第八十話 荒れた道が語るもの
自分の先祖と旅を共にする、それはどういった気分であろうか。少なくとも、筆者である私が生きている時代でそれはかなわないことだろう。
無鉄砲な青少年は、今、電動トレーラーの後部座席に座り、両手に花の状態である。もっとも、一人は彼の先祖であるネイツーが隣りにいる。いつになく縮こまって大人しい右隣のトウジを横目で見て、リナはなんだか可笑しかった。
世界崩壊の原因となった『リリス』の処へ向かう旅を、結局アテナはトウジに許可している。同行者はザーフェルト、クローゼン、リナ、それにネイツーの四人だ。リナの両親も危険すぎる旅に娘が行くというので、何としても思いとどまらせようとしたらしいが、彼女は大人しそうに見えて考えを曲げない性質である。最後には、リナの両親が根負けしてしまった。好きにしろ、と言うしかない。
ただ、ネイツーが同行するから、トウジの両親もリナの両親も、旅を許したのだ。この透明感を持つ美貌の女性は、アテナタウンの住民にとって絶対的な氏神である。強力な力を持った御先祖様が子供たちを守って下さる。ネイツーが心強く請け負ってくれなければ、何がどうであろうが、トウジとリナは『リリス』と話をつける旅に出られることはなかった。
南西へ続く旧時代の道はどこまでも長く、アテナタウンから、もう3日も車を走らせ続けている。道は少しずつ荒れてきており、車窓から見える草木もそれに伴い徐々に鬱蒼としてきた。
「疲れていませんか? トウジ、リナ」
「いや、全然疲れてないよ。旅はあちこち行って慣れてきたしね」
「私も大丈夫よ。それにしてもかなり車で遠くまで来たわね」
アテナがいつも見せるような慈しみの微笑みで、ネイツーは子孫である彼らの様子を暫く見ている。そして彼女は左手をトウジの頬に伸ばし、優しくさすった後、労るように頭も柔らかく撫でてあげた。トウジは照れくさいような恥ずかしさを覚えている。しかし、ネイツーの慈しみの手には、心が休まる安心感があった。
「リリスノ処ヘハ、モウ3日車ヲ走ラセナケレバイケマセン。マア言イ換エレバ、半分来タトモ言エマスガ」
「物騒ナ物ヲ積ンデ来タカラナ。今回ハ暴レル事ニナリソウダゼ。勘ダケドナ」
とても人間らしい第六感を働かせたクローゼンの言葉を、頼もしいものとしてトウジたちは受け取っている。『リリス』に会えば、旧時代の終末に何があったのか全て分かる。真相を究明する使命を胸にいだいたトウジの顔は、いつになく凛々しく引き締まっていた。




