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永遠の架け橋  作者: チャラン
第二章 トウジの章
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第四十七話 ご先祖様のお墓

「アテナ。こういう物を作ってみたんだ」


 持ってきていた自作のレーダーをトウジはナップサックから取り出し、アテナが確認できるように見せた。それを見たアテナはかなり感心しているようだ。


「この計器は……。かなり複雑な回路が必要だったのでしょうが、よく作られましたね」

「へへっ、苦労したよ~。回路図を考えるのにまず骨が折れたし」

「ここまでの物を作れるんだから、トウジも学校で働けばいいのに……」


 アテナはやはり、すぐにそのレーダーを分析して、どういう働きをする物であるか認識したようだ。独力で埋蔵物探知レーダーを作り出したのはすごいことなのだが、傍らにいるリナから見ると才能の無駄遣いにしか見えないらしい。


「で、これを使ってやりたいことがあるんだ。そのためにハチギ山の頂上付近まで登りたい」

「……言いたいことはありますが、まずは一通りあなたの話を聞きましょう」


 トウジの予想通り、アテナはハチギ山の事を出すと表情を曇らせ、口調も少し厳しいものになった。アテネビレッジの時代から三百年が経った今も、ハチギ山はこの町の糧となる獲物の猟場であったが、昔と変わらず危険も多い場所だ。自身の子孫にもあたるトウジとリナをそこへ行かせたくないのがアテナの心情である。


「少し前に俺たちのご先祖様、アキヒトが残した暗号文をリナが解読しただろう? そのことがずっと気になってて探知レーダーを作ったんだよ」

「ああ! そういうわけだったの!? マリア、ちょっとあの暗号文データを出してくれない」

「分カリマシタ。今マデ解読出来タ人ハイマセンデシタガ、リナハヨクコレガ読メマシタネ」


 傍にいて一連の流れを聞いていたマリアは、端末からモニターに暗号文を映し出し、リナが読めるように見せた。複雑に暗号化されているので、そのままでは何が書いてあるのか全く分からない文だ。


「我が墓を目印として南東へ少し行きたる所、我が後世に残しし宝とする物を深く埋める。その外殻は特殊鋼でできたり」

「確かにその通りのことが書いてあります。この暗号文は私が知っている旧時代のテクノロジーの一部を用いて、昔、アキヒトとマリーに頼まれて作ったものです。リナがこれを解読し、トウジが独力でレーダーを作りました……。時代が進み、時宜なのかも知れませんね……」

「えっ! じゃあ山に登って、ご先祖様のお墓に行ってもいいのかい!?」


 そう考え直しかけているアテナを見て、期待を込めて聞いてきたトウジの表情に、アテナは仕方がないという顔をして優しい口調に戻った。


「しょうがありませんね。私が負けましょう。一週間後に二日間だけ入山許可を出します。ハチギ山の管理人の方々には私から知らせておきますが、トウジとリナも挨拶しておくのですよ」

「やったぜ! ありがとうアテナ!」


 満面の笑顔で喜ぶ問題児の子孫に、アテナも困り顔の苦笑を浮かべている。

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