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俺の妻は忍(しのび)ですか? ――でもって、もしや、次に殺される男は俺ですか?? ええ〜っ! 俺、まだまだ生存希望ですけどっ!?  作者: ひの


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当日

 夜明け前に黒龍に跨った。

 既に馬に乗っていた一益がどこからともなく現れ、影のように俺に付き従った。

 800人の仲間たちは、既に屋敷の外で待機している。


 俺が仲間たちの方へ行こうとすると、一益が小さく袖を引いた。

 門の脇に、火鳥が一人ぽつんと立っていて、引き締まった顔で俺を見上げていた。

 俺と火鳥の目が合った。


「ご武運を」

 火鳥が言った。


「――行ってくる」

 俺は応えた。

 火鳥は、いつも通りの無駄のない所作で頭を下げた。

 俺は頷き、前を見た。


 俺は、出陣の準備を整えた仲間たちに手を振りながら、馬を進める。そのまま門を通り抜けた。


「みんな、準備はいいか!!」

 仲間たちに向かって、大声を張り上げる。

「応!」

 力強い声が応えた。


 俺は仲間たちを見回す。俺の傍に油断なく寄り添いながら、そっと屋敷の門を振り返る一益を、目の端に捉えた。


 俺は屋敷を後にした。




 朝靄の立ち込める川の前。信勝の軍は既に待機していた。

「待たせたな」

 勝家は頭を下げた。


「信勝様は、兄上である和颯様に、全軍の指揮をお願いしたいとの事です」

「よし、分かった」

 任せておけ。

 俺は背筋を伸ばした。



 そうこうしているうちに、信光叔父さんがやってきた。

 勝家は、俺が全軍の指揮を執ることになっている旨を信光叔父さんに説明した。


 信光叔父さんは口を曲げ、眉にしわを寄せて聞いていた。

 聞き終わると軽く頷いて俺を見る。

「なるほど。良いだろう。

 ――で? どうする?」

 俺は答えた。

「いざ、出陣!」


 勝家と信光叔父さんはきょとんとした顔をした。


 一瞬の間があって、信光叔父さんが口を開いた。

「――うん。で、どうする?」

「だから、出陣!」

「――うん。それは分かってる。

 どう出陣するかって事だ」

「どうって――どう……?」

 出陣に、どう、とかある? 右足から、とか?


「どうやって勝つかって事だ。和颯、お前はどう考える?」

「そりゃぁ……一生懸命頑張って! 戦って! 勝つ!!」



 信光叔父さんが額に手を当てて俯いた。



「た……例えばでございますが」

 勝家が上ずった声を上げた。


「敵は3か所に別れて駐屯しております。そこで全軍を3つに分け、3か所同時に攻撃を仕掛けるのはいかがでしょうか?

 そうすれば敵は驚き、大混乱に陥るに違いありません」


 俺は開いた口が塞がらない。

 すっ……すげぇ作戦だ!!


「勝家……凄いな! 天才だ!!

 俺はそんなこと――思いつきもしなかった!

 なんて――なんて策士なんだ!!」


 勝家は困ったように目をそらした。

「おほめにあずかり光栄でございます。

 ――ですが、そこまで驚かれるほどの作戦ではないかと……」

「いや! すごい! これは凄い作戦だぞ!

 絶対に負けない気がしてきた!」


 信光叔父さんが苦笑いしている。


 俺は言った。

「よし! 軍隊を分けよう。俺が先陣を切る!」

 勝家が驚いた顔で俺を見た。

「いえ、なにも和颯様直々に先陣を切らなくても――」


 勝家の言葉を遮るように、信勝叔父さんが機嫌よく言った。

「よし、行ってこい。その代わり、俺も和颯と一緒に行く。

 危なくなったら声をかけるから、その時は必ず俺の言う事を聞け」

「はいっ!」


 信勝叔父さんは勝家に言う。

「軍隊の振り分けはお前に任せる。

 俺の甥っ子は、死なない程度に俺が面倒見るから、あとはお前が何とかしてくれ」

「御意!」

 勝家は信光叔父さんに頭を下げた。


 よし!

 凄く勝てる気がしてきたぞ!

 ぞくぞくする!

 早く出陣したい!!

 



 ――あれ?


 ところで、俺が指揮を執ることになっていたはずだけど、指揮って何をいつ、どうやって執るんだ??



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