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12,ダンジョンに挑戦!

 

4月12日


家族の分の朝食を作り、今朝も食事は向こうで取ることを伝え『森の木漏れ日』の私が取っている部屋に転移。

ノアにチェンジして、と。


部屋で待機していると朝食の時間になってターニャちゃんが運んで来てくれた。

朝食はパン、スープ、薄めの肉を焼いたやつ、果物をカットしたやつ。

今日のスープはまろやかな味がする。

これも美味しいなぁ。

果物は酸っぱくてびっくりしたけど、お肉の油が酸味で洗い流される感じがした。


部屋を出る前に部屋全体に【クリーン】をかけておく。

カウンターに鍵を返して出て行こうとした時、ターニャちゃんに呼び止められた。


「あ、あの!また、来て下さいね。待ってますから……」


と言う顔はほんのり赤い。

それを見て女将さんは「あらあら」と言った。


こんなに可愛い子にそんなこと言われたらほとんどの男はその気になるだろう。

天然なのか計算なのか分からないけど、上手い手だ。


実際にまた来ても人気宿だから部屋が埋まっていて泊まれないだろうし、私が利用することはもう無いかな。そもそも転移で家に帰れるから他所の宿を利用する必要は無いんだよね。

短く「ああ」とだけ答えて宿を出た。


午前中は他の町へ向かい、各所の冒険者ギルドに【インベントリ】内のワイバーンを売りに行った。

解体と査定に時間がかかるので、代金を受け取るのは明日。

どこの冒険者ギルドでもGランクでワイバーンを持ち込んだことに酷く驚かれた。

他の冒険者が狩ったものを盗んだと言われた所もあったけど、向こうが吹っかけてきた模擬戦で大勢でかかってきたBランク冒険者を一瞬で叩きのめしたら認めてもらえたという件もあったけど割愛。


ドラゴンの解体をしてくれている皆さんへの差し入れを購入して、修練場へ飛ぶ。

ちなみに転移する時は先に透明化で姿を消してから転移し、誰も見ていない場所で透明化を解除している。

突然人が現れたら驚くだろうしね。


「おう、お前さんもマメな男だな」


「大変な作業をしてもらってるから、これくらいは。今日の差し入れだ」


「助かる。おうい!差し入れの坊主だぞ!」


わっ、と寄って来た人たちに差し入れを配る。

今日の差し入れは肉まん。

コンビニの肉まんが好きなんだよね。


「うめぇ!」


「肉が入ってるのか?」


「この白いのって白パンじゃね?お貴族様が食べてるやつ」


「かーっ、やっぱ気前良いなぁ」


今日の差し入れも好評。

どさくさで一緒に食べる。


休憩の時間中にグルガさんと雑談中、気になっていたことを聞けた。


ダンジョンという物はやはり存在するらしい。

この世界に存在する魔力が変質したものが地中で塊になることでダンジョンコアとなり、ダンジョンコアがダンジョンを生み出すと言われている。

内部は亜空間となっており、物によってはどこまでも続いていて踏破できていないダンジョンも多い。

ダンジョンの中では魔物が一定間隔で湧き続け、最深部にはダンジョンボスという強力な魔物も存在する。


それだけだと危険なだけなように思えるが、ダンジョン内部は特殊な環境になっていて珍しい植物が自生していたりする。

更にダンジョン内では宝箱が生成され、浅い階層の中身はしょうもない物も多いが階層が深くなっていくと高値で売れる物が入っていたり、お金がわんさか入っていたりもするそうだ。


ダンジョン内で倒した魔物はダンジョンに吸収され、ドロップアイテムが落ちるらしい。

だいたいはその魔物の素材だけど、レアドロップと呼ばれるたまーにドロップするアイテムは魔物の素材とは限らず、装備品なんかが落ちることもあるそうだ。


私はこの世界のお金を通販スキルにつぎ込んでしまうとこの世界のお金が無くなってしまうのではないかと心配していたのだけれど、ダンジョンからお金が生成されるのならその心配も無いのかな。


