第十八話 狂愛が芽生えた日《一》
突然ですが、時系列が過去に戻ります。
二、三話続くかな?
話が進まなくてごめんなさいw
どうぞ付き合ってヤッテ下さい。
退屈はさせませんので♪
月に照らされる夜の森に響くは獣の遠吠えと数多の魔物が走り迫る地響きのような足音。
「や~!! 助けてぇえ!! パパ、マ──アっ…」
突然、意識を失って倒れ込む女児。
見れば、その背中には短剣が深々と突き刺さっている。
「痛いよぉ! 怖いよぉお! 誰かぁ!!」
噛み砕かれた足を引きずって必死に逃げようとする少年。
「きゃぁああ!!! やめっ…ぐぇ、イっ、ゴフッ…カハッ…」
緑色の魔物に飛び掛かられて強烈な殴打をくらい続け、口から血と贓物を撒き散らして絶命する少女。
「皆、私の魔法で抑えてる内に──」
「くそっ、なんだってこんな…っ!! …あがっ、やめっ! ギャァアアア!!」
杖を持った女性が言葉の途中に首を失って断面から鮮血を吐き出しながら倒れ込み、剣を持って襲い来る敵を迎撃していた男性が背後から迫っていたソレに気づかず、餌食となる。
眼下に広がるは正に地獄の光景─武器を持たぬ少年少女、武器を持っていても圧倒的な物量で肉塊へと変貌を遂げる大人達。
襲い来る猛威になすすべなく蹂躙されていく、悲鳴が、断末魔が、捕食者の喜びの声が、友達を食べられた憎しみの声が、僕の耳を潤して、脳に焼け付くような快楽をもたらしてくれる。
あの時と同じように、僕はその光景を大樹の枝に座って見下ろしていた。
誤解がないように言っておくよ?
これは僕が見ている幻覚だ。
でも、実際に現実に起こった事でもある。
◆◆◆◆
今更だけど、現在クラムの町は深刻な子供不足に陥っている。
当然、学び舎もない。
いや、なくなったというべきかな。
幸い、成人した若い男女は沢山いるので、数年もすれば新たな命が産声を上げるのは間違えない。
まあ、とにかくこの町にいる子供は僕とミリィの2人だけだと言うことだ。
しかし実際、この町には三年前までは子供もいっぱい居たし、学び舎もあった。
町は子供の無邪気な声に溢れ、森は皆の楽しい遊び場だった。
領主の家でパーティーをしたり、大人達へイタズラしたり…。
春や秋になれば、皆で近くの森へ遠足に行ったり、夏や冬にはそれぞれ行事を楽しんだりした。
友達もいっぱい居たし…親友も居た。
おっと、この場で多くを語るつもりはないよ。
全ては三年前、僕がまだ七歳の時の話だ。
◆◆◆◆
「起きなよ、ミリィ…朝だよ?」
「んんっ…もうちょっと…」
朝の光が窓から差し込む小さな部屋。
その部屋の主である金髪少女は、銀髪の少年の声に寝返りを打ち、布団を目深に被る。
「アルくーん!! うちの子起きたー?」
「もうちょっと、かかりそうでーす!!」
階下から聞こえた少女の母親の声に、部屋の扉から顔を出して声を上げる少年。
「そう、いつもありがとねー!!」
感謝の言葉を聞きながら、少年はもっこりと脹らんだ布団の上に立つ。
「ミリィ、どうしても起きないつもり?」
「もうちょっと…寝かせてぇよ~アルくん~」
「ダメ、学校でしょ」
「や~、もうちょっと~」
「ダメ」
「・・・」
「ミリィ?」
「・・・」
訪れる沈黙、とうとうだんまりか…。と少年の額に青筋が浮かぶ。
そこで、少年は強攻策に出ることにした。
「いい加減に──起きろ!!」
彼女の被る布団に手をかけて、後ろに体重をかけながら両手を上に持ち上げる。
布団に掴まっているだろう少女ごとベッドから放り出そうとしたのだ。
──バッサァ
「え? うわっ!」
しかし予想に反してその抵抗は極めて薄かった。
宙を舞う布団。
勢い余ってベッドの上に尻餅をつく少年。
「もう、ミリィ…いったい──!?!?」
そして、彼は布団というヴェールに包まれていたモノを見た。
すやすやと可愛らしく寝息をたてる愛嬌のある顔、顕わになった幼くほっそりとした体躯は、艶やかというよりも健康的な雰囲気を醸し出している。
惜しげなく晒された肌は雪のように白く取れたての果実のように瑞々しい。
