第八十四話「開始」
前回、第二魔王城付近にて[支配の魔神]と[嘘奪の魔神]を発見したグレーは戦闘に入る。
その際【憑依】されていた勇者学校特待生のキザは、意識を取り戻し、グレーは逃がす事に変更。
キザの機転で距離を離すことに成功するが、それすら[嘘奪の魔神]の想定内であった。
ホコリと土が舞い、ズキズキと痛みが走る。
とっさの出来事に脳が混乱する。
「ッ…」
▶第二王国前線指揮官【ミスリラ】
激痛が走り、即座に理解…
周囲を確認し、耐え難い痛みを耐える。
「…【ゲート】」
ゆっくり呟くが…スキルは発動しなかった。
まぁ…分かる。発動しないと思ってたし。
「フッ?!…はぁはぁ…あーー…」
…こんな…痛いんだ…
瓦礫に潰れた両足から、大量の血が流れる。
横腹に貫通した建物の破片に熱を奪われる。
地面が揺れ、心臓が鼓動するたび…痛みは鮮明に増える。
「即死しなかっただけ…らっきー…あはは〜」
(体調の不調はスキル発動条件にも適応される。今は一旦…耐えるフェーズ…回復の速度を見るに、これはセリアちゃんの【オート回復】。…範囲内に居ない人は…死んでると仮定する。)
長めに息を吐き出すと、再び走る激痛に悶える。
「あ〜だめ……」
(思考が分散する…考えろ…まずは生存者の…)
同じ痛みを負ってるかも。
魔王軍が即座に来る可能性もある。
早く避難を…
…はぁ…
違う…落ち着け私…
私が生きてる以上…範囲内の重症者も生きてる
託されたのは…指揮だ。
生存者をフル活用し、戦況を打破する為に…
私はここにいる。
「【ゲート】…」
か弱い声で発せられた単語に、スキルは発動する。
僅か数センチの【ゲート】は、微かに振動し生成と消滅を繰り返す。
その微細な声は、第二王国の生存者すべてに
鮮明に届く
「…先に…謝罪から行おう。…第二…魔王軍との戦争は…一週間前から…示唆されていた。…でも……。どんな理由であれ…危険に陥る可能性を……排除していた…私の…責任です。第一に…国民の救助…分かっていたのに……。実現出来ていなかった…警告を怠っていた。……浮かれていた。なので…もう間違えない。生きている事を、【讃え】【勇気】へ変えてください。今起こりうる劇的な感情の変化を、全て!!【生】への執着に変えて!!!必ず助けます!!必ず勝ちます!!…先手を打たれた以上、不利であることに変わりはない!!ですが!!…もう一度…信じて!!我々を待っていてほしい!!!…100%の…【勝利】を確約します!!!!」
…
掠れる声は、力を失う。
【ゲート】が消え、乾いた風が痛みを思い出させる
「はぁ……【ゲート】で…っ?!少しで良い…少しずつ…ッ…瓦礫を退かす…」
指先が麻痺し、思考も著しく落ちる。
絶え間ない痛覚とスピードを落とす心音は、血液を失う度に増す。
「後輩!!!」
▶第二勇者パーティ統括[剣の勇者]【ノア】
「…ゆう…」
「…息はあるな…よく堪えた。」
「っ…任せて下さいっ…全然まだ…よゆー……」
安堵がたちまち思考を遮断した。涙が流れ、か弱い呼吸音が響く。
瞬時に状況把握。瓦礫を吹き飛ばし、ミスリラの【回復速度】を【加速】させる。
「…回復が間に合ってない…不味いな…」
「ミスリラ!!!!」
▶勇者候補[光の勇者]【ライト】
金髪の剣士は焦りながら現れた。怪我の有無を確認し、静かに拳を握る。
「…行くのか?」
「…はい。こんな状況で作戦もなにもない…先手を打たれた以上、第二も…覚悟ありって事だ…」
「…ミスリラは特待生の後輩に任せよう。一足先に、本命を叩くぞ。」
「はい!!!」
振り向きライトはノアの手を掴む。
瞬間、二人は姿を消した。
か弱い呼吸は風に遮られ、生命は【加速】する。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
勇者パーティー宿泊施設
「…すまない」
▶第二勇者パーティ所属[盾の勇者]【ラペン】
黒髪の勇者は、深々と頭を下げた。
「バリアを貼っていれば…防げた事態だ…」
「…いや…どう考えても突発的でした…俺が【未来視】を【記憶】してたら…」
▶第二勇者パーティ所属【ヴァート】
「もーー!!ヴァートとラペンさんも落ち込みは駄目だよ!!!遅かれ早かれ…被害は出てたでしょ!!想定以上の被害には対応するしかないの!!今はどうするかを考えよ!!!」
▶第二勇者パーティ所属【アイス】
「すまない…」「ごめん」
「いいから!!!」
「まずは国民の救助ですよね…先手を打たれた以上…防衛戦になり得ない…しかし…襲って来ない所を見るに…抑止の可能性は?」
▶第二勇者パーティ所属【ホープラス】
「あり得ないだろう。彼らがここまでの損害を起こす事事態不可解だ。…あちらも本気という事…」
