縁談の申し込み者達3
まず私達の前に出てきた5人は、スクリプト王国から遠く離れた国から来た王子達だ。
私とお父さんで、組分けとパーティーで自己紹介をさせる順番を決めた。王族で遠く離れた国の人から順にして、王族のあとに貴族の者達にすることにした。パーティーでは、10組の紹介をする。
1、2組が終わり、3組目になった。
「スフィーリア王国から来ました、アンドリクス・スフィーリアと申します」
「……それだけでよろしいのですか?」
「はい」
進行役の人が戸惑うのも無理はない。だいたいの人が自分の名前の他に、何かしら話していたのに対してこの人は名前しか言わなかったから。
派手な黄金の髪に、深い海のような瞳。元いた世界のゲームに出てきそうな、正統派王子みたいな見た目なのに愛想が悪い。でも、面白そう。
私は耳を触った。
お父さんもそれに気づき、少し頷いて見せて次を促した。
その後、ずっと見てたからだろうか。その人が前から下がる時、一瞬目が合った。とても綺麗な瞳だと思った。
その次の組にルーカス王子がいて、ルーカス王子の紹介の後に耳を触った。その後、2人ほど気になる人がいた。
「いろんな国から来てたね」
「ほんと、ここに来るまで結構かかるよね」
「それぐらいアオが魅力的なんだよ!」
「いやいや、それはないよ」
私達がそんな話をしていると…。
「2人とも、ダンスを踊ってきたら?」
「お母様、私は」
「そうだったわね、じゃあナタリーはいいわ。アオ、行ってらっしゃいな」
「そうよ、せっかくだから縁談の申し込み者の方と踊ってきたらいいじゃない。いいわよね?ジョシュ?」
「ん~、ま、いいだろう。行っておいで」
「分かった、行ってきます」
私は席を立って、会場の中央の方へ歩いて行く。
すると…。
「アオ姫」
「ルーカス王子?」
私のところに歩いて来たのは、ルーカス王子達だった。
「久しぶりだね」
「そうだな、それにしても縁談多かったな」
「お父さんが捌ききらなかったみたいでね、何組かに分けて会っていこうっていう話になってね」
「忙しそうだな。ダンス踊るか?」
ルーカス王子が差し出した手に、自分の手を重ねて会場の中央へ一緒に歩いていった。
中央に着いて踊り始めた。
「スクリプト王国は、とても賑やかな国だな」
「そう?ジョイール王国も賑やかだったよ?」
「あれは、王都だからだ。スクリプト王国は、どの街も民がとてもイキイキとしていたし、笑顔が多かった印象が強かったぞ」
「そう見えたのならよかったな