第五十五話 先祖譲りの探究心
「フューエルタンク……今ではザーフェレジアという地名になっておるが、このアテナタウンからかなり北西に行った所にその村落がある。この町からそこへ働きに行く者もおるな。お前たちも知っておるかもしれんが」
「聞いたことはあるよ。機械を作る原料のような物を採掘する村なんだろ?」
「そうじゃ。そこで今から220年程前の昔にこういう事件があってな」
アテナタウンの主であるセトが、サラッと数百年単位の重ねてきた年数を言っている。この老翁がそれを言うと、実際にそれだけの年月が流れたのだという重みが出る。
「ザーフェレジアのマザーコンピューターアマテラスが、ある未知の廃都市と思われる場所からの通信を受け取ったというのがそれじゃ。それは暗号で送られてきたんじゃが解読した結果、救援を頼むというものじゃった。ということはその廃都市にはまだ人がいると当時考えられた」
「なるほど、そうなるわね。で、助けに行ったの?」
「いや……。それは出来ておらん。救難信号を受け取ったのはその一度きりで、昔の通信技術では信号の方向を逆探知しても大雑把な特定しか出来んでな。アテナとアマテラスの二つのマザーコンピュータは悩んだが、機密事項として触らず保管することにしたんじゃ」
「それを俺たちの時代で確認しに行って欲しいというわけなんだな。でも、そんな昔の救難信号なら、もう……」
トウジはそれ以上言わず口をつぐんでいる。リナも彼と同じ考えである。今でさえ人類の生存数は少ないのに、220年前といえば、ほぼ絶滅寸前の頃だったと言える。その当時の救難信号なら確認する旅にでても望みは薄い。
「そうじゃな。わしもそう思う。じゃから気が進まんわけじゃが……。トウジ、望みがほとんどないといっても、お前はこの話を聞いてどう思った? それ次第じゃ」
「俺は俺たちの仲間である人間がいる可能性が限りなくゼロに近くても、ゼロでない限りは、そこへ確認しに行きたいと思う」
セトはトウジがそう答えると分かっていたように、ニヤリと笑った。
「よかろう。決まりじゃな。お主に確認の旅に出てもらうとして続きを話そう。決めたからには長い道になるぞ? よいか?」
「ああ。覚悟はできている」
トウジの目はこれから始まる冒険へ向けての探究心と、勇躍とにより輝いている。
(アキヒトの目に生き写しじゃな……。懐かしいわい)
心のなかでセトはそうつぶやき、トウジの目を見て微笑んでいた。




