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13,村を出よう。私の世界。

 

晩ご飯を食べながら話を聞くと、ついに村の子供たちも家族を遠巻きにするようになったらしい。

子供は親に影響されるからね、これは予想できていたことだ。

中には石を投げてきた子もいるそうだけど、常に結界を張っているから大丈夫。

と思っていたのだけれど、私は家族の精神的な負担までは考えていなかった。


村の子供たちと仲が良かったアルフィーお兄ちゃんが特に落ち込んでいて、胸が苦しくなる。

そうだよね、いくら怪我をしないと言っても暴言と攻撃されたという事実は結界をすり抜けて心を傷付ける。

……考えが甘かったとしか言いようが無い。


少しでも慰めるためにチミリチョコを1人3つ配って、私は考えた。

家族を緊急避難させようと思う。


村を出るのを明日に早め、家族を私の亜空間へ招待する。

王都に移住するのはドラゴンのお金が入ってからだ。


家族の承諾も得たので、私はまず【空間属性魔法】で広い亜空間を作った。

魔力をたくさん注ぎ込めば内部の環境を自由に弄ることができるので、今までに無いぐらい大量の魔力を消費して亜空間を1つの世界にした。

空も大地も太陽もちゃんと存在する。

と言っても地球やエルディラードほど広い世界じゃないけど、家族が広々過ごすには充分過ぎるほどの広さ。

通販スキルのオーダーメイド機能で安全性に配慮した遊具を設置した公園を作り、水浴び場も配置。


それからオーダーメイド機能でうちの宿屋と瓜二つの家を作ってインベントリへ。

ちなみに箱だけで家具類はコピーしていない。


家族には一旦家の外に出てもらう。

この時間だと村に明かりは無く、外に出ている人はいないから誰にも見られることは無い。

家を土地ごとインベントリに収納。

【土属性魔法】で抉れた土を元通りに戻し、コピーした箱だけの家を設置。

この間僅か3秒。


それから家族を私の世界に招待し、実家を公園の近くに設置した。


「ここがシャノンが作った世界なの?世界を作るって……神様みたい」


とリオお兄ちゃんが尊敬の眼差しで私を見る。

私はただの人間ですよー。

アルフィーお兄ちゃんは動き回りたかったみたいだけれど、こっちでも夜なのでみんなぞろぞろと家に戻って行く。


あ、そうだ。

裏手の井戸は使えなくなっちゃったから魔法で無限水源を作って使えるようにして、と。


今日はもう遅いので、みんなに【クリーン】をかけて眠りについた。



4月13日。

私はみんなが起きる前に村の近くの森へ細工をしに向かった。

村長との話し合いを円滑に進めるための作業だ。


オーダーメイド機能で『3日に3つだけ自動的に卵が生成される鳥の巣』を3つ固めて設置。

ただし期間は2週間だけ。

それ以降は効果が無くなりただの家主の居ない巣になる。


あの村長に利益を渡すのは癪だけれど、村を出るのを円満にするための作戦だから仕方がない。


家に戻り、お父さんに作戦を説明。

朝ご飯を食べてから私とお父さんだけが村長の家に向かった。


村長はにやにやといやらしい笑みを浮かべて出て来た。


「どうした、卵の在り処を教える気になったのか?」


「今日はご挨拶に伺いました。私たち家族は今日この村を出ます」


と言うと、村長は眉を吊り上げた。


「逃げるのか!?ならん、ならんぞ!村唯一の宿屋に逃げられたら旅人から金を搾り取れんでは無いか!!」


追い込んだのはお前だろうに。

お父さんは村長の言葉は無視して言葉を続ける。


「つきましては私たちはもう卵の場所を知っていても採ることができなくなるので、村長に場所を伝えに来ました」


「なに?……それならそうと早く言いなさい。嘘を言われたら敵わんから現地まで案内するように。もちろん魔物から護衛するんだぞ」


さっきの怒り顔から一転。

にちゃあとした気持ちの悪い笑みでそうのたまう。

森の中で事故を装って闇討ちされるとか思わないのだろうか。


私たちは今朝作った鳥の巣の群生地に向かった。

出て来た魔物はお父さんのスキル、『風刃』で駆除する。


「あそこです」


と伝えると、村長は巣に駆け寄った。


「おお、おお!9個もあるではないか!ほれ、何をしておる!早く採れ!ワシの家まで運ぶんだ!」


「……私が卵を持つと魔物の相手ができなくなりますが」


「何のために小娘の同行を許したと思っている?ほれ、持て!落としたら棒叩きの刑だぞ!」


カチン。

私は村を出る直前に村長に呪いをかけることを決意した。

今まで使ったことのない【呪い属性】の魔法の解禁。

こいつに使わず誰に使う?

渋々卵を布で包んで持つ。一応卵を結界で包んで割れないようにして、と。


無事村まで戻って村長の家に卵を置く。


「何をしておる?村を出るんだろう?早く荷物をまとめて出て行くと良い。そうそう、今月分の税は前払いできちんと払うように。それとあの家は村の物だから腹いせに破壊したり壁を引っぺがして持って行ったりしないように」


あ、家をコピーしておいて良かった。

一旦実家に戻って背負子に収穫していた野菜と魔物の素材を詰め込んで村長宅へ置きに行く。


村長と別れる直前に【呪い属性魔法】を使った。

村長にかけた呪いは『徐々にハゲていく呪い』と『これから毎日足の小指をぶつける呪い』と『お腹が緩い体質になる呪い』だ。

どれも即効性は無く致命的なものではないけれど、地味な嫌がらせにはピッタリ。


私たちはコピーした家に戻り、亜空間の世界へ移動。

実家に帰宅した。


「不愉快な思いをさせてごめんね、シャノン」


「お父さんのせいじゃないよ」


きっちり呪いはかけてきたしね。

みんな外の公園に興味津々だったので、午前中はみんなで遊んだ。

久しぶりに童心に返ったけど楽しかった!

