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世界No.1の外科医、異世界転生!?  作者: 阿門 甲斐吽


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8/22

【第8話】外科医としての覚悟


 天明(てんめい)五年(ごねん)、夏(なつ)。


 父(ちち)・華岡直道(はなおかなおみち)を失(うしな)ってから、幾日(いくにち)かが過(す)ぎた。


 華岡家(はなおかけ)には、以前(いぜん)とは違(ちが)う静(しず)けさがあった。


 診療所(しんりょうじょ)から聞(き)こえていた父(ちち)の声(こえ)は、もうない。


 患者(かんじゃ)の症状(しょうじょう)を尋(たず)ねる声(こえ)も。


 薬(くすり)を調合(ちょうごう)する音(おと)も。


 長年(ながねん)使(つか)われてきた道具(どうぐ)を扱(あつか)う音(おと)も。


 すべてが青洲(せいしゅう)一人(ひとり)のものになっていた。


 朝(あさ)。


 青洲(せいしゅう)は父(ちち)が使(つか)っていた診療所(しんりょうじょ)の戸(と)を開(あ)けた。


 差(さ)し込(こ)んだ朝日(あさひ)が、部屋(へや)の中(なか)を照(て)らす。


 青洲(せいしゅう)はしばらく、その光(ひかり)を見(み)つめていた。


「今日(きょう)から、ここは俺(おれ)の診療所(しんりょうじょ)だ」


 そう呟(つぶや)く。


 だが。


 その言葉(ことば)を口(くち)にしても、父(ちち)が残(のこ)した重(おも)みは消(き)えなかった。


 むしろ。


 以前(いぜん)よりはっきりと感(かん)じる。


 患者(かんじゃ)の命(いのち)を預(あず)かる。


 医師(いし)として生(い)きる。


 それがどれほど重(おも)いことなのか。


 青洲(せいしゅう)は、2025年の世界(せかい)で何千(なんぜん)、何万(なんまん)という患者(かんじゃ)を診(み)てきた。


 手術室(しゅじゅつしつ)では、常(つね)に冷静(れいせい)でいなければならなかった。


 感情(かんじょう)に流(なが)されれば判断(はんだん)を誤(あやま)る。


 一秒(いちびょう)の遅(おく)れが命(いのち)を左右(さゆう)する。


 だからこそ。


 自分(じぶん)を律(りっ)してきた。


 しかし。


 この時代(じだい)では、違(ちが)う。


 手術室(しゅじゅつしつ)もない。


 高度(こうど)な医療機器(いりょうきき)もない。


 薬(くすり)も限(かぎ)られている。


 それでも。


 患者(かんじゃ)は同(おな)じように苦(くる)しみ。


 同(おな)じように生(い)きようとしている。


「医学(いがく)が違(ちが)っても、人(ひと)の命(いのち)は変(か)わらない」


 青洲(せいしゅう)はそう考(かんが)えた。


 その日(ひ)の朝(あさ)。


 最初(さいしょ)の患者(かんじゃ)がやって来(き)た。


「青洲先生(せいしゅうせんせい)」


「どうしました?」


「足(あし)を痛(いた)めまして……」


 農作業(のうさぎょう)中(ちゅう)に転倒(てんとう)したらしい。


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)を座(すわ)らせ、足(あし)を診察(しんさつ)した。


 腫(は)れ。


 皮膚(ひふ)の色(いろ)。


 痛(いた)みの場所(ばしょ)。


 関節(かんせつ)の動(うご)き。


 血流(けつりゅう)。


 神経(しんけい)の状態(じょうたい)。


 一(ひと)つずつ確認(かくにん)する。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【対象(たいしょう):成人男性(せいじんだんせい)】