レアドロップっていうのも気になるし、ダンジョンにはいつか行ってみたいなぁ。

ダンジョンの場所はいくつかは冒険者ギルドが把握しているけど、ギルドが把握しきれていないダンジョンも多く存在するそうだ。

この国にはダンジョン都市と呼ばれる町の中に3つもダンジョンが存在する大きな町があるそうだ。


町の名前と大まかな場所を聞いて、修練場から離れた。

空を飛んで向かったのはダンジョン都市、グランディア。

王都に負けず劣らず大きな町で、上から見ると中央部を中心に外側へ町が広がっていて、円形にいくつか堅牢な壁が建設されている。


いつもは町に入るのに直接空から侵入しているけれど、今回は観光も兼ねてきちんと入り口から入ろうかな。

グランデイアから少し離れた位置に降り、誰もいないことを確認。

透明化を解除してグランディアの入り口まで歩いて行った。


入り口には大きな門があって、そこに馬車や人がたくさん並んでいて最後尾に並ぶ。

ダンジョン都市と言うだけあって冒険者も多いけど、商人や一般の人も多いみたい。

そこそこの時間がかかって自分の番になった。


「身分証を」


と言われたので冒険者カードを提示する。

これは身分証の代わりになると聞いた。

どこの出身でもないノアにはちゃんとした身分証が無いからね。

ちなみに小さな村出身のシャノンにはちゃんと身分証があるけど、それはお父さんが管理している。


「Gランク冒険者か。グランディアは初めてか?」


「ああ」


「この町には3つのダンジョンがあるが、難易度が別れている。Gランクなら低難易度の『草原ダンジョン』に行くと良い。10階層しか無くて腕試しには最適だ。ちなみにダンジョンは中央区にある。門を2つ超えた先だ」


「分かった、ありがとう」


何事もなく門を通過。

おお、人がいっぱいいる。

王都も活気があったけど、こっちも熱気があるなぁ。

周囲の気にあてられて気持ちが高まる。


早速中央区とやらに突撃!

堅牢な壁を2つ越えると、すぐにダンジョンがある場所が分かった。

木でできたゲートに大きな看板が掲げられている。『ダンジョン地区入り口』。

『草原ダンジョンはこちら』と書かれている看板の方へ向かうと、人だかりとたくさんの屋台があった。


「出張冒険者ギルドでーす、ダンジョン挑戦者はこちらに並んでくださーい」


呼びかけがあったのでそちらに向かう。

ギルドの制服を着た女性が頭を下げた。


「こちらは『草原ダンジョン』です。ダンジョン挑戦者は記録する規則がありますので、身分証の提示をお願いします」


Gランクの冒険者カードを提示すると、紙に書き込んでいく。


「ダンジョンへの挑戦は初めてですか?」


「ああ」


「それではダンジョンの説明を致しますね」


説明は以下の通り。


・ダンジョン最深部のダンジョンコアは破壊、もしくは持ち出さないこと。規則を破った場合重犯罪者となりお尋ね者となる。


・ダンジョン内では各階層に存在する階段を使って階層を移動する。


・ダンジョン内ではセーフティエリア以外で持ち物を放置するとダンジョンに吸収されるので、床に私物を置かないこと。


・一定階数ごとにセーフティエリアがあり、そこでは魔物が湧かない、又は入って来ないため休憩時はそこを利用すると良い。


・魔物を引き連れて走り他の冒険者を巻き込むことはマナー違反。犯罪にはならないが、罰金を取られる。その行為によって巻き込まれた者が死亡した場合は犯罪となる。


・魔物は最初に攻撃したパーティの物。ドロップ品も最初に攻撃したパーティに所有権があるので、横殴りやドロップ品を掠めとるのはマナー違反。戦っている最中の冒険者を発見し、劣勢に見えても手を出す前に必ず確認すること。


・5階層毎にフロアボスの部屋があり、フロアボスは1度倒すと再度湧くのに時間がかかる。ボス部屋の前ではきちんと並んで順番待ちをすること。最深部にはダンジョンボスの部屋があり、そこも再度湧くのに時間がかかる。ダンジョンボスを倒すと転移陣が出現し、そこに乗って魔力を込めるとダンジョンの出入口にワープできる。


・ダンジョンは1年に1回、1月1日に1日かけて大規模な作り変えが行われるため、1月1日はダンジョンへの侵入禁止。戻るのが間に合わなかったリして作り変えの際に内部にいた場合、ダンジョンの大規模な地形変動に巻き込まれて怪我をしたり死亡する可能性がある。その場合ギルドは責任を負わない。宝箱の中身もこの時に補充、入れ替えられる。


・ダンジョン内で『帰還石』と『転移石』というアイテムがドロップすることがある。『帰還石』を使うと瞬時にダンジョンの出入口にワープできる。『転移石』を使うと、転移石に書かれている数字の階層の入り口にワープできる。これらはドロップしたダンジョン内でしか使うことができない。


・ダンジョン内は階層が少ないと言われている『草原ダンジョン』でもとても広いため、下へ潜るほど日数がかかる。そのため食料などの持ち込みは必須。無計画に食料も持たずに潜ると帰りの食料が無くなり餓死して全滅することもある。


・帰還したら必ず出張冒険者ギルドの受付に寄って、帰還報告をすること。


長々と説明されたけどだいたいこんな感じだった。

受付も完了したのでいざダンジョンへ!


