面白い奴~アンドリクス~
「アンドリュー、お前結構アオ姫気に入ってるだろ?」
「さすがレックスだな。いや~、思ってた以上にいいな」
「頼むから、穏便に済ましてくれよ?」
「なぁ、本当にジョイール王国の王子とは何もないんだよな?」
「あぁ、一時期はしてたみたいだが月の姫としての仕事だったんだろ。正式な婚約じゃなかったみたいだな」
「そうか…。なら問題ないだろ?」
俺が笑って言うと、レックスは盛大にため息をついていた。
俺はスフィーリア王国の第2王子、アンドリクス・スフィーリア。
今は、スクリプト王国に縁談を申し込みに来てる。
その相手であるアオ姫は、月の姫とも言われていてその実力は、月の女神にも劣らないぐらいの力と美貌を持つという。
スフィーリア王国は、その昔月の姫に助けてもらった恩があり、月の姫をとても崇拝している。
俺は、正直結婚とか女とかに興味はなかった。レックスや、他の奴らとバカ騒ぎしてるほうが俺には合ってると思う。まだ、19だしな。
それに、俺は第2王子だからそこまで今の生活に不満を持ってもいないからな。だが、この縁談の話がきてしまった…。
“アンドリュー”
“なんだ?”
“スクリプト王国へ、縁談を申し込んでこい”
“は?何、言ってんだ?ナタリーヌ姫はもう婚約しただろ?”
“ナタリーヌ姫ではない、アオ姫だ。歳もお前のひとつ下で釣り合うだろう”
“姫は一人じゃなかったのか?”
“だから、ちゃんと勉強もしろと言っただろ?アオ姫は、スクリプト国王と異世界から来た妃との子供で、月の姫だ。実力は、歴代の月の姫達より遥かに高いらしい”
あ~昔助けてもらった恩がある月の姫と、縁を結んでおきたいのか。と思った。
さして興味があったわけじゃないが、俺が月の姫に縁談を申し込みに行くことが、すぐに広まり町に出てもその噂ばかりだった。で、行くだけ行ってくるか、という気持ちで来たのだが…。
その月の姫もといアオ姫は、月の光を集めたような銀髪に、美しい藤色の瞳をした美人だった。
パーティーが始まり、俺や俺以外の縁談の申し込み者達の挨拶が始まった。
挨拶が終わり、国王達の前から下がるとき一瞬アオ姫を見ると、あっちも気づいて俺を見た。
その時に思ったのは、本当に綺麗な目だと思った。
俺は、目を見ればそいつの本質を見極めることができると自負してる。実際に俺の騎士団の奴らは、俺が目を見て選んだ奴らだ。まぁ、その前にやりあってるがな。でも、だいたいはそんな感じだ。だから、アオ姫のことも好感が持てた。
そのパーティーで気になったのは、ジョイール王国のルーカスとかいう奴と、結構仲がいいということだ。俺がダンスに誘う前もダンスをしたり、しゃべったりしていた。
レックスに調べてもらうと、少し前に非公式ではあるが婚約をしていたことが分かった。それと、少し前までジョイールに滞在していたことも。
ダンスの時に少ししゃべって、面白い奴だと再確認した。
それからちょくちょく話しかけたりしていた。そして、今日は俺が連れてきた騎士団とは名ばかりの傭兵集団が、体を動かしたくてしょうがねぇと言うから、アオに頼んで案内をしてもらったところだ。
「ですが、物を盗られるとは…。穏やかではないですね」
「確かにな…。だが、犯人は捕らえたって言ってたからな」
「まぁ、それもですが…。やはり、縁談はジョイール王国のルーカス王子が一歩リード、という感じですかね」
「ん?なんでだ?」
「はぁ~…。さっきアオ姫を迎えに来たのは、そのルーカス王子の右腕と言われる、ルディ・カーランドですよ!アオ姫は、ルーカス王子に助けを求めたんでしょうが!」
「おぉ、そうか。ま、それはしょうがないだろう。一緒に過ごした時間が違うしな」
「また、呑気に」
「これからだよ」
そう、これからじっくり俺も距離を縮めるさ。その方が色々とおもしろそうだしな。
「さ、鍛錬やろうぜ。俺も久しぶりに体を動かすかな」
「俺もやります」
「おぅ、じゃあ一戦やろうぜ!」
これからどうなるか、楽しみだな。