魔女たちについての伝承
世界の中心には、一本の木があります。どの森よりも古く、どの山よりも高く、根は大地の果てまで伸び、梢は星に届くかもしれないと言われる、大きな木が。その名を知る者はいません。
その木は、季節には関係なく、世界がそれを必要とするときに、実をつけます。
魔女たちはその実から生まれるのです。
太い幹や、力強い根元に生った実からは、原初の魔女たちが生まれます。
彼女たちは世界の理そのものであると伝えられています。
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世界のいたるところには、壊れ目があります。
世界の端、巨大な滝が虚無へと落ちる場所に、そこから先の景色が描かれていない断崖があります。
そこにはただ、一切の光を反射しない「黒」が、世界の終わりを塗りつぶしているだけです。
それは魔女「ベルグローテ」による断絶であると言われ、その先を覗こうとする者はいなくなりました。
北の果てには、完全なる無音に包まれた廃都、テュスタ・ルインがあります。
そこでは風の音さえも最初からなかったことにされ、建物の影は白く透け、存在の輪郭だけがそこに取り残されています。
このありさまを知った人々は「ある魔女」によるものだと恐れました。
彼女を呼び寄せることを恐れ、その名を口にすることさえ禁じたので、今ではその名はもうわからなくなっています。
また、確実な痕跡こそないものの、魔女の通り道で起こったのではないかと伝えられているお話もあります。
例えば、昼とも夜ともつかない地平の裂け目に迷い込んだという話。逃げ帰って来た人がいますが、揃って「目を合わせる前に逃げてきた」と言うばかり。
例えば、長い歴史の中で何度かあったと言われている、地平に揺らめく大規模な蜃気楼。見た人々は違うものの名を口にし、人が変わったように貪欲にその蜃気楼を求め続け、そして干からびていきました。
そうそう、確実に原初の魔女を知りたければ、ムルム・サール神殿に行くのがいいでしょう。
森の奥、蔦に覆われた石造りの神殿には、循環の魔女「インゲボルグ」が祀られています。
生い茂る若草の中、ところどころに発光する毒の花が狂い咲くのは、彼女があらわれた跡であり、過剰な生が死を追い越してしまった跡でもあるのです。
一部の人々はそこを腐敗と再生の象徴だと信じ、慈悲を求めて遠くから祈りを捧げています。
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これらはすべて、世界に刻まれた大きな魔女たちの跡にすぎません。
姿は見えずとも、その圧倒的な力はたしかにこの世界の至るところに刻まれています。
そして、木の高いところ、細い枝葉に生った実からは、また別の魔女たちが生まれます。
彼女たちは、もっとずっと、あなたの近くにいます。
あなたの細かな指先、こぼれた涙、その心のひだにまで、直接触れるためにやってくるのです。
さあ、次のページをめくってください。
すぐそばにいる魔女が、どれほど慈悲深く、あなたに寄り添い、救ってくれるのか。
そのお話を始めましょう。
本日、もう一話同時投稿しています。




