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世代の勇者  作者: グミ
第五章「第二魔王軍 後半」
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第八十九話「圧倒的」

前回、ノアとジンは1:1の戦闘を開始する。互いに複雑な心境の中で、ジンは【責任】に押しつぶされる。一方ブラッドは、恐ろしい量の魔法連打に防戦一方だった。

「はぁ……はぁ…?!」

剣を振ること15分。14万7千回以上の魔法を防ぎ、攻撃のチャンスを探し続ける白髪の剣豪は、新たに展開された数千を超える魔法を前に言葉が漏れる。


【時刻】2:42


「…やばすぎ……」

➡第二魔王軍幹部【ブラッド】


(聞いていた以上の戦闘力…)

【命運の逆剣】を地面に刺し、反動と慣性で前半の魔法を避ける。

ブラッドの動きに対応する中盤の魔法を警戒し、両足で蹴り返す。


「[マナリンク]/[全属性マナ]」

「?!」

終盤の魔法を剣で防ぎきると同時に、再び数千を超える魔法は展開される。


「はぁ…はぁ?!」

振り向き力任せに剣を振るう。

衝撃波で前半の魔法の速度を殺し、中盤の魔法にぶつけ相殺。

終盤の魔法から距離を取り、体勢を下げ反転。剣で地面を切り、3千を超える魔法の下を滑り込む。


(勝気があるとしたら…)

思考した瞬間、前半の魔法が頬を裂く。


(?!)

【血刃(けつじん)】でとっさにカバー。皮膚は裂けるが血液は流れない。

剣を握る力を最低限に抑え、魔法へ斬り込む。右足と左足を入れ替え、剣が上に弾かれると同時に慣性を利用。ジンの攻撃パターンを技術で【再現】したブラッドは半歩ずつ、【魔法の勇者】への距離を縮め始めた。


(三段階の攻撃魔法。再生成からの追撃。これまでのクールタイムが1秒…)

前半の魔法は再度攻撃を展開。

眩い高威力魔法をたった一本の剣で搔い潜る。


(ここまでの魔法同時発動。絶対にデメリットがあるはず…)

疲労を【血刃】の身体強化で補う。

精神を崩さないために、勝利の糸口を探す。


(膨大なマナとはいえ、限界がある。同時生成なら尚更…ヒーチャさんの創造魔法も、長時間詠唱をデメリットとして発動する。)


ふと前を向くと、数千の魔法が視界を覆った。

わずか1秒のスキ。

その時間は、ブラッドに希望を与えるには充分すぎる時間だった。


(…動いていない…?)

距離を詰める作戦は、魔法相手なら誰でも思いつく作戦である。

故に、対策を講じない魔法使いは存在しない。


(近づけないことが大前提の魔法だとしても、同じ歩幅後ろに下がればカバー出来るはず…まさか……)


合計20万の魔法を防いだブラッドは、戦闘開始から20分経過、勝ち筋を見せない【魔法の勇者】に勝気を得る。


(デメリットは動けないことか?魔法使いにとって、動けないリスクは計り知れない。それを代償に高火力かつ大量の魔法を発動しているのだとしたら……)


…近づけさえすれば…勝てる


(とか考えてるのかな?)

➡第二勇者パーティー所属[魔法の勇者]【アイリス】


魔法を生成し、標的は光に埋もれる。


魔法とは元来、消費して発動という概念であり、どの世界もその思考は変わらない。


でも


「ただの魔法使いじゃないから…勇者なんだよ?」

「?!?!(攻撃パターンが変わった?!)」

すぐ対応する。

前半の魔法は不規則な軌道を描き、中盤の魔法と攻守反転。速度を上げる中盤の魔法を弾こうとした直後、前半の魔法が加速し、剣を弾く。


「?!」

先の魔法とは比べものにならない技術。

物を投げる行為と等しく、魔法生成後放つ動作を行えば最後。何かしらにぶつかるまで速度を落とさず操作できない魔法とは違い、新たな攻撃パターンを見せるこの魔法は、計算された行動パターンが用意されている。


「一種の生物みたいだな」

弾かれた剣を頭上で回転させ、振り下ろす。

物量で物を言わす魔法から、物量と計算で敵を圧倒する魔法に切り替わる。


前半と中盤の魔法はまだ半分以上残ったまま、終盤の魔法が動き始める。


「?!」

ブラッドは経験で気付いていた。

前半の魔法は約20秒動き、中盤の魔法も約20秒。終盤の魔法も20秒動き、計60秒の魔法追撃。現段階で凌ぎきるまでに59秒。


1秒の隙に希望を抱いていた。


だからこそ、


「行動パターンが変わるだけで…ここまで不利になるのか?!」

終盤の魔法が動き始めたと言うことは、魔法発動から40秒経過。しかしまだ、前半と中盤の魔法は滞在し続ける。


20秒ですべて凌ぐ事は不可能に近い……それ以上時間を掛ければ近づくことすら叶わなくなる…つまり……


19秒で、6000以上の魔法を凌ぎきる


「出来ない事は…ない」

ブラッドのスキル【血刃(けつじん)】は貯金系の身体強化型スキルであり、使う量によって強化レベルも上がる。


「出し惜しみしてる暇は無いが、後も考えて……」

直後、魔法が着弾。

行動潰しと思考潰し、作戦潰しと魔法使いは近接に対して有利と言っても良いだろう。

しかし、ノアやジン。ライトやゼウスのように、例外も居る。


「30%」

決して出し惜しみをしているわけではなく、本気の30%

過去に使用した最高出力は50%だが、体力消費が激しく長期戦に不利。30%と言う数値は、最も身体に適し最も長く戦うことを想定した出力であり、それ即ち。


どの出力でも、短時間で倒しきれないと言う【魔法の勇者】の圧倒的強さを証明する事実


9秒ですべての魔法を凌ぎ、ノーモーションで最速に距離を詰める。

攻撃パターンを変更したアイリスは、闇マナと風マナと光マナを掴みなぞる。

僅か2秒で5mまで距離を詰めると、目の前に新たな魔法が顔を出す。


「創造魔法【調律の不調】」

「?!」

身体強化が解除され、スキルの付与が複雑化する。

3mに達した直後、ほぼゼロ距離で生成された1万を超える魔法はブラッドの視界を覆う。


「嘘だろ…」

再度スキルを発動しようとするが、感覚がズレて発動しない。


「遺言は?」

「容赦ないですね」

ブラッドの読み通り、この質問すら思考を止めるためのブラフ。距離を取り魔法を弾きながらスキル感覚を取り戻すために思考を巡らせる。


「また離れるの?寂しいな」

「口達者ですね…」

また距離が空いた…でも……確信した事がある。

息を整えながら剣を振るう。

間違いなく、この物量魔法のデメリットは動けないこと。僅か5mだが、恐ろしく長い距離。


出力31%


10%区切りの発動は出来るが、1%区切りは初の試みだった


ミスれば40%発動が起こり、体力消費は計り知れない。しかも今は【調律の不調】にてスキル発動すら危うい状態。


「やれるか…?やれるよな。」

剣を握ると、ブラッドはアイリスを睨んだ。


「ここからは…殺し合いです」

「今更?こっちはとうに…そのつもり」

「うっ……まぁ確かに…未だ攻撃っぽい事出来て無いですけどね……俺は」

息を吐くと同時に、再び魔法が放たれた。


【時刻】2:51



次回「目覚める二人」


いやぁ…ブラッドも作中屈指の実力者なんだけど……相性不良とは言えやっぱアイリスは強いですね……ではでは

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