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世界No.1の外科医、異世界転生!?  作者: 阿門 甲斐吽


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【第3話】未来の医学を、この時代へ


 天明五年(てんめいごねん)、春(はる)。


 華岡家(はなおかけ)の朝(あさ)は早(はや)かった。


 まだ空(そら)が白(しら)み始(はじ)めたばかりだというのに、庭(にわ)では水(みず)を汲(く)む音(おと)が響(ひび)き、台所(だいどころ)からは朝餉(あさげ)の支度(したく)をする気配(けはい)が聞(き)こえている。


 華岡青洲(はなおかせいしゅう)は、診療所(しんりょうじょ)として使(つか)われている部屋(へや)に座(すわ)っていた。


 目(め)の前(まえ)には、何冊(なんさつ)もの医学書(いがくしょ)が積(つ)まれている。


 古方派(こほうは)の書(しょ)。


 外科(げか)の書(しょ)。


 薬草(やくそう)について記(しる)された書(しょ)。


 京都(きょうと)で手(て)に入(い)れた医学関係(いがくかんけい)の資料(しりょう)。


 そして、青洲(せいしゅう)自身(じしん)がこれまで学(まな)んできた知識(ちしき)。


 だが。


 そのどれを読(よ)んでも、青洲(せいしゅう)の頭(あたま)の中(なか)には別(べつ)の世界(せかい)の知識(ちしき)が浮(う)かんでいた。


 2025年。


 医学(いがく)が飛躍的(ひやくてき)に進歩(しんぽ)した時代(じだい)。


 血液検査(けつえきけんさ)。


 CT (シーティ)。


 MRI (エムアールアイ)。


 超音波検査(ちょうおんぱけんさ)。


 抗菌薬(こうきんやく)。


 輸血(ゆけつ)。


 人工呼吸管理《じんこうこきゅうかんり》。


 麻酔(ますい)。


 そして、数(かぞ)え切(き)れないほどの外科手術(げかしゅじゅつ)。


「便利(べんり)な時代(じだい)だったな……」


 青洲(せいしゅう)は小(ちい)さく呟(つぶや)いた。


 しかし、その言葉(ことば)に懐(なつ)かしさはあっても、戻(もど)りたいという気持(きも)ちはなかった。


 自分(じぶん)はもう、この時代(じだい)の人間(にんげん)なのだ。


 いや。


 正確(せいかく)には。


 この時代(じだい)を生(い)きる華岡青洲(はなおかせいしゅう)の身体(からだ)に、自分(じぶん)の魂(たましい)が宿(やど)っている。


「ならば、この時代(じだい)でできることを探(さが)すしかない」


 青洲(せいしゅう)は医学書(いがくしょ)を閉(と)じた。


 現代医学(げんだいいがく)をそのまま再現(さいげん)することなど不可能(ふかのう)だ。


 だが、考(かんが)え方(かた)なら持(も)ち込(こ)める。


 患者(かんじゃ)を観察(かんさつ)する。


 症状(しょうじょう)を記録(きろく)する。


 治療(ちりょう)を行(おこな)う。


 結果(けっか)を確認(かくにん)する。


 そして、失敗(しっぱい)も成功(せいこう)も記録(きろく)する。


 それを積(つ)み重(かさ)ねる。


 医学(いがく)の本質(ほんしつ)は、時代(じだい)が変(か)わっても変(か)わらない。


