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世代の勇者  作者: グミ
第一章 「王国」
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第十一話「感謝」

前回、ホープラスを担いでサード村へと戻ったヴァートは気を失ってしまう。アイスが面倒を見て居るとライトと共に王国を出た馬車がサード村へ到着した。


眠って居るヴァートを見たアイスは心の中で一つの疑問を持っていた。

ライトや医療班、兵士や住民が怪我人を馬車に乗せて居る中、アイスは子供の様に眠るヴァートの顔を見ながら落ち込んでいた。


「頑張ってるなぁ…ヴァートは…」

▶︎白髪の少女【アイス】


(…共に同じ夢を持ち、同じ家で育ち、身長も思考も趣味だって同じなのに)

「泣いてばっかじゃダメだなぁ…私…」

アイスは右手でヴァートの左手を握り、左手でヴァートの胸に手を乗せる。流れる血液。体温。呼吸。今までずっと一緒にいて。話して、寝て、でも。やっぱりヴァートは男の人なんだ。カッコつけるし、負けず嫌いだし、心配になるくらい頑張るし。

「はぁぁ…ダメだなぁ。私。ヴァートは家族なんだから。私がちゃんとしないと」

「お熱いところ良いでしょうか?」

▶︎勇者候補補佐兼後方支援管理【シャル】


突如話しかけて来たのはライトと話していた茶髪の女性。突然の声かけにアイスは肩を振るわせる


「ふぁい!」

「驚かせてすいません」

「ど、どうしましたか?」

「出発の準備が出来ました。怪我人も罪人も馬車に乗せ、後はアイス様とヴァート様だけです。」

「あ!分かりました!すぐに行きます。それと、様呼びじゃなくて大丈夫ですよ?」

「分かりました。後アイスさん。」

「はい?」

「勇者さ…ライト様からの伝言です。[今回は本当にありがとう。次会う時は王国で。]だそうです。私からも…」

茶髪の女性は深々とアイスに頭を下げ、ハキハキと答えた。


「多くの犠牲者が出ました。重症者も死亡者も。ですがその彼らが居なければ被害はもっと大きくなっていた事でしょう。結果的にこの村での民間人の被害は無く、事なきを得ています。我々の対処がもっと迅速であれば、被害を減らせた筈でした。申し訳ございません。並びに、彼らとあなた方に感謝を…ありがとうございます。」

「……!」

「では、そろそろ行きましょう。ヴァートさんを馬車に運びますのでお借りしますね?」

そう言うと、茶髪の女性はヴァートに触れる。するとヴァートの体はピンクの光に包まれ、宙に浮いた。


「行きましょう。アイスさん。」

「はい。」

アイスは心に疑問を持ちながら馬車に向かう。

(何も出来ず、死亡者も出して何で感謝されてるんだろう…)