わくわくしながらダンジョンに入ると、広大な草原の景色が出迎えてくれた。

上を向くと青い空と太陽が見える。

あれって本物の空じゃないよね?ダンジョンの中だし。

このどこかに次の階層への階段があるんだよね?


辺りを見回すと、冒険者たちはろくに探索もせず一方向へ向かっている。

周りの人に合わせてしまうのは元日本人の性。

みんなに着いて行くと、すぐ近くに階段を発見した。

みんな1階層は探索しないのね。


だけど初めてのダンジョンだし、少し見て回りたい。

階段を無視して辺りの探索に行く私を他の人たちは奇妙な物を見るような目で見ていた。


辺りをうろうろしていると、魔物と遭遇した。

うねうねと動く白い芋虫。魔物……?って感じだけど魔物なんだろう。

私を発見すると、うごうごしながら向かって来る芋虫。

ぴょいんっと体当たりしてきたけど、結界に弾かれてばいんっと床に転がった。

今の攻撃?これなら村の近くにいるウルフの方が強いよ。


風の刃でスパンッと真っ二つ。

ほんの少ししか魔力を込めてないのに倒せてしまった。

ドロップアイテムは無し。

なるほど、1階層はろくな実入りが無いからみんな探索しないのね。


しばらくうろうろしたけど、出て来る魔物は大きい芋虫とスライム。

スライムはファンタジーで有名な丸とか涙型の可愛い感じじゃなくて、どろっとしたアメーバタイプだった。

動きも遅くて何もしてこなかったのでスパッとコアを切ればすぐに動かなくなった。


芋虫のドロップアイテムは芋虫のお肉と皮。

スライムのドロップアイテムはすごーく小さい魔石。

1階層のドロップアイテムは高値にならないだろうと思って通販スキルの売却機能で売却しておいた。

うん、小銭にしかならなかったよ。


草原はどこまでも続いているように見えるけど、どこかで壁にぶつかった。

ここがフロアの端っこ?ここから先は行けないらしい。

地面を見て回っても雑草以外は何も生えてなかった。

これ以上うろうろしても何も無さそうなので、次の階層へ向かった。


草原ダンジョン2階層。

ここも草原だ。階層を降りたのに空が見える。

やっぱ亜空間って凄いなぁ。

ここも他の冒険者たちは魔物を素通りして階段へ向かって行く。

1階層とはほとんど変わらないと判断して、私も次の階層へ向かった。


草原ダンジョン3階層。

ここも草原。

ここから若い冒険者が魔物と戦っている姿が目撃できた。

革の防具をつけて戦っている姿は初々しくて微笑ましい。

まぁノアもまだGランクなんだけどさ。


ちょっと戦ってみようかな。

あ、この階層にはビッグラットがいるみたい。

ビッグラビットと言い間違えやすいけど、ビッグラットは大きなネズミね。

ビッグラビットは大きなウサギ。


ビッグラビットは体当たりと長い歯でかじってくるので近付かなければ問題無い。

私は結界を張ってるからいくら攻撃されても大丈夫なんだけどね。

スパッと真っ二つにしてドロップを確認。

うーん、尻尾か。尻尾って何に使うんだろう。

一応拾って売却してみたけど1ガルにしかならなかった。


私は魔物を倒さなくても収納して丸ごと売却できる。

その方がドロップアイテムだけを売却するより高値にはなるけど、倒したらレアドロップが落ちる可能性があるからそれを狙ってるんだよね。

浅い階層のレアドロップなんて大した物落ちないだろうけどさ。


それから5階層まで降りたけど、全部草原。

ただ、階層が増えるにつれフロアが広くなっているようだった。

5階層にはゴブリンが湧いていたけど、ゴブリンって丸ごと売却しても30ガルにしかならないんだよね。

レアドロップを狙ってゴブリンを絶滅させる勢いで倒したけど、残念ながらレアドロップは無かった。


今日はこんなもので良いかな。

本格的に潜るのはまた後日にしよう。

ダンジョン内で転移魔法が使えるか心配だったけど、無事に1階層まで戻ることができた。

ダンジョンから出て受付で帰還報告を済ませ、シャノンに戻って家に帰った。

 


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