遊具の素材はぶつかっても痛くない、衝撃を吸収する結界つき。

転んでも怪我をしないように地面にも衝撃吸収結界。

遊具の紐などが絡まっても『危ない』と判断されたら緊急ワープで脱け出せるように。


お父さんまではしゃいでみんなで遊び、昼頃に休憩してお昼ご飯にした。

みんな今までお昼ご飯を食べる習慣が無かったから戸惑っていたけど、地面にピクニックシートを敷いて青空の下サンドイッチを食べるのは楽しかったみたい。


私は1度亜空間から出てノアで修練場へ向かった。


「おう、ノアの坊主。今日は来ないのかと思ったぞ」


「ちょっと用事があって。今日の差し入れはこれ」


「うむ、ありがとう」


もはやグルガさんが呼びかけなくてもノアの姿を見つけて解体員たちが寄って来る。

今日の差し入れはビッグバーガー。

みんなよく食べるみたいだから。


「おっ、ハンバーガーとやらか!今日のはボリュームあってありがたいなぁ」


「美味い!もう食えなくなるのが寂しいよ」


「店やってくれないかなぁ」


お店かぁ。

せっかく便利なスキルを持ってるんだから、商売するのも手だよね。


「ドラゴンの解体は今日で片が付く。明日ギルドの解体場に来れば代金を支払うぞ」


「分かった」


ここまで長かったなぁ。

解体最終日だけれど、家族が待っているので早々においとまして実家に戻った。


午後はお勉強の時間だ。

文字の読み書きと、それから王都に住むなら必要な時計の読み方を教えた。

それとお金を使って簡単な足し算と引き算。

ちょっと苦戦してるみたいだけど、うちの子たちは賢いからすぐに覚えられるだろう。


「シャノンちゃんはどうしてこんなこと知ってるの?」


というジョシュアお兄ちゃんの質問にドキリとした。

小さな村から出たことのない5歳の子供は文字は読めない、計算はできない、時計は読めないのが当たり前。

だというのに私は誰にも教わることなくそれらを知っていて、他の人に教えることができている。

控え目に言って異常だ。


「実は……私には女神様の加護があって、そのおかげで色々なことを知ってるの」


性格には『愛し子』という称号なんだけど。

どんな反応をされるのかドキドキしたけれど、「さすが僕たちの末っ子!」と褒められただけだった。

だけどもし教会に知られれば連れて行かれるそうなので、このことも他言無用となる。

うちには隠し事が多い。これからも隠し事が増えるだろう。家族には苦労をかけることになるけど、その分幸せにしないとね。


今日の晩ご飯は食堂で出す新メニューの相談で私が作る。

いくつか1つずつ作っていき、みんなに試食してもらって出すメニューを決める。

既に出来上がっている物を通販スキルで購入しても良いんだけど、それだと私が家から離れられなくなるから材料さえあれば作れる物にする。

あまり複雑な物は避け、できるだけ手軽に作れる物に。

それと一気にメニューを増やすと混乱してしまうため、まず増やすのは3品だけにする。


まず作ったのはシチュー。