【右下肢(みぎかし)に外傷(がいしょう)】


【骨損傷(こつそんしょう)の可能性(かのうせい):低(ひく)】


【軟部組織損傷《なんぶそしきそんしょう》:中(ちゅう)】


【神経障害(しんけいしょうがい):確認(かくにん)されず】


【血流(けつりゅう):維持(いじ)】


 青洲(せいしゅう)は診断(しんだん)を進(すす)めた。


「骨(ほね)には大(おお)きな問題(もんだい)はなさそうです」


「本当(ほんとう)ですか?」


「はい。ただし、しばらく無理(むり)をしてはいけません」


「仕事(しごと)があるもので……」


「仕事(しごと)より足(あし)を失(うしな)う方(ほう)が困(こま)るでしょう?」


 患者(かんじゃ)は苦笑(くしょう)した。


「そりゃそうです」


「数日(すうじつ)は休(やす)んでください」


「分(わ)かりました」


 患者(かんじゃ)が帰(かえ)る。


 青洲(せいしゅう)は記録(きろく)を残(のこ)した。


 診察日(しんさつび)。


 症状(しょうじょう)。


 処置(しょち)。


 経過観察(けいかかんさつ)。


 現代医学(げんだいいがく)で当(あ)たり前(まえ)だった記録(きろく)の考(かんが)え方(かた)を、この時代(じだい)でも徹底(てってい)する。


 それは青洲(せいしゅう)にとって重要(じゅうよう)なことだった。


 医術(いじゅつ)は一人(ひとり)の医師(いし)の頭(あたま)の中(なか)だけにあってはならない。


 知識(ちしき)は蓄積(ちくせき)されなければならない。


 成功(せいこう)も失敗(しっぱい)も。


 すべて記録(きろく)する。


「父上(ちちうえ)も、こうして患者(かんじゃ)を診(み)ていたのだろうな」


 青洲(せいしゅう)は父(ちち)の診療記録(しんりょうきろく)を手(て)に取(と)った。


 古(ふる)い紙(かみ)。


 そこには父(ちち)が積(つ)み重(かさ)ねてきた年月(ねんげつ)が残(のこ)されていた。


 青洲(せいしゅう)は一枚(いちまい)一枚(いちまい)を読(よ)み返(かえ)した。


 患者(かんじゃ)の名前(なまえ)。


 症状(しょうじょう)。


 処方(しょほう)。


 経過(けいか)。


 その記録(きろく)には、父(ちち)の医師(いし)としての人生(じんせい)が刻(きざ)まれていた。


「俺(おれ)はこれを受(う)け継(つ)いだ」


 青洲(せいしゅう)は静(しず)かに呟(つぶや)いた。


 そして。


 同時(どうじ)に京都(きょうと)で過(す)ごした日々(ひび)も思(おも)い出(だ)していた。


 天明(てんめい)二年(にねん)。


 青洲(せいしゅう)は京都(きょうと)へ出(で)た。


 そこで医学(いがく)を学(まな)んだ。


 吉益南涯(よしますなんがい)から古方派(こほうは)の医学(いがく)を学(まな)び。


 大和見水(やまとけんすい)からカスパル流(りゅう)外科(げか)を学(まな)んだ。


 さらに。


 見水(けんすい)の師(し)である伊良子道牛(いらこどうぎゅう)が確立(かくりつ)した伊良子流(いらこりゅう)外科(げか)も学(まな)んだ。


 京都(きょうと)で学(まな)んだものは、決(けっ)して一(ひと)つではなかった。


 伝統的(でんとうてき)な医学(いがく)。


 外国(がいこく)から伝(つた)わった外科術(げかじゅつ)。


 そして。


 それらを実際(じっさい)の患者(かんじゃ)へ応用(おうよう)するための知識(ちしき)。


 青洲(せいしゅう)はそれらを頭(あたま)の中(なか)で組(く)み合(あ)わせていく。


「内科(ないか)も外科(げか)も、別々(べつべつ)に考(かんが)える必要(ひつよう)はない」


 患者(かんじゃ)を診(み)る。


 身体(しんたい)全体(ぜんたい)を見(み)る。


 必要(ひつよう)なら薬(くすり)を使(つか)う。


 必要(ひつよう)なら外科的(げかてき)処置(しょち)をする。


 そして。


 その結果(けっか)を確認(かくにん)する。


 それが青洲(せいしゅう)の医術(いじゅつ)だった。


 ある日(ひ)の午後(ごご)。


 一人(ひとり)の老人(ろうじん)が診療所(しんりょうじょ)を訪(おとず)れた。


「先生(せんせい)、胸(むね)にしこりがあるのです」


 青洲(せいしゅう)の手(て)が止(と)まった。


「いつからですか?」


「半年(はんとし)ほど前(まえ)から」


「痛(いた)みはありますか?」


「最初(さいしょ)はありませんでした」


 青洲(せいしゅう)は慎重(しんちょう)に診察(しんさつ)する。


 胸部(きょうぶ)に硬(かた)い腫瘤(しゅりゅう)がある。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【異常組織(いじょうそしき)を確認(かくにん)】


