第六十話「出会いと恋 その1」
前回、ラペンの頼みによりヴァート達はテン村へと移動する。一方、第二王国前線指揮官【ミスリラ】は、勇者御一行に報告を行っていた。
1週間前……
手を引かれ走る兄妹は、息を荒くし立ち止まる。
「はぁ!!はぁ!!」
「お兄ちゃん大丈夫?」
「おう!……はぁ…ヒューラ…怪我はないか?」
「うん!!」
「何もされてないか?!」
「それも大丈夫!!……心配症だね?」
「当たり前だろ……ふぅー……家族なんだから」
空を見上げる黒髪の青年は、目を閉じ深呼吸した。
「よし。帰るぞ?いいか?」
▶︎黒髪の青年【カイ】
「うん!わがまま聞いてくれてありがとう!!」
▶︎栗色髪の少女【ヒューラ】
2人は先程、勇者学校推薦入学者【ホープラス】に助けられたばかりだった。
馬車に戻り、仲間の帰りを待つ。
自室に戻ると、ヒューラはベットに倒れ込んだ。
「……ねこ…もふもふだった。」
思い返すと笑みがこぼれる。横を向き、モコモコのぬいぐるみを引き寄せると、抱き着き顔を埋めた。
「ホープ…ラス。……ホープラスくん。」
「ヒューラ?」
「?!ひゃい?!?!」
上半身を上げると、ドアをノックしながらお兄ちゃんは答えた。
「……ご飯食べたか?」
「うん!!」
「ん…良い子だ。少しいいか?」
「大事なお話?」
「…そんなとこ」
ベットの横をトントンすると、お兄ちゃんは微笑み座る。
「…ヒューラは……ここにいる皆のこと…好きか?」
「好きだよ!!」
「……そっか…王国で出会った…勇者学校の……あの子の事好きか?」
「?!なんで?!?!いや…別に……」
「別に?」
「……」
胸を手で抑え目を閉じた。
鳴り止まない鼓動は加速し、体温を上げる。
「…わかんない…でも。」
「うん…」
「ここ以外で優しくされたのは…初めてだったし……小さいのに大きい人に立ち向かう姿には…ドキドキしたけど…」
「そっか……うしっ!それだけ!!!沢山寝ろよ!!疲れただろ?」
「うん!!」
元気よく立ち上がるお兄ちゃんの背中は、どこか寂しそうだった。
バタンッ
2日後
「まーたボーッとしてる……」
赤髪の青年【レト】は、窓の外を眺める私に声を掛けた。
「暇なら会議行けよ。お前の兄貴は参加してるぞ?」
「…今それどころじゃない」
「……?なにかしてんのか?」
「…思い出してるの!!」
「あーー。はいはい……どうやって外に行くかって話か?」
「違うよ!!あのひ……?レトは外に行きたいの?」
「おぅ!!抜け出すことも考えたんだけど捕まっちまうし……今度実力試しして、許可貰ったら俺も個人巡回するんだ!!」
「……それって…王国に行けるの?」
「ん~王国はみんなでって規則だろ?…でも…近くまでは行けるんじゃないか?」
「ねぇ!それって私も同伴していい?!?!」
「え?…いいけど……」
「やった?!約束ね?!いつ頃になりそう?!」
「えっと……まず合格してからじゃないと…」
「……そっか…」
落ち込む私を見たレトは、ため息を吐きながら外を向いた。
「急ぎなのか?」
「…うん……時間が経つと…忘れそうだし」
「…なら秘策がある」
「ほんと?!?!」
「おう!【ムシャ】同伴なら許可貰えるかもだし…反省も込めて、アイツらと巡回するって言ったら大丈夫かも!!」
「!!ありがとう!!!」
「うしっ!!」
胸を叩いたレトは走りながら振り向く。
「こう見えても見習い隊長!!お前の兄貴ともいい勝負するんだぜ!!」
「誰が隊長だ。リーダーは俺だ。」
「うぉぉ?!?!」
ぶつかり倒れたレトは、カイを見上げる。
「会議は終わったぞ。…その話。俺も乗る」
「ほんと?!」