▶勇者候補[魔神の勇者]【カイト】
「…ヒーリェさんとリーラ…セリア、ロゼは、救助に回った。俺達は防衛ですか?」
▶勇者学校特待生【エリック】
「だね。防衛戦の指揮は僕が取ろう。ひとまず陣形を…」
「その必要はない」
ラペンが振り向くと、二人の勇者が姿を見せた。
「ライト…」
「頭を取りに行く。エリックくんとアイスくん。二人は残ってくれ。能力値を参照に…俺が陣形を組みます。」
救助班
【ヒーリェ】(救助完了後最前線へ移動)
【リーラ】(救助完了後最前線へ移動)
【セリア】(救助完了後防衛軍に合流)
【ロゼ】(救助完了後最前線へ移動)
▶【ライト】(合流後、防衛支援)
防衛班
【ミスリラ】(防衛指揮、【ゲート】での布陣移動)
【アイス】(広範囲の防衛)
【エリック】(取り残しの殲滅)
▶【セリア】(合流後、防衛支援)
殲滅班
【ライト】(ロゼ合流後、防衛支援に移動)
【カイト】(ロゼ合流後、最前線へ移動)
【ヴァート】(道中の戦力殲滅)
【ホープラス】(道中の戦力殲滅)
▶【リーラ】(合流後、殲滅班の支援)
▶【ロゼ】(合流後、殲滅班の指揮及び戦力殲滅)
最前線
【ノア】(主力撃破)
【ラペン】(主力撃破)
【アイリス】(主力撃破)
▶【ヒーリェ】(合流後、最前線支援)
▶【カイト】(合流後、主力撃破)
「以上!!!ヴァートくんとホープラスくんは俺が【光速】で運ぶ!!!カイトは最前線にノアさん、ラペンさん、アイリスさんを運んでくれ!!!出来るだけ【データ】でスキルの【再現】も増やしてくれ!!運んだのち合流!!!陣形が崩れても、その場で対応!!!行くぞ!!!」
ライトが二人を掴み、走り始めた直後。
ヴァートとホープラスは空に移動した。
「…相変わらず突発的ですね!!!!!!」
「状況が状況だからね!!!」
「…と言うか…そこまで襲撃も来てないですね!!!!」
「そのようで!!!!」
地面に着地すると同時に、武器を構える。
第二魔王城前の広場にて、三人の人影が待ち構えていた。
「…早速勇者かよ」
▶反勇者組織統括【ワドフ】2ndランク
「上等だよ糞が…こちとらバリ苛ついてんだよ…」
▶反勇者組織統括【ターミラ】2ndランク
「…」
▶反勇者組織統括【ナキ】1stランク
「統括三人!!2nd二人と1st一人!!」
「うぇ?!?!格上?!」
「これは…かなり…」
「予想外にも対応するのが強者だよ!!!」
右足を踏み込んだと同時に、ライトは三人を視界に移した。
「【試練】」
「「?!」」
精神を分離され、二人は立ち尽くす。とっさに避けた白髪の男は、真っ白な剣を抜く。
「【試練】か…[光の勇者]」
「うっわ…久しいね!!!ナキ!!」
【光速】で距離を詰め、ライトのモチーフ武器【光剣】を抜く。接触寸前にナキは手首を切り返し、光剣の剣先を地面に押し付ける。
「予備動作のミスを【光速】でカバーか…ずっと変わらないな」
「まーた説教?後輩もいるんだから大目に見てよ」
「…?いいが?一生俺には勝てんぞ?」
「どうかなそれは!!!」
黒髪の少年は、【促進】を【記憶】し、【120%】を発動後、【爆発】で距離を詰めカバーに入る。
「…!」
「最初から飛ばします!!!」
反応した体をライトは拘束し【能力無効】を発動する。舌打ちしたナキは、左足を踏み込み腰に力を入れた。
「うお?!?!」
「なっ?!」
ヴァートの攻撃範囲内にライトを移動させ攻撃を防ぐ。同時にナキはホープラスを視界に捉えた。
「遅れてるぞ?」
右手を伸ばし魔法を発動する。指先に出現した炎と氷の魔法は、衝突と同時に爆発を生んだ。
「ぐっ?!?!」
ヴァートが吹き飛び顔を上げると、ナキはライトの光剣を再度流す。
「踏み込みが甘い。手首も。瞳孔も意識しろ。バレバレだ。」
「くっそ…やり辛い…」
「反射神経メインの[剣の勇者]と特訓するからだ。もっと動きを読め」
振りかざしと同時に、すり足で間合いに入る。
左足の膝を腹に叩き込み、軸を回転させる。
「これだから…勇者は嫌いだ。」
右足の蹴りに対し、ホープラスはバリアで防ぐ。
「強度なバリアは…それ故に扱いが難しい」
「なっ?!」
攻撃を中断し、バリアを利用し後ろに飛ぶ。【能力無効】が解除され、ナキは再度魔法を発動する。
「…?!」
攻撃を読み首を曲げる。
ギリギリかすった光の斬撃に、頬から血が流れる。
「こっちもゾクゾク成長中〜〜」
「相変わらず…身体能力だけは一流だ…」
高レベルな戦いに、二人はじわじわと実感する。
次回「第二魔王城最前線」
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