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手紙

 セイカが魔法陣と思われる発光した紋様の中に消えた公園では、目撃した皆がどうしていいか分からずフリーズしていた。

 すると、また同じ場所の一点が光だし、今度はマンホールくらい小さめの魔法陣が現れる。

「────!!」

 吸い込まれたセイカが出てくるのかと皆は息を呑んだ。が、収束した光の柱の跡には、A4サイズくらいのちょっと厚みのある包みがあり、その上に白い封筒が載っている。

「こ、これは……!?」

 ベンチで本を読んでいた青年が逸早く近づき、片膝を地面について封筒を手に取った。

 白い封筒の宛名には『家族や町のみんなへ』と、裏に返せば隅に『大茴香(だいういきょう)セイカ』と書かれている。

「セイカ姉ちゃんからの手紙!?」

 青年の周りから覗いていた子供達が騒めいた。

 今し方消えたばっかりなのに、何らかの包みと手紙が現れるとはこれいかに。

「とにかく、セイカちゃんの家に届けに行きましょう」

「そうですね。彼女が消えてしまった様子も話したいですし」

「オレもしょうげんってやつするぜ!」

「ぼくも!」

「あたしも!」

 買い物帰りの女性が提案して、目撃者全員で包みと手紙を大茴香家に届けることになった。




「確かにこれはセイカの字ね」

 娘が消えた経緯を聞いたセイカの母は、届けてくれた皆にも分かるよう手紙を声に出して読み終え、冷静に判断した。

「セイカ……何やってんだ」

 A4サイズくらいの包みを解くと、『特虹戦隊(とっこうせんたい)ディヴァース(ファイヴ) 公式フォトブックvol.1』と『特虹戦隊ディヴァースⅤ 公式フォトブックvol.2』が出てきた。

 セイカの兄はその一冊をパラパラめくって呆れている。

 子供達はもう一冊のフォトブックを見て、「セイカ姉ちゃん、スッゲー!!」と目をキラキラさせていた。何十年も続いている戦隊ヒーローは、いつの時代も人気である。

 そこへ駆けつけてきたのはセイカの叔母だ。

「ちょっと姉さん! セイカが消えたってどういうことッ!?」

 近所に住む叔母は、セイカに多大な影響を与えた人物でもあった。

 彼女は公園での出来事を聞き、手紙を読み、フォトブックには載せられなかった裏方全員集合等の封筒に入っていた数枚の写真と、フォトブック二冊を見終えると、ソファーに沈み込むように座って一息ついた。

 手紙の字が消えていないので、トミーの魔法陣は成功したといえる。

 そして、これらが届く時を消えた直後にしたのも、セイカの気遣いと実現させたトミーの天才的な手腕あってのものだ。

異世界(あっち)では一年経ってて、()()()も見つけちゃうなんて……」

「還ってくる気はさらさらないわね」

「しょうがねーな。セイカはガキの頃からイケオジ好きだったもんな」

 叔母、母、兄、この場にいる家族は漏れなく諦観している。

 戦隊ヒーローの番組を見出したのは兄の影響で、叔母の趣味からスーツアクターという職業を知って憧れて、どれだけ酷い運動音痴でも自分にできる最大限の努力をしていたのを知っている母だ。

 番組でいつも推しに選ぶキャラクターは、ヒーロー側の指揮を取る年上キャラ(人外含む)か悪の組織のイケオジだった。

 それを理解していて、日常にも支障をきたす運動音痴が治ったとあれば、還ってこないのを責められるはずがない。

「だいたい、宇宙時代ってなによ! 羨ましすぎるでしょう!」

「叔母さん、本音はそれかよ」

「えー! 兄ちゃんはうらやましくないのかよ」

「クルマがおそらとんでるんだって」

「うちゅうじんがいっぱい……!」

「運痴すぎて結婚も無理かと思ってたけど、運動神経抜群になって、夢も叶えて、いい人見つけて、お金にも困らないなら良かったわ」

 セイカの母は非常に合理的な感想を述べた。

「叔母さんの多趣味もセイカのプラスになったみたいだな」

「でしょう? こんな時のために私はセイカを教育していたのよ」

『それはない』

 セイカの叔母がどんな人物か知っている皆は、声を揃えてツッコミを入れた。

 現実に異世界召喚されると誰が予想して生きていようか。

「まあでも、セイカ的にはハッピーエンドだな」

「母として、このルニーっていうイケオジに『うちの娘を泣かせたら許さないわよ!』とビシッと言ってやりたいところだけど」

「そうねぇ。それはこの町内に住む人達の総意ね」

 買い物帰りの女性が頬に手を当てて、セイカの母に同意する。子供達も腕を組んで、うんうん頷いている。

 酷い運動音痴で近づくのも危険だが、健気に夢に向かって頑張る〝残念な美少女〟セイカは、いつでも温かく町内の人々に見守られていた。

「私達はセイカの幸せな姿が写真や本ででも見られただけでも良しとしなきゃ」

「だよねー」

「そこでご相談なのですが、セイカさんは失踪したとして──」

 ベンチで本を読んでいた青年が、眼鏡のレンズをキラリと光らせた。彼は弁護士の卵なのだ。

 セイカがいなくなった大茴香家だが、今後も町内を巻き込んで騒がしく過ごしていきそうである。



END.


これで一応、完結です。

初めての投稿作で分からないことだらけでしたが、なんとか完結まで漕ぎ着けました。

全48~49話が主流の昨今、脚本家は複数人で作る戦隊を観て育ったので、抜けている話数は別の方に書いてもらうつもりです(笑)。

最終回、シャーリーから一人一人に労いの言葉を添えてICタグを渡したかったのですが、全話書いてないから感動も半減以下だと思って、ああいう形にしました。

書きたいエピソード(中身が入れ替わるお約束回とか)もまだいくつかあるので、こっそり途中の話を追加するかも……?


次に書くのはムーンの方でとなりそうです。

エフェドラの元になったキャラクターが主人公です。

ええ、ご存じの通り、18禁でドSです。もちろん本物の魔王です。

彼女をこちらで書こうとしたのがまず無謀でした。何度エフェドラ×ユーリィが18禁になりかけて修正したことか……!

投稿するまで少し時間がかかるかもしれませんが、18歳以上の方、またお暇がありましたらムーンの方へ覗きに来てください。


それでは、ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。

筆の遅い当方の拙作に一年以上も付き合っていただき、感謝の念に堪えません。

またいつか、何かの拙作でお会いできることを祈って。

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