「…おぉ心強いけど…理由は?てっきり止められるかと……」
「……妹の初恋は…応援したいだろ」
「…え?えぇぇぇぇぇえ?!?!?!初恋?!ヒューラまじ?!?!」
「えっと……もう!!お兄ちゃん?!」
恥ずかしくなり八つ当たりしそうになる……でも…お兄ちゃんの顔は…とても悲しそうだった。
昨日の夜。
廊下を1人で歩いていた。
明日が待ち遠しくて寝れなかった。
王国には行けないけど、距離が近くってだけで、こんなに嬉しくなれるなんて……ほんとに…
「……私…ちょろいのかな…」
その時。光がこぼれる部屋から声が聞こえた。
「お兄ちゃん?」
声の主は、お兄ちゃんとジンさんだった。
「俺は止めない」
「……ほんとですか?!」
「あぁ。ヒューラはまだ手を汚してない。早い内にここを離れるべきだ。でも…」
「良かった!!いつも…ほんとにありがとうございます!!!」
「……お前はいいのか?」
「……はい」
「そうか」
「何よりも大切なことは…ヒューラの身の安全ですから……」
覚悟を決めた声に、私は何も言えなかった。
「そっか」
私がホープラスくんと結ばれるには、ここを離れないと行けなくて…大好きな皆と…離れないと行けなくて……
「…なんでこんなに。生きずらいんだろ…」
今の私は……第二魔王軍所属。
肩書きだけで実際は…みんな優しい人なのに……
「私だけが…ここを離れるなんて……出来ないよ…」
ホープラスくんの事は好きだけど……あの一瞬限りの出来事。…多分私は覚えられてない……
「忘れ……」
瞬間言葉が詰まった。
その単語を言おうとするだけで、胸が痛く。苦しく。涙すら流れた。
「…無理だよ……」
初めての…あの一瞬の……あの出会いがどれほど…私の世界を広くしたか。色鮮やかにしてくれたか。
「少しで……いい…少しで……いいから…。」
もっと……生きやすい世界に…
数分前
第二魔王城を出て、付近の村に泊まることになった私達は、宿を2つ借りた。
「元気ないね?」
▶︎青髪の少女【ソラ】
「……悩み事が…」
「ふ~ん?…まっ……色々あるよね…」
「…レトから聞いたの?」
「…うん。ごめんなさい。…一方的に知ってるのもアレだし……私の初恋も教えようか?」
「え?!いいの?!」
「食い付き……まぁ、振られたんだけどね…」
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元気いっぱいの男の子【ルーブ】と元気いっぱいの女の子【ソラ】は双子である。
ただ……それはどちらが【本体】か分からなかった。
【二重人格】彼、彼女の持ち合わせる病気だ。
1つの体に、2人の人格が混ざっていた。
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「気味悪いってさ……拒絶されたんだよね…まぁ今は各々元気にやってるしいいけど!!!なっ?ルーブ?」
壁を叩くと、隣の部屋から声が聞こえた。
「なに?!?!」
▶︎青髪の少年【ルーブ】
驚くルーブに、みんなの笑う声が響く。
荷物を纏め、窓の外を眺めると、魔王城からは見られない動物や魚が目に入る。
「…」
瞬間。森が不自然に揺れた。
「到着!!!!」
微かに聞こえた声に目を配ると、先程まで居なかった5人の人影が見えた。
「あれ?あんな所に……?!」
「なに?!大丈夫??」
咄嗟に隠れた。布団に抱き着きゆっくりと顔を上げると……見覚えのある人物が、こちらに向かって歩き始めた。
「えっと……まずは…情報収集?」
次回「出会いと恋 その2」
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