ライトさんも茶髪の彼女も…私達が予想していた時間より早く来て助けてくれた。このレベルの被害で収まったのはライトさんが来てくれたから。

そんな事を考えて居ると馬車に着いた。ヴァートを馬車に乗せた茶髪の女性は馬車の上に乗り、アイスに手を差し出す。

アイスはその手に手を伸ばした。その時


「ありがとうーーーーーーー!!!!」

「!!」

振り向くとサード村の村人達が私達を迎えてくれた。

アイスの驚いた表情に茶髪の女性は少し微笑みながらアイスに語った。


「あなたがどう感じていたとしても。この村の人達にとって、あなた方は。命を救ってくれた勇者に違いないんですよ。」

アイスは茶髪の女性の手を取り、馬車に乗った。


        第十一話「感謝」


茶髪の女性は大きな声で指揮を始める。


「出発の準備が完了した!これより王国へ向かう!!先頭、医療班!中間、護衛班!後方、護送班!全3部隊!前進せよ!!!!」

馬車が動き出し、サード村を出る。住民の感謝の声が聞こえなくなるほど離れ、アイスは寝て居るヴァートの横に添い寝する。


「ヴァートの目が覚めた時、王国にいたらびっくりするだろうな…」

ヴァートの顔を見ていると茶髪の女性が近づいて来て毛布を渡し、アイスの横に座る。


「寒いだろ。一枚しかないが使ってくれ。…二人は…愛人なのか?」

「!!あぃじんじゃなくて!家族です!」

「そうなのか?失礼した。それとまだ自己紹介がまだだったな。私は勇者候補補佐のシャルだ。主に人材派遣や後方支援指揮を担当している。王国でもそこそこ顔が広いから、困ったら頼ってくれ。」

「ありがとうございます。シャルさん。」

「よしてくれ。お礼はこっちがしたいんだ。」

「ふふっ…ライトさんと同じ事言ってますよ?」

「……!そうか?…フッ。なんせライトは私の愛人だからな。少しは思考も重なる。」

「!!そうなんですか?!」

「いや?ジョークだ」

「へ?」

「面白くないか?王国に居る勇者の一人は、話を楽しませる為によくジョークを使って話す。私は気に入ってるのだが…アイスさんは好みでは無かったか?」

真面目そうなシャルの以外な一面にアイスは戸惑いが隠せなかった。


「あっ!いえ!嫌いではないですよ?」

アイスの精一杯のフォロー

「そうか?それなら良かった。」

間に受けるシャル


慌てて居るアイスを見たシャルは再び微笑み、アイスに言った

「その顔だ。」

「?」

「私達と話している時は、どうも表情が硬い。本来の君は表情豊かでとても可愛らしい。」

「…ぅ!じ…ジョークですか?!」

「これは本心だ。」

普段ここまで褒められる経験が無いアイスは顔を真っ赤にし、毛布に顔をくっ付ける。

「〜〜+×〆/////」

「フフッ。やはり可愛らしいな。」

うずくまったアイスの頭を布団越しにポンポンと叩いたシャルはアイスに顔を近づけて小さい声で囁く。

「私は可愛い女の子も好きだぞ?」

心臓が弾けるぐらい鼓動し、アイスは毛布の中でヴァートの左手を両手で握る。困惑して居るアイスを見たシャルは少し微笑みながら立ち上がる。


「これはジョークだ。悪い事をした。そろそろ森に入る。ゆっくり休んでくれ。」

そう言うとシャルは別の馬車に飛び移る。

心臓の鼓動音が脳に響く。熱った体が息を上げる。アイスは落ち着く為にヴァートの体に纏わりついた。ゆっくりと動く心臓の鼓動。少し冷たい肌。包み込む様なヴァートの体にアイスは平常心を取り戻した。


(私ってちょろいのかな…)

アイスは布団から顔を出し、ヴァートの肩に頭をくっ付ける。緊張が和らぎ力が抜ける。今まで溜まっていた疲労がアイスを睡眠へと誘った。

数十分後シャルが馬車に戻って来た。一つの毛布でくっついて眠るアイスとヴァートを見たシャルは微笑み、辛い顔をして小さい声で呟いた。


「なぁ…アイス…ヴァート…このままじゃ…ダメなのか?勇者にならなくても…良いんじゃないのか?」

空を見上げると太陽がもうすぐ沈もうとしていた。夕焼けの光が馬車を照らす。森を抜けた馬車は白石(はくせき)で出来た門を通過する。


「……ようこそ。ここが王国だ。」




次回「王国」


サード村襲撃事件


黒髪短髪の少年「ヴァート」   気絶

白髪長髪の少女「アイス」    無傷

黒髪短髪の少年「ホープラス」  気絶(重症)


赤ローブの男「ザーク」     拘束

青ローブの男「ギル」      拘束

黄色ローブの女「レイ」     拘束

緑ローブの男「バン」      拘束(重症)

紫ローブの男「レーグ?」    逃亡



本編「世代の勇者」に今度登場するキャラクターの短編小説も出して居るので、もし良ければご覧下さい!

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