力+10

防御力+30

素早さ+10


《アクセサリー(0/3)》

なし


《薬品スロット(0/3)》

なし


《スキル(1/3)》

ファイヤーボール




 どうやらこのゲームではプレイヤーステータスはなく、攻撃力や防御力などは装備品とスキル依存のようだ。

 ちなみに武器は攻撃力、靴は素早さ、その他装備は防御力が上がった。


 ちょっと珍しいシステムだ。


 命中補正とやらをオフにしてから改めて緑色の物体に向き合う。

 そいつはその場から動かずプルプルと震えていた。


 この女性、こいつの何に怯えてたんだ……?


 あまり倒す必要性を感じないけど、文章が《チュートリアル:魔物を攻撃しよう!》に変わったので、さっき設定したスキル名を唱える。



「“ファイアーボール”」



 ロッドから拳くらいの小さな火の球が飛び出す。緑色の物体に当たり、水が蒸発するような音がして消えた。

 代わりに、丸い緑色のボールみたいな何かがその場に残る。



『職業レベルがアップしました。

 クエストクリア条件を達成しました。』



 機械的な音声でシステムメッセージが流れる。

 あっさりレベルが上がったな。


 とりあえず緑色のボールを拾おうと手を伸ばした。しかし、手が触れた瞬間、ボールはその場から消える。


 え、なんで?


 ……あー、イベントリに入ってるわ。

 触った瞬間に自動的に拾う仕様か。


 試しにアイテムをタップしてみると、“ウッドスライムの粘液。初級回復薬の材料になる”と説明書きが出てきた。



「助けてくれてありがとうございます!貴方は私の救世主様です。お礼にこちらを差し上げます」



 差し出された瓶を手に取ろうとすると、やはり自動的にイベントリに入った。貰ったのは初級HP回復薬だ。

 ……これにさっきの粘液が使われてるんだよな?あんまり進んで使用したいと思えない。


 とりあえず指示通りに貰った薬を薬品スロットとやらに登録するけど。



「救世主様、実はまだウッドスライムがここら辺に居るみたいなんです。あと5匹ほど討伐してきて貰えませんか?」



 おそらくクエストなんだろうが、特に受注の選択肢は現れない。


 プレイヤーが自由に答えていいタイプのゲームなんだな。

 なんて返事しようかな。



「ありがとうございます!ではよろしくお願いします」



 まだ何も言ってないが?


 ……一定時間無視したら勝手に進むタイプか。


 チュートリアルに抗っても仕方がないので、森を散策して緑色のスライムを探す。


 といっても、チュートリアルだからかわかりやすくスライムの上に赤い矢印がついており、すぐに見つけられた。


 あえて離れた距離からファイヤーボールを撃ってみたのだが、体感15mほどで消えてしまった。真っ直ぐに飛ぶからだいぶ当てやすいが、遠距離攻撃はできないな。


 3匹倒すとまた職業レベルがあがり、新たにスキルを手に入れた。




〔スキル名〕ミスト

〔効果〕水飛沫を目の前に発生させる




 なるほど?


 次のウッドスライムに使ってみるか。


 えーと……あ、いた。



「“ミスト”」



 水飛沫が俺の1mくらい前に現れる。確かに目の前って説明書きがあったけども、本当に目の前だなぁ。普通に外した。


 もう少し近づいて、今度こそ当てる。しかしスライムは元気にプルプルと動いている。

 ……これ、攻撃用スキルじゃなくて、もしかして目くらまし用か?


