第八十八話「友人」
前回。[剣の勇者]と戦う【ムシャ】は、猛撃に耐え続ける。その中で、心の靄を晴らしたムシャは、1stランクへと昇格する。【加速】を用いて反撃を開始したノアの元に、かつての友人が姿を現した。
二人の剣士は武器を構える。
深く息を吐く勇者とは違い、白髪の元勇者は静かに呼吸を整える。
刹那
金属音が床を伝い肩が波立つ
両者の剣は上に弾かれ、互いに隙を生む
「……」
「…」
反射神経で立て直す。同時に弾かれた剣を力業で振り下ろすノアに対し、慣性を利用した動きで下から振り上げるジン。
同時の接触。
左右に弾かれた刀身は、再度同じ動きを見せる。
スキル【加速】を用いて一段階早く、ジンの剣先より早く薙ぎ払う。
「昔から得意だったな。切り返しは」
➡第二魔王軍統括【ジン】[元剣の勇者]
タイミングを合わせ力を抜くと同時に接触。弾かれた方向へ手首を切り返し軸反転。
【加速】を利用し速度を上げたジンの刀身は、ノアの左腕を狙う。
「だったら…なんで対策を撃たない?」
➡第二勇者パーティー所属【ノア】[剣の勇者]
再び弾かれた剣を休むこと無く攻撃へ繋げる。
「…」
モーション一つ一つに10手先を見据えるジンには、俺の防御パターンと攻撃パターンがバレている…
上回るとすれば…【加速】か【経験】か
「いや…【覚悟】か」
心の深く奥。どうしても【動機】が揺らぐ。
仲間だったと言う過去が、長く旅をした思い出が、実力以上のパフォーマンスを取り上げる。
なんど剣を交えただろうか。
再会し、戦闘を開始してから10分間。
どちらも速度を落とさず1500回以上剣を振り続ける。
互角…と言うのは慢心だろう。
防御と攻撃を行い続けるノアに対し、攻撃とカウンターを行い続けるジン。
痛覚に悶える少年にすら、勇者が不利であると分かる。
「…(ジン…さん……)」
➡第二魔王軍所属[促進状態]【ムシャ】1stランク
(決定打がない…いずれ勝てる戦いではあるけど…こっちの戦力は出しきってる…応援が来る前に……)
とっくに限界を迎えていた身体に命令する。
ただ単純に……【動け】と…
大事な局面で傍観するほど…
(俺の気持ちは半端じゃない!!)
勇者と違い、固まった決意と動機は剣を握り締める。視野の端で立ち上がるジンの後輩に、ノアの動きがブレた。
「?!」
一秒にも満たない隙。
TOPランクの戦闘に置いてそんなミスは、見逃されない致命的な痛手である。
振り下ろした剣を手首で反転し体勢を下げ攻撃を避ける。
「?!?!」
【燕返し】と似たようなモーションだが、本質は違う。正々堂々と戦う事を熟知していたノアには、予想外の一撃。
「珍しいな…お前ともあろう男が…」
刹那。動きが遅れた。
その僅かな遅れに、ノアは反応する。
攻撃を弾き、距離を置く。
互いに剣を構え深呼吸すると、ノアは苦笑いしながら呟いた。
「互いに…嫌な仕事だよな」
「……あぁ」
「…俺には……分からない。ジン…俺達は…仲間じゃ駄目なのか?」
「…」
「かつては…間違いなく…仲間だった。信頼も信用も理解もあった。なのに…」
「今は違うだろ」
「!!」
「もう違うんだ……」
この戦いに遅れた理由でもある。
【覚悟】の話。
戦争さえ起きなければ、第二魔王軍と勇者パーティーは暗黙の了解で【仲間】と呼んでも良い筈だった。
互いに手を取り合える筈だった。
再び距離を詰めると同時に接触。鍔迫り合いに発展し、ノアは叫ぶ
「だったらなんで!!!【不老】のスキル共有を解除しない!!!」
「っ!?」
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「なぁイリス?スキルについての質問していいか?」
➡[剣の勇者]【ジン】
「え?!?!珍しいですね?!」
➡天才肌の少年【イリス】
「駄目か?」
「え~どっしょっかなぁ?!まぁいいですけど!!…【共有】の話ですね?」
「あぁ…流石だな」
「それほどでもあります!!まぁ単純に推理ですよ!【不老】スキルで有効なのは共有ぐらいですし!!」
「なるほど」
「…ではスキル共有について。割り出した答えと経験から…恐らく方法は3つ」
1つ➡スキルを用いた共有
2つ➡下位スキルの譲渡
3つ➡共有相手との意志共有
「俺は共有考えたことないんで、まぁ使うとしたら1個ですね。2つ目はジンさんの場合例外ですし、3つ目は時間が掛かるので…」
「…なら3つ目を試そう。」
「…良いと思います。では1つ。」
「意志共有とは、即ち【信用】と【信頼】の事です。ジンさんが余り得意としない意見交流や対話は勿論。相手の心に直結する事。俺はジンさんの事知ってるからまだしも、若手は割と怖がってますよ?…応援します。」
「…おう……(怖がってたのか…)」
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スキル共有を解除しない理由。
言うまでもなく。共に同行し共に戦ったみんなとの【絆】が…途絶えていないからである
だからこそ。決定打に動きが鈍った。
一撃を入れる行為は、完全な【敵対】を意味するから。
「【加速】」
鍔迫り合いから一歩踏み出し弾く。
追撃を警戒するが、ノアは追っていなかった
「…まだ……まだどっかに!!俺達に!!絶望していないなら!!!戻れるはずだ!!俺達の関係も!!信頼も!!信用も!!!絆も!!」
「……っ?!」
「勇者とか統括とか!!一旦忘れてさ?またみんなで旅しよう!!弟子も後輩も頼りになるだろ!!!」
「俺は……」
ジンの口から本心が溢れる瞬間。
第二魔王城が激しく揺れた。
魔王城侵入から26分経過。
試練から解放された[盾の勇者]が【ソラ】【ルーブ】【アイ】を殺害。
異変に気付いたジンの脳は、1つの感情に上書きされた。
【責任】
次回「圧倒的」
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移動後15分経過。
世界樹付近で戦うブラッドは、息を切らしながら攻撃を避け続けていた。
「はぁ?!はぁ?!?!…っ!ヤバすぎ…」