【腫瘍性病変《しゅようせいびょうへん》の可能性(かのうせい)】


【詳細(しょうさい)な判定(はんてい)には追加情報(ついかじょうほう)が必要(ひつよう)】


 青洲(せいしゅう)は表情(ひょうじょう)を変(か)えなかった。


 だが。


 頭(あたま)の中(なか)では、2025年の知識(ちしき)が動(うご)き始(はじ)めていた。


「乳房(ちぶさ)の腫瘍(しゅよう)……」


 現代(げんだい)なら検査(けんさ)を行(おこな)う。


 画像診断(がぞうしんだん)。


 組織検査(そしきけんさ)。


 病期(びょうき)の確認(かくにん)。


 そして必要(ひつよう)なら手術(しゅじゅつ)。


 だが。


 今(いま)は1785年(ねん)。


 そのほとんどが存在(そんざい)しない。


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)を見(み)つめた。


「今(いま)すぐ結論(けつろん)を出(だ)すことはできません」


「治(なお)らないのでしょうか?」


「そうは言(い)っていません」


 青洲(せいしゅう)は落(お)ち着(つ)いた声(こえ)で答(こた)えた。


「状態(じょうたい)を見(み)ながら、できることを考(かんが)えます」


 患者(かんじゃ)が帰(かえ)ったあと。


 青洲(せいしゅう)は長(なが)く考(かんが)え込(こ)んだ。


 乳癌(にゅうがん)。


 その言葉(ことば)が頭(あたま)から離(はな)れない。


 京都(きょうと)にいた頃(ころ)。


 青洲(せいしゅう)は医学書(いがくしょ)を探(さが)し続(つづ)けた。


 その中(なか)で特(とく)に強(つよ)く印象(いんしょう)に残(のこ)った書物(しょもつ)があった。


 永富独嘯庵《ながとみどくしょうあん》の「漫遊雑記(まんゆうざっき)」。


 そこには、欧州(おうしゅう)において乳癌(にゅうがん)を手術(しゅじゅつ)によって治療(ちりょう)するという記述(きじゅつ)があった。


 日本(にほん)では、まだそれが十分(じゅうぶん)に行(おこな)われていない。


 そして。


 その文章(ぶんしょう)には、後続(こうぞく)の医師(いし)への期待(きたい)が込(こ)められていた。


 青洲(せいしゅう)は、その記憶(きおく)を鮮明(せんめい)に思(おも)い出(だ)した。


「後続(こうぞく)の医師(いし)に期待(きたい)する……か」


 その言葉(ことば)は、今(いま)の青洲(せいしゅう)の胸(むね)に重(おも)く響(ひび)いた。


 手術(しゅじゅつ)そのものは可能(かのう)かもしれない。


 問題(もんだい)は。


 患者(かんじゃ)が手術(しゅじゅつ)に耐(た)えられるかどうかだ。


 大(おお)きく切除(せつじょ)する手術(しゅじゅつ)。


 それを麻酔(ますい)なしで行(おこな)う。


 2025年の外科医(げかい)だった青洲(せいしゅう)には、その恐(おそ)ろしさが想像(そうぞう)できた。


「痛(いた)みをどうするか」


 それが最大(さいだい)の壁(かべ)だった。


 青洲(せいしゅう)は研究室(けんきゅうしつ)へ戻(もど)った。


 机(つくえ)の上(うえ)には、これまで集(あつ)めた薬草(やくそう)が並(なら)んでいる。


 曼陀羅華(まんだらげ)。


 草烏頭(とりかぶと)。


 白芷(びゃくし)。


 当帰(とうき)。


 川芎(せんきゅう)。


 その他(た)の薬草(やくそう)。


 青洲(せいしゅう)は一(ひと)つずつ確認(かくにん)する。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【曼陀羅華(まんだらげ)】


【鎮静作用(ちんせいさよう):非常(ひじょう)に高(たか)い】


【毒性(どくせい):非常(ひじょう)に高(たか)い】


 次(つぎ)に草烏頭(とりかぶと)。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【鎮痛作用(ちんつうさよう):強(きょう)】


