四、
困った表情の月美と合流した清と護は、未だに納得いかないといった風情の明美とともに、いつもどおりの帰り道を歩いていた。
「む~……」
「明美、まだむくれてるのか?」
「だって、月美が全然フォローしてくれないんだもん」
明美がむくれていることに、多少のいらだちを感じた清がそう問いかけると、明美はなおもむくれながら答えた。
無理もないといえば無理もない。明美にとって非日常的な存在を認知させることはまず難しい。何より、彼女らにとって「非日常的」な存在と常に触れ合っていることを知られたら、おそらく、彼女との縁が途絶えてしまう。
月美も護も、それはいやというほど経験してきたことだ。
だから、何も言えない。言うことなどできない。
二度と、親しい友人との縁を絶やしたくはないから。それが、月美の本心だ。
護もそれを理解しているから、あえて何も言わない。
だが、護はいつか話さなければならないと思っている。隠し事というものは、いつかは露見するものだ。まして、それが自分の素性であればなおのことだ。
「だって、変にそんな話したら私たちがおかしな人って思われるかもでしょ?」
「そうだけどさぁ!」
明美はそれ以上反論できず、護と清の方へ視線をやった。どうやら、フォローを求めているらしい。
護はやれやれ、といった風情で頭に手をやりながら、ため息をついた。
「ま、人の噂も七十五日って言うしな。言っても、大して変わらなかったんじゃないか?」
「護までそういうこと言う~」
護が明美をフォローしたことに、少しばかり嫉妬した月美は頬を膨らませた。それを護は、困ったような微笑みを浮かべながら、彼女の頭を撫でた。
月美は若干、顔を赤くしながらなされるがままにしていた。
清はその様子をニヤニヤしながら眺めていたが、不意に険しい顔になり、周囲を警戒する。その気配に気づいた護も、周囲に気を配る。
「……清、さっさとここを離れるぞ」
「……あぁ」
護と清は二人に気づかれないように、そっと歩く速さを早めた。
「あ、ちょっと二人とも!」
「あ、待ってよ!!」
月美と明美は二人のあとを追った。
しばらくの間、四人は通い慣れた道を小走りに移動していた。しかし、気配はあいも変わらず、彼らをついて回っていた。
気配から逃れるように移動していると、行き止まりに到達した。
「……追い詰められた、か……」
清の言葉に、護は苦虫を噛み潰したような顔をし、月美に耳打ちした。
「月美、何があっても絶対術を使うな」
「え?」
月美は、護の言葉が信じられず、思わず聞き返してしまった。だが、護は二度は言わない、と言ってきて道の方へ振り返った。
そこには、黒い靄のようなもので包まれた何かが確かにいた。
「な……何、あれ……」
どうやら、見鬼ではない明美にも見えているらしい。いや、妖のほうが見せようとしているのだろうか。いずれにしても、この妖が四人を今回の狩りの標的にしたことに代わりはない。
「……平野、目を閉じてたほうがいいぞ」
そう言いながら、護は鞄から数珠を取り出し、手に巻きつけ、臨戦態勢に入った。