細く小さな足を抱え込み、丸くなった腰には少女の長い金髪がかかり、朝の光を乱反射して、キラキラと輝いている。
真っ白なシーツに幼い裸体、窓から差し込む太陽の光。
もはやその光景は、幻想的ですらあった。
「ななっ!? なっ!!? ミリィ!!??!」
少年が顔を赤く染めて後退る。
無理も無い、少女は一糸まとわぬ姿で寝入っていたのだから。
軽くパニック状態に陥る少年。
そんな少年の声に少女はゆっくりと目蓋を開け、ゆっくりと起きあがる。
そして、少年の方へと眠たげな視線を向けたと思えば、その場で足をサイドへ崩し、右手をベッドについて左手を頭の後ろへと持って行き、毛一つ生えていない脇を晒す──セクシーポーズというやつだ──そして……。
「いやぁぁあん♡ アル君のエッチ~♪」
「・・・」
鼻にかかったような甘ったるい声で、体をぎこちない動きでくねらせるのだった。
──その瞬間、少年は自分がおちょくられた事を理解した。
◆◆◆◆
「いひゃぁあああいい!! ほっへほへふーー!!」
「きゃあ!? な、なに!?」
突如、家全体を揺らす程の声量で響いた奇っ怪な悲鳴に、ミリィの母─メリーはその場で大きく跳躍する。
そして着地すると同時に、手に持った皿を机に置くと、その場でファインティングポーズを取って辺りを警戒する。
しかし、何も起きない。
「あれ? 気のせいかしら?」
怪訝に思ったメリーが構えを解いたとき、木製の階段を軋ませて降りる二人分の足音。
やがて降りてきたのは、彼女が腹を痛めて必死に生んだ二人目の娘である金髪少女──ミリィと、彼女の親友の息子である銀髪少年──アルアイン・クラムだった。
「何してたのよ、ミリィ。お姉ちゃんはとっくに学校にいったし、遅刻するわよ…って、あら?」
壁に架かった時計を見て、腰に手を当てて娘を叱るメリー。
と、あることに気づいて眉を顰める。
「あんた、そのほっぺどうしたの?」
よく見れば、普段は白い娘の頬はほんのりと赤く腫れており、しかも本人はその頬を痛そうに手で覆っている。
ミリィは涙目で母に訴える。
「お母さん、アル君が…!! ほっぺつねったの!! とれちゃうかと思ったんだよ!!」
それを聞いたメリーは、更に眉を顰めて少年へ視線を向けそして──。
「ゴメンね。アル君…。あんた、何したのよ。バカミリィ…」
溜息と共に娘を非難した。
「そうだよ! アル君! さっさとお母さんに全部白状しな──え? 私!? 何で!?」
思いがけない味方の裏切りにも等しい行為に、ミリィは一層涙を浮かべてメリーに詰め寄る。
「なんで!? お母さん!! 私は被害者なんだよ!?」
メリーそんな娘を片手であしらいつつ、色とりどりの朝食が並べられたテーブルにつく。
「おおかた、あんたが変なちょっかいアル君にかけて、怒らしたんでしょ? いつもの事じゃない?」
「あ、合ってるけど!? じゃなくて…でも─「今日のは特に度が過ぎてました」─あ、アル君!! 嘘言わないで…って食べてるし!!」
母の図星すぎる見解にどぎまぎしつつも、必死に弁解しようとするミリィ。
そこに、いつの間にか席について”お味噌汁”を啜っていたアルアインの報告に、母の目が険しくなる。
「あんた……」
「えと、えと、私は悪くないもん! ソレに──」
追い詰められた彼女は、食卓に爆弾を落とす。
「今日のは、お母さんもお父さんに向かってやってもん!」
「ぶほッぉおおっ!!」
「だ、大丈夫!? アル君!?」
溜まらず口に含んでいた味噌汁を吹き出すアルアイン。
ソレに驚くメリー。
立ち上がって、クローゼットからタオルを取り出し、アルアインに渡す。
丁度タオルを渡すときに見えた少年の、自分に向けられたジトッとした視線に戸惑う。
「ちょっとミリィ、私がお父さんに何したっていうのよ!? ていうか、あんたホントに何したの!? こっちに来て言いなさい!!」
「や、お母さん!? 学校が!?」
そういって、ミリィの手を引いて部屋を出ていくメリー。
しばらくして聞こえてきたミリィの悲鳴と強烈なケツ叩きの炸裂音を右から左へ聞き流しながら、アルアインは次のおかずを口に運ぶのだった。
よかったら感想お願いします!




