第七十七話 3つの課題
「それじゃあ根本の解決にならないよ! リリスがとんでもないことをしたのは分かるよ。でも、それにも理由があったはずだろう? 何とか行って話し合わないと!」
この子はこう言うと、アテナは予想していた。正論ではある。しかし暴走し、現在どういう思考状態になっているか全く分からないリリスの処へ、向かわせるのは危険過ぎる。トウジの安全を確保するのは簡単なことだ、彼の要求をはぐらかし、命が保障出来ない旅を許可しなければいい。だが、長い歳月を人と共に過ごし、とても「人間らしく」なったアテナは、冷静な思考の中に、愛する子孫であるトウジへの感情が入り、暫く悩み抜いた。
「……トウジ、あなたが一番私を弱らせてくれる。どうしても行きたいのですね?」
「そりゃそうさ!」
「分かりました。しかし、今までと比較にならない危険な旅になります。許可を出すのに条件をクリアしてもらわなければいけません。それが無理なら私に従ってもらいます」
「分かった。条件はなんだい?」
リナ、ザーフェルト、クローゼン。また、マリアやテレジアなど、コントロール・ルームにいる誰もが固唾を飲んで、今までで一番厳しい表情をしたアテナの大型モニター上のイメージを見ている。
「トウジ、あなたはセトからアキヒトのブレスレットを受け取りましたね。それはあなたの秘められた超能力を引き出すものです。その使用法を完全にものにするまで訓練を受けて下さい。それが一つ」
「分かった。それはしっかりやるよ。まだ条件があるんだよね?」
「はい。次の一つは、武装度を完全にすることです。アテナタウンには幾らかの武器がありますが、リリスの所在地に行くというのなら、それを携行しただけでは不十分です。私とカツトシ、マリー・サトル総合工科学校の皆さんと相談しながら、必要な性能を持つ武器を揃えて下さい。それが二つ目」
「ホウ、ソウカ。久シブリニ暴レマクルコトニナリソウダナ」
既にクローゼンは、リリスの処へ向かう旅に同行するつもりだ。そして、アテナが提示した三つ目の条件はそれに関連するものだった。
「最後の条件は、旅の同行者を決めることと、旅へ向かう完全な許可を、町の住民の皆さんから得ることです。トウジ、特にあなたの御両親の許可をしっかり得なければいけませんよ。それが完全と見なされなければ、私がリリスの処へあなたを向かわせることはありません」
「わ、分かったよ……これをクリアするのが一番難しいな」
3つの条件を半年以内にクリアする確率は、ゼロに近いとアテナは計算している。三つ目の条件に至っては、いくら年月が経とうが、敢えて可能性が未知数の課題を出した。智慧の女神が、トウジの誠意と覚悟、それに心を試しているのだ。