「内外合一(ないがいごういつ)、活物窮理(かつぶつきゅうり)……か」


 青洲(せいしゅう)は父(ちち)・直道(なおみち)から教(おし)えられた言葉(ことば)を思(おも)い返(かえ)した。


 机(つくえ)の上(うえ)の知識(ちしき)だけで病気(びょうき)を判断(はんだん)しない。


 実際(じっさい)の患者(かんじゃ)を診(み)る。


 身体(からだ)を観察(かんさつ)する。


 そして、その結果(けっか)から治療(ちりょう)を考(かんが)える。


 それは2025年の外科医(げかい)だった青洲(せいしゅう)にとっても、非常(ひじょう)に重要(じゅうよう)な考(かんが)え方(かた)だった。


 そのとき。


「先生(せんせい)」


 診療所(しんりょうじょ)の外(そと)から声(こえ)がした。


「患者(かんじゃ)が来(き)ています」


「分(わ)かった。すぐ診(み)る」


 青洲(せいしゅう)は立(た)ち上(あ)がった。


 診療所(しんりょうじょ)へ入(はい)ってきたのは、三十代(さんじゅうだい)ほどの男(おとこ)だった。


 顔色(かおいろ)が悪(わる)い。


 片手(かたて)で腹(はら)を押(お)さえている。


「どうしました?」


「昨夜(さくや)から腹(はら)が痛(いた)みまして……」


「どこが痛(いた)む?」


「ここです」


 男(おとこ)が腹部(ふくぶ)を指(ゆび)した。


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)を横(よこ)にさせた。


「痛(いた)みは突然(とつぜん)でしたか?」


「はい」


「食事(しょくじ)のあとですか?」


「夕餉(ゆうげ)を食(た)べてしばらくしてからです」


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)の表情(ひょうじょう)を観察(かんさつ)した。


 呼吸(こきゅう)。


 脈(みゃく)。


 発汗(はっかん)。


 腹部(ふくぶ)の緊張(きんちょう)。


 痛(いた)みの場所(ばしょ)。


 そして。


【生命解析(せいめいかいせき)】


【対象(たいしょう):成人男性(せいじんだんせい)】


【生命状態(せいめいじょうたい):注意(ちゅうい)】


【体温(たいおん):上昇傾向(じょうしょうけいこう)】


【心拍(しんぱく):やや上昇(じょうしょう)】


【腹部(ふくぶ):炎症反応(えんしょうはんのう)の可能性(かのうせい)】


 青洲(せいしゅう)の目(め)にだけ、情報(じょうほう)が浮(う)かんだ。


「……便利(べんり)すぎるな」


 思(おも)わず呟(つぶや)きそうになったが、すぐに口(くち)を閉(と)じた。


 この能力(のうりょく)を他人(たにん)に知(し)られるわけにはいかない。


 青洲(せいしゅう)は患者(かんじゃ)の腹部(ふくぶ)を丁寧(ていねい)に診察(しんさつ)した。


「ここを押(お)します」


「……痛(いた)い!」


「では、ここは?」


「そこも……」


 青洲(せいしゅう)は慎重(しんちょう)に確認(かくにん)する。


 現代医学(げんだいいがく)で学(まな)んだ腹部診察(ふくぶしんさつ)の知識(ちしき)が、頭(あたま)の中(なか)で自然(しぜん)に組(く)み合(あ)わさっていく。