 ウッドスライムの動きはめっちゃ遅いから必要ない。今のところ使えないスキルである。


 ウッドスライムを合計5匹倒すと左下のミニマップに小さい矢印が現れた。矢印の方向に進むと、女性がいた場所に戻って来れた。


 黙っていても進みそうだが、別に喋らない縛りをしている訳ではないので、普通に話しかける。



「倒してきたよ」


「ありがとうございます!お礼にこちらを差し上げます」



 今回は初級MP回復薬を貰った。


 1匹倒して初級HP回復薬を1つ貰えたんだから、5匹倒したら5つ貰えるもんなんじゃないの?ケチだな。


 その後もチュートリアルは続き、追加であと10匹いいですかと言われ、倒すと始まりの村に案内され、ドロップアイテムを売れる商店や回復薬を買える薬屋を紹介された。


 ウッドスライムの粘液は1個10G(ゴールド)で売却。薬屋には初級回復薬しかなく、HP用のもMP用のも1つ30Gだったので、とりあえず1個ずつ買っておく。これで俺の所持Gは100Gだ。


 買い物を済ますと、教会で祈ると良いことが起こるかもしれないと言われたので、矢印に従って教会に行く。


 そうして辿り着いたのは木造の小さな教会だ。


 中にはベンチが4つと石像が置いてある。


 石像に近づくと、《祈りますか?》と表示された。


 手を組んで目を瞑ればいいかな?



『ノスリよ。貴方はこれからこの世界を巡り、数えきれない出会いと出来事に触れるでしょう。その全てを私は“見て”います。どうか、この旅を楽しんで』



 なんか天の声が聞こえてきた。プロローグ映像でナレーションをやっていた女性の声だ。


 教会で祈ったら聞こえてきたってことは、相手は女神かなんかかな。


 しばらく待ってみても追加で声が聞こえて来なかったので、目を開ける。



「おや、救世主様。不思議な物を手に入れていますね」



 え、そうなの?


 イベントリを見てみるとグライアの目という知らんアイテムが入っていた。



「それをお持ちですと、いろんな人に自分の様子を見せることができるんですよ。ほら、あちらをご覧ください」



 村の広場に視線を向けると、先ほどまで何もなかった筈の場所に知らないプレイヤーが強そうな鬼みたいな魔物と戦っている映像が流れていた。


 NPCたち数人が、それを食い入るように見ている。



「息を呑むような凄まじい戦闘ですよね。映る映像はよく切り替わるので、もしかしたら救世主様もそのうち映るかもしれません。アイテムの使い方をご説明しましょうか?」


「いや、いらない」



 反射的に答えていた。


 つまりあそこに配信が流れてるってことだろ?


 俺は趣味でやったナイフ縛りの動画をネットにあげているが、あれは記録用だ。特に喋ってないし解説もしてないから再生数は1000もいってない。


 配信となるとまた別だ。喋る必要がでてくる。緊張するからやりたくない。


 俺は一度ログアウトして、ソフトをプレゼントしてきた爽真に電話をかけた。



「ゲーム内に配信システムがあるなんて聞いてないんだけど」


『お、EGO始めたんだ。配信が1番の魅力なんだぞ?ランキングの説明までいったか?』


「いや、そこはまだ」


『あー、なら先に説明するけど、EGOには注目をたくさん浴びたら入れるランキングがあるんだ。そんで1位の座を有名配信者やプロゲーマーが狙ってる。派手なプレーをすると人が集まりやすいっぽくてな。ナイフ縛りが好きな翔(しょう)にはピッタリだろ』


「俺が配信出来ないの知ってるだろ」


『大丈夫だって』


「コメントに返答出来ないし」


『別に喋らなくてもEGOならみんな見てくれるよ。なんならコメントオフにも設定できる。それに、ゲーム内で貰った投げ銭はリアルマネーに交換できるんだ。今の1位は1ヶ月で100万以上稼いだって噂だ』


「100万以上だと?」


『あぁ。俺は今83位なんだけど、もう10万も稼げた。ちまちまアルバイトするよりよっぽど割がいいぜ』



 誘い文句は大変怪しいが、一人暮らしの貧乏学生に10万円は熱い。



「配信って絶対しなきゃいけない感じ?」


『確か……ランキングに載らない設定にはできるみたいだけど、配信自体はオフにはできない仕様だったかな。でも俺はお前が本気を出せば、10位以内に入れると思ってるよ』


「無理だ」


『とりあえず一回やってみろって。そんで一回だけコラボしてくれ。翔とならもっと上を狙える気がする』



 俺にソフトをプレゼントしてきた理由、コラボ狙いかよ。

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