具材を切って炒め、水を加えて野菜に火を通してシチューの素を入れるだけ。

1鍋作れば複数皿分できるし、作り置きもできて温めるだけで出せるためすぐにお出しできる。


「白いスープって初めて見たけど、とろっとしていて濃厚で美味しいね」


「野菜がほくほく~」


次に作ったのはキュイバードの照り焼き。

キュイバードは昨日お父さんが狩って来た物を使った。

お肉を切って焼いて、仕上げに照り焼きのタレを絡めて焼くだけ。


「美味しいーっ!」


「あのソースを絡めるだけなのにこんなに美味しくなるなんて……」


キュイバードは王都に行くと定期的に手に入るか分からないけれど、私が狩って保存しておくか通販スキルで購入して保存しておけば良い。

食材の保存用に通販スキルのオーダーメイド機能で電気ではなく魔力で動く冷蔵庫を設置した。

私の魔力を常に遠隔で使用するように設定したからいちいち魔力を補充する必要は無い。

消費魔力は本当に微々たるもので、全く気にしなくて良い。


最後は白身魚のソテー。

子供たちは魚と言えば時々行商人が持って来る魚の干物ぐらいしか食べたことがないので、干物じゃない魚を食べるのはこれが初めて。

白身魚にブラックペッパーをまぶしておき、フライパンにバターを溶かして魚を両面焼く。

焦げ目がついたら弱火にして、白ワインと醤油を入れて蓋をし、5分ほど蒸し焼きにしたら完成。


「ふわふわで美味しい~。ショウユ?っていうのは初めて食べたけど、癖になりそう」


「俺はちょっと骨が多くて苦手だな。味は美味しいんだけど」


どれも好評だったので、全て食堂のメニューに加えることになった。

それとステーキにかけるソースとして市販の『甘辛醤油ステーキソース』と『和風おろし醤油ステーキソース』、『玉ねぎ風味ステーキソース』を用意。ソースは日替わりで変更し、追加料金を払うとソースを選べる方式に。

うちではサラダは出していなかったけれど通販スキルで購入する新鮮野菜を使ったサラダを追加。

それにかけるドレッシングを各種用意。

野菜炒めには塩胡椒を使ってもらう。


これでうちの食堂で出せるメニューは

・ホワイトシチュー

・コンソメスープ

・白身魚のソテー

・キュイバードの照り焼き

・日替わり魔物肉のステーキ

・ドレッシングをかけたサラダ

・塩胡椒で炒める野菜炒め

・黒パン

となった。


パンは本当は白くて柔らかいパンにしたかったんだけど、それは貴族様が食べてる物で問題になる可能性があるので却下された。

だけど最初に食べていたようなガッチガチの歯に優しくない保存用の黒パンではなく、通販スキルで購入した黒糖テーブルロール。

黒パンというのはライ麦を使った物らしいけど、これは黒糖入りで黒いだけでライ麦を使ったパンではない。


みんなには宿の開店日までにメニューを覚えてもらわないとね。

ご飯を作るのはお父さんとリオお兄ちゃんだけだけど。

 


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