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陰陽高校生 大戦記  作者: 風間 義介
六章「顕現せしは大妖の群れ」
63/128

八、

 護と月美、そして勇樹と桜を含む「学園」組がチームとなって、戦闘用式神との集団戦を繰り広げていた。召喚された式神は、土蜘蛛型と鬼型の二つ。普段、自分が使っている武器を使用することを許可が出たため、護はしまっていた霊剣を、月美は霊弓を構えた。

 「剣か。俺と同じ、前線タイプか?」

 「似たようなもんかな……もっとも、後衛もできないこともないけどな」

 そう言って、腰につけたポーチから独鈷を取り出し、その刃を顕現させた。

 護はぐっと足に力を込め、地面を蹴り、式神たちとの距離を詰める。それを援護するかのように、勇樹は護に向けて風をぶつける。

 風の後押しを受けて、かなりの速度で式神との距離を詰めた護は、両手に持った刃を閃かせた。その刃を防ぐことができなかった式神たちは、その体を切り裂かれ、姿を消した。

 その場には、一文字に切り裂かれた人形(ひとがた)が舞い落ちた。

 式神は護の襲撃に気づくと、左右から挟み撃つ形で襲い掛かってきた。

 だが、その二体もまた、護にて傷を負わせる前に、その姿を消してしまった。護は霊剣を逆手にもち、親指を上に立て、後ろにいる月美に合図を送った。式神を倒したのは、彼女の霊弓で放った矢だったことを、護は理解していたようだ。

 勇樹たちとともに戦う前は、護と月美、二人だけで戦ってきたのだから、これくらいのコンビネーションは息をするよりも簡単だ。

 式神の大群を前に、善戦している護と月美を見て、同じく前線に立っていた勇樹と耕介はその場に立ち尽くしていた。

 「……なぁ、勇樹。俺ら、いらないんじゃね?」

 「護は本気になるとこうだからな……一対一(タイマン)はったら勝てるかどうかわからないな」

 今まで手合わせをしてきた勇樹だからこその一言だ。

 だが、と勇樹は心の内で付け足す。

 ――今のあいつと手合わせをして、果たして勝てるかどうか

 今の護は、それだけ鬼気迫るものを感じさせる。

 それは月美も同じだった。

 結局、護と月美の二人だけで式神の大群を討伐してしまい、今回の訓練は護と月美が全快したかどうかを確かめるだけにとどまってしまった。


 護たちが戦闘訓練を終えた頃、明美と清もまた、戦闘訓練を受けていた。

 清は元々、勘解由小路家の血筋であるが故、素質そのものは申し分ない。だが、明美の方は見鬼ではあるが、陰陽師あるいはその他の術を学ぶだけの力があるか、その片鱗を見ることが目的だ。

 そのために式神はかなり弱体化させられている。

 弱体化されているのだが……。

 「……お前、本当に人間か?」

 清は目の前に散らばっている人形を見て、明美に聞く。

 明美は自分にもわからない、という具合に引きつったほほ笑みを見せていた。その手には、彼女の霊力を図るため、と言われ、手渡された刀があった。その刀身には、青白い光が溢れ、陽炎のように揺らいでいた。

 刀身に溢れる光は、手にしている人間の霊力だ。そして、その光が陽炎のように揺らめいているということは、それだけ強大な霊力が明美に宿っているということだ。

 ちなに、清も同じ刀を持っているのだが、そこから溢れている光は、せいぜいその刀身を包み込む程度のもので、明美のそれとは程遠いことを物語っている。

 ――こりゃ、軽く嫉妬しちまうな

 清は、一般人だったはずの明美に秘められた霊力が高いという事実に、ショックを隠せなかった。

 勘解由小路という家が嫌いなわけではない。むしろ、自分の家柄が千年も続くものであることを誇りに思っている。

 けれども、分家筋、ということが影響してか、その霊力は一族の中でもかなり低い。それこそ、いま隣にいる一般人よりも。

 だが、清はそのことで自分を卑下することはしない。まして、自分よりも霊力が高い人間に嫉妬することもない。逆に、「霊力がなければ、補えばいい」と考えるほど、自分の欠点を見つめ、それを補うものを見出そうとする。

 それが、月華学園の仲良しグループ(四人組)で最も周囲を見渡し、自分の立ち位置を見極めることに長けた、勘解由小路清、という少年だ。

 それが証拠に、明美も負けじと清に言い返す。

 「そういう勘解由小路くんも、あんなに的確な指示を出しておいてよく言うよ」

 「まぁ、それが俺の役目だからな」

 清はクールに微笑みながら、言葉を返す。

 霊力が低く、知っている術の種類も少ない清だが、冷静に状況を見極める力がある。それが、清の言うところの「足りない霊力を補うもの」だ。

 「さっさと適正試験を終えて、護たちと合流するぞ」

 「了解(ラジャ)

 明美は刀を構え、清に答える。

 目の前には、さきほどと同じ、戦闘に特化した式神が召喚された。

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