【毒性(どくせい):極(きわ)めて高(たか)い】


 青洲(せいしゅう)は深(ふか)く息(いき)を吐(は)いた。


「この毒性(どくせい)を制御(せいぎょ)できれば……」


 麻酔(ますい)。


 それは単(たん)に患者(かんじゃ)を眠(ねむ)らせる薬(くすり)ではない。


 痛(いた)みを抑(おさ)える。


 意識(いしき)を抑(おさ)える。


 身体(しんたい)の反応(はんのう)を抑(おさ)える。


 そして。


 安全(あんぜん)に目(め)を覚(さ)まさせる。


 青洲(せいしゅう)は2025年(ねん)の麻酔管理(ますいかんり)を思(おも)い出(だ)した。


 薬剤(やくざい)の投与(とうよ)。


 呼吸(こきゅう)の管理(かんり)。


 循環(じゅんかん)の管理(かんり)。


 覚醒状態(かくせいじょうたい)の確認(かくにん)。


 すべてが必要(ひつよう)だった。


「薬(くすり)だけ作(つく)っても意味(いみ)がない」


 青洲(せいしゅう)は研究記録(けんきゅうきろく)に書(か)き込(こ)んだ。


 麻酔薬(ますいやく)。


 麻酔方法(ますいほうほう)。


 患者(かんじゃ)の観察(かんさつ)。


 術中管理(じゅつちゅうかんり)。


 術後管理(じゅつごかんり)。


 すべてを一(ひと)つの医療体系(いりょうたいけい)として考(かんが)える。


 それが必要(ひつよう)だった。


【SYSTEM (システム)】


【研究方針(けんきゅうほうしん)を更新(こうしん)】


【研究(けんきゅう)テーマ】


【外科手術(げかしゅじゅつ)における総合麻酔体系《そうごうますいたいけい》】


【達成度(たっせいど):42%(パーセント)】


 青洲(せいしゅう)は画面(がめん)を見(み)つめた。


「総合麻酔体系《そうごうますいたいけい》……」


 未来(みらい)の医学(いがく)を知(し)っている自分(じぶん)だからこそ。


 この時代(じだい)にはないものを作(つく)れる。


 だが。


 そのためには、さらに多(おお)くの実験(じっけん)が必要(ひつよう)だった。


 薬草(やくそう)の種類(しゅるい)。


 配合(はいごう)。


 濃度(のうど)。


 投与方法(とうよほうほう)。


 効果時間(こうかじかん)。


 副作用(ふくさよう)。


 覚醒(かくせい)。


 そして安全性(あんぜんせい)。


 すべてを確認(かくにん)しなければならない。


「焦(あせ)るな」


 青洲(せいしゅう)は自分(じぶん)に言(い)い聞(き)かせた。


「一(ひと)つ間違(まちが)えれば、人(ひと)が死(し)ぬ」


 その言葉(ことば)を胸(むね)に刻(きざ)む。


 夜(よる)。


 青洲(せいしゅう)は診療所(しんりょうじょ)を閉(し)めた。


 外(そと)へ出(で)ると、静(しず)かな風(かぜ)が吹(ふ)いていた。


 父(ちち)が生(い)きていた頃(ころ)。


 この時間(じかん)には、まだ診療所(しんりょうじょ)に灯(あか)りがついていた。


 青洲(せいしゅう)は空(そら)を見上(みあ)げる。


「父上(ちちうえ)」


 返事(へんじ)はない。


「俺(おれ)は、父上(ちちうえ)の医術(いじゅつ)を守(まも)ります」


 そして。


「それだけじゃない」


 青洲(せいしゅう)は続(つづ)けた。


「もっと先(さき)へ進(すす)めます」


 伝統医学(でんとういがく)と外科(げか)。


 日本(にほん)の医術(いじゅつ)と外国(がいこく)の知識(ちしき)。


 そして。


 2025年から持(も)ち込(こ)んだ未来(みらい)の医学(いがく)。


 それらを一(ひと)つにする。


「内外合一(ないがいごういつ)、活物窮理(かつぶつきゅうり)」


 青洲(せいしゅう)は静(しず)かに呟(つぶや)いた。


 父(ちち)から受(う)け継(つ)いだ医師(いし)としての心(こころ)。


 京都(きょうと)で学(まな)んだ医術(いじゅつ)。


 未来(みらい)から持(も)ち込(こ)んだ知識(ちしき)。


 そして。


 神(かみ)から与(あた)えられた異世界(いせかい)の力(ちから)。


 そのすべてを使(つか)って。


 目(め)の前(まえ)の患者(かんじゃ)を救(すく)う。


 それが。


 華岡青洲(はなおかせいしゅう)として生(い)きる自分(じぶん)の使命(しめい)だった。


 その頃(ころ)。


 紀伊国(きいのくに)のどこかでは。


 まだ青洲(せいしゅう)の名(な)を知(し)らない患者(かんじゃ)たちが暮(く)らしていた。


 やがて。


 その中(なか)から一人(ひとり)。


 青洲(せいしゅう)の医術(いじゅつ)によって人生(じんせい)を変(か)えられる者(もの)が現(あらわ)れる。


 そして。


 青洲(せいしゅう)自身(じしん)もまた。


 これから先(さき)。


 医学史(いがくし)を変(か)えるほどの決断(けつだん)を迫(せま)られることになる。


 その始(はじ)まりは。


 小(ちい)さな診療所(しんりょうじょ)で。


 一人(ひとり)の医師(いし)が。


 痛(いた)みに苦(くる)しむ患者(かんじゃ)を救(すく)いたいと願(ねが)ったことだった。


 夜(よる)は更(ふ)けていく。


 青洲(せいしゅう)は研究室(けんきゅうしつ)へ戻(もど)った。


 机(つくえ)の上(うえ)に一枚(いちまい)の紙(かみ)を置(お)く。


 そして。


 新(あら)たな研究目標(けんきゅうもくひょう)を書(か)いた。


「麻酔薬(ますいやく)を完成(かんせい)させる」


 その筆跡(ひっせき)には。


 もう迷(まよ)いはなかった。



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