「今(いま)すぐ命(いのち)に関(かか)わる状態(じょうたい)ではなさそうですが、無理(むり)に動(うご)かないことです」


「はい」


「食事(しょくじ)も控(ひか)えてください」


 青洲(せいしゅう)は処方(しょほう)を考(かんが)えた。


 現代(げんだい)の薬(くすり)はない。


 抗菌薬(こうきんやく)もない。


 点滴(てんてき)もない。


 だからこそ、できることを慎重(しんちょう)に選(えら)ぶ必要(ひつよう)がある。


 薬草(やくそう)の作用(さよう)。


 患者(かんじゃ)の体力(たいりょく)。


 症状(しょうじょう)の経過(けいか)。


 すべてを組(く)み合(あ)わせる。


「これを飲(の)んでください」


「ありがとうございます」


 患者(かんじゃ)が頭(あたま)を下(さ)げる。


 青洲(せいしゅう)は、その姿(すがた)を見(み)ながら考(かんが)えた。


 今(いま)の自分(じぶん)は、2025年の病院(びょういん)にいた頃(ころ)とは何(なに)もかも違(ちが)う。


 診断機器(しんだんきき)もない。


 薬(くすり)もない。


 手術設備(しゅじゅつせつび)もない。


 それでも。


 目(め)の前(まえ)の患者(かんじゃ)を救(すく)う責任(せきにん)だけは変(か)わらない。


 患者(かんじゃ)が帰(かえ)ったあと。


 青洲(せいしゅう)はすぐに紙(かみ)を広(ひろ)げた。


「記録(きろく)する」


 症状(しょうじょう)。


 発症時間(はっしょうじかん)。


 食事(しょくじ)。


 痛(いた)みの場所(ばしょ)。


 脈(みゃく)。


 体温(たいおん)。


 処方(しょほう)。


 そして経過(けいか)。


 すべてを書(か)き残(のこ)していく。


【完全記録(かんぜんきろく)】


【記録対象(きろくたいしょう):患者第一号(かんじゃだいいちごう)】


【診察情報(しんさつじょうほう)を保存(ほぞん)しました】


 青洲(せいしゅう)は目(め)を細(ほそ)めた。


「完全記録(かんぜんきろく)……」


 このスキルは、単(たん)に物事(ものごと)を記憶(きおく)するだけではなかった。


 患者(かんじゃ)の診察記録(しんさつきろく)を、まるで現代(げんだい)の電子(でんし)カルテのように整理(せいり)できる。


 さらに。


【記録比較機能(きろくひかくきのう)】


【過去症例(かこしょうれい)との比較(ひかく)が可能(かのう)です】


 青洲(せいしゅう)の目(め)の前(まえ)に、別(べつ)の画面(がめん)が現(あらわ)れた。


「これは……」


 症状(しょうじょう)の似(に)た患者(かんじゃ)。


 治療(ちりょう)。


 経過(けいか)。


 結果(けっか)。


 それらを一覧(いちらん)として確認(かくにん)できる。


「医学研究(いがくけんきゅう)に使(つか)える」


 青洲(せいしゅう)の胸(むね)が高鳴(たかな)った。


 2025年の医学(いがく)は、一人(ひとり)の天才(てんさい)だけで発展(はってん)したわけではない。


 無数(むすう)の医師(いし)が患者(かんじゃ)を診(み)て。


 記録(きろく)を残(のこ)し。


 研究(けんきゅう)を積(つ)み重(かさ)ね。


 失敗(しっぱい)を分析(ぶんせき)してきた。


 ならば。


 自分(じぶん)が同(おな)じことをすればいい。


「この時代(じだい)の患者(かんじゃ)を、未来(みらい)の医学(いがく)へ繋(つな)げる」


 青洲(せいしゅう)は決意(けつい)した。


 それから数週間(すうしゅうかん)。


 青洲(せいしゅう)は父(ちち)・直道(なおみち)の診療(しんりょう)を手伝(てつだ)いながら、患者(かんじゃ)の記録(きろく)を続(つづ)けた。


 風邪(かぜ)。


 腹痛(ふくつう)。


 外傷(がいしょう)。


 皮膚(ひふ)の病(やまい)。


 腫(は)れ。


 古傷(ふるきず)。


 様々(さまざま)な症状(しょうじょう)を持(も)つ患者(かんじゃ)が訪(おとず)れた。


 青洲(せいしゅう)は一人一人(ひとりひとり)を観察(かんさつ)した。


 そして、現代医学(げんだいいがく)の知識(ちしき)と、この時代(じだい)の医術(いじゅつ)を組(く)み合(あ)わせた。


 しかし。


 ある患者(かんじゃ)を診察(しんさつ)したとき、青洲(せいしゅう)は言葉(ことば)を失(うしな)った。


 一人(ひとり)の女性(じょせい)だった。


 年齢(ねんれい)は四十代(よんじゅうだい)ほど。


 胸(むね)に腫瘤(しゅりゅう)がある。


「いつからですか?」


「かなり前(まえ)からです」


「痛(いた)みは?」


「最初(さいしょ)はありませんでした」


 青洲(せいしゅう)は患部(かんぶ)を慎重(しんちょう)に診察(しんさつ)した。


 そして、生命解析(せいめいかいせき)を使(つか)う。


【異常組織(いじょうそしき)を確認(かくにん)】


【腫瘤(しゅりゅう):悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の可能性(かのうせい)】


【進行度(しんこうど):要精査(ようせいさ)】


 青洲(せいしゅう)の表情(ひょうじょう)が変(か)わった。


「……乳癌(にゅうがん)」


 その言葉(ことば)が口(くち)から漏(も)れた。


 患者(かんじゃ)は不安(ふあん)そうに青洲(せいしゅう)を見(み)た。


「先生(せんせい)……治(なお)りますか?」


 青洲(せいしゅう)は答(こた)えられなかった。


 2025年なら。


 検査(けんさ)をする。


 画像診断(がぞうしんだん)をする。


 必要(ひつよう)なら生検(せいけん)をする。


 病期(びょうき)を判断(はんだん)する。


 手術(しゅじゅつ)をする。


 化学療法(かがくりょうほう)や放射線治療(ほうしゃせんちりょう)を検討(けんとう)する。


 だが。


 ここには、それがない。


 そして何(なに)より。


 手術(しゅじゅつ)には大(おお)きな問題(もんだい)がある。


「痛(いた)み……」


 青洲(せいしゅう)は拳(こぶし)を握(にぎ)った。


 麻酔(ますい)。


 それがなければ、大(おお)きな手術(しゅじゅつ)は難(むずか)しい。


 患者(かんじゃ)を救(すく)うために切(き)る。


 だが、その患者(かんじゃ)が激痛(げきつう)に耐(た)えられなければ、手術(しゅじゅつ)そのものが命(いのち)を奪(うば)う危険(きけん)につながる。


 だからこそ。


 青洲(せいしゅう)は知(し)っている。


 自分(じぶん)がこの後(あと)、何(なに)を目指(めざ)すことになるのか。


 全身麻酔(ぜんしんますい)。


 患者(かんじゃ)が眠(ねむ)っている間(あいだ)に手術(しゅじゅつ)を行(おこな)う。


 それを実現(じつげん)できれば。


 外科(げか)の可能性(かのうせい)は大(おお)きく変(か)わる。


 青洲(せいしゅう)は女性(じょせい)に向(む)き直(なお)った。


「今(いま)すぐ手術(しゅじゅつ)をするとは言(い)いません」


「……はい」


「ですが、私(わたし)は諦(あきら)めません」


 女性(じょせい)が顔(かお)を上(あ)げる。


「本当(ほんとう)に……?」


「はい」


 青洲(せいしゅう)は力強(ちからづよ)く頷(うなず)いた。


「治療(ちりょう)できる方法(ほうほう)を探(さが)します」


 患者(かんじゃ)が帰(かえ)ったあと。


 青洲(せいしゅう)は一人(ひとり)、診療所(しんりょうじょ)に残(のこ)った。


 夜(よる)。


 灯火(ともしび)だけが部屋(へや)を照(て)らしている。


 青洲(せいしゅう)は医学書(いがくしょ)を開(ひら)いた。


 そして、あの言葉(ことば)を思(おも)い出(だ)した。


 欧州(おうしゅう)では乳癌(にゅうがん)を手術(しゅじゅつ)で治療(ちりょう)している。


 しかし日本(にほん)では、まだそれが一般的(いっぱんてき)ではない。


