四、
桜たちが善戦している様子を背中で感じていた護と勇樹は、やれやれといった感じで微笑み、自分たちの方に向かってきている妖の群れを見た。
改めて見ると、かなりの数の妖がこちらに向かってきていた。
「やれやれ……いけると思うか?この数」
「さて、な……けど、手がないわけじゃない」
護は勇樹の言葉に答えながら、霊剣を構え、刃に刀印を添え、目を閉じる。何かの│神咒を唱えているのだろうか、口元がかすかに動いている。
動きが止まっていることを察したのか、妖の一体が護に飛びかかってきた。
「しっ!」
勇樹は飛びかかってきた妖が自分の間合いに入ると、その体に思いっきり拳を叩き込んだ。体躯がもともと小さいためか、妖は拳の勢いに負け、そのまま空へと吹き飛んでいった。それから次々と襲いかかってくる妖たちを、勇樹は拳と蹴りだけで空へ、壁へと突き飛ばしていった。
何体、壁や空に妖を突き飛ばしていったのだろう。突き飛ばし、護を援護することに必死で、もはや数を気にしていられなくなっていた。
いつ神咒を紡ぎ終えるのか、そんなことを気にしていると、肩ごしに、護の声が高々と響いた。
「伏して願わくば、来たれ。闇を切り裂く刃、雷神の化身よ!」
護の言霊にこうするかのように、勇樹たちの上空に暗雲がうずを巻き、白い稲光が時折現れた。
妖たちは突如現れた雷雲に不安を覚えたのか、何やら動きが慌ただしくなっている。そんなことはお構いなしに、護は神咒を紡ぐ。
「雷電神勅、急々如律令!!」
護の詠唱が終わると同時に、雷雲から放たれる稲光がその強さを増し、今にも落ちてきそうだ。
目の前にいる陰陽師が何を呼び出したのか、それに気づいた群れの一体が、撤退を呼びかけようとしたが、時すでに遅し。
護が手にした霊剣を振り下ろすと同時に、妖たちに向かって白い光が降り注がれた。光は、妖たちを一瞬で灰塵へと変え、その場に残ったのは焼きこげたアスファルトと壁のみだった。
「やれやれ……ようやく終わった」
「お疲れさん」
「……む」
ねぎらいの言葉と同時に突き出された拳に、護も拳を突き出し、軽くぶつける。
二人の後ろ姿を、二人の少女が静かに眺めていた。
「あっちも終わったみたいね」
「みたいね……土御門くん、勇樹くんと仲良くなったみたいね」
桜はほっとしたような顔つきで月美に話しかけた。月美も同じく、ほっとしたような顔つきで護の背を見守っていた。
なんだかんだ言って、目の前にいる二人は人間嫌いに近い性格の影響で、友人と呼べる友人が少ない。ある意味、こういった、自分たちの所属の外で友人を得られるのはある意味、嬉しいことだ。もっとも、受け入れた相手とあのように安安と接することができるのは、ある意味で羨ましいことだ。
「……さ、帰ろうか」
いつの間に立ち上がっったのだろうか、護と勇樹が目の前にきて、談笑している二人に話しかけた。
声をかけられた少女ふたりは微笑みを返し、二人を挟むように歩き始めた。
少しばかりの間、にこやかに談笑していた四人だったが、暗がりを抜け、空を見上げた瞬間、その顔から生気が抜けていった。
空は既に、白み始めていた。