 理由(りゆう)は明白(めいはく)だった。


 手術(しゅじゅつ)の痛(いた)み。


 そして出血(しゅっけつ)や感染(かんせん)。


 だが。


 もし痛(いた)みを抑(おさ)えられるなら。


 もし手術(しゅじゅつ)そのものを安全(あんぜん)にできるなら。


 乳癌(にゅうがん)だけではない。


 腫瘍(しゅよう)。


 膀胱結石(ぼうこうけっせき)。


 脱疽(だっそ)。


 痔(じ)。


 様々(さまざま)な病気(びょうき)に対(たい)して、外科治療(げかちりょう)の可能性(かのうせい)が広(ひろ)がる。


 青洲(せいしゅう)は立(た)ち上(あ)がった。


「麻酔薬(ますいやく)を作(つく)る」


 その瞬間(しゅんかん)。


【SYSTEM (システム)】


【新規(しんき)クエスト発生(はっせい)】


【クエスト名(めい):失(うしな)われた眠(ねむ)り】


【目的(もくてき):外科手術(げかしゅじゅつ)に使用可能(しようかのう)な麻酔法(ますいほう)を確立(かくりつ)せよ】


【第一段階(だいいちだんかい):薬草(やくそう)の探索(たんさく)】


【第二段階(だいにだんかい):薬理作用(やくりさよう)の確認(かくにん)】


【第三段階(だいさんだんかい):安全性(あんぜんせい)の検証(けんしょう)】


【第四段階(だいよんだんかい):麻酔効果(ますいこうか)の確立(かくりつ)】


【報酬(ほうしゅう):スキル解放(かいほう)】


 青洲(せいしゅう)は画面(がめん)を見(み)つめた。


「……やはり始(はじ)まったか」


 神(かみ)が与(あた)えたスキル。


 この力(ちから)を使(つか)えば、普通(ふつう)の医師(いし)には見(み)えない情報(じょうほう)を得(え)られる。


 しかし。


 それだけで薬(くすり)が完成(かんせい)するわけではない。


 薬(くすり)は毒(どく)にもなる。


 使(つか)い方(かた)を間違(まちが)えれば、人(ひと)を救(すく)うどころか殺(ころ)してしまう。


「ならば、慎重(しんちょう)に進(すす)める」


 青洲(せいしゅう)は紙(かみ)に研究計画(けんきゅうけいかく)を書(か)き始(はじ)めた。


 薬草(やくそう)。


 採取場所(さいしゅばしょ)。


 使用部位(しようぶい)。


 乾燥状態(かんそうじょうたい)。


 煎(せん)じ方(かた)。


 投与量(とうよりょう)。


 作用時間(さようじかん)。


 副作用(ふくさよう)。


 回復(かいふく)までの時間(じかん)。


 すべてを記録(きろく)する。


 2025年の外科医(げかい)として培(つちか)った科学的思考(かがくてきしこう)。


 1785年の医師(いし)として得(え)た知識(ちしき)。


 そして異世界(いせかい)の神(かみ)から与(あた)えられたスキル。


 三つの力(ちから)が、一(ひと)つに重(かさ)なろうとしていた。


 窓(まど)の外(そと)では、夜(よる)の風(かぜ)が吹(ふ)いている。


 まだ誰(だれ)も知(し)らない。


 この小(ちい)さな診療所(しんりょうじょ)から。


 やがて日本中(にほんじゅう)の医師(いし)が知(し)ることになる医学(いがく)の革命(かくめい)が始(はじ)まろうとしていることを。


 そして、その革命(かくめい)の最初(さいしょ)の一歩(いっぽ)が。


 一人(ひとり)の患者(かんじゃ)を救(すく)いたいという、青洲(せいしゅう)の純粋(じゅんすい)な願(ねが)いから始(はじ)まったことを。


「必(かなら)ず作(つく)る」


 青洲(せいしゅう)は灯火(ともしび)を見(み)つめた。


「患者(かんじゃ)が痛(いた)みに苦(くる)しまずに済(す)む方法(ほうほう)を」


 その夜(よる)。


 華岡青洲(はなおかせいしゅう)の麻酔研究(ますいけんきゅう)が、静(しず)かに始(はじ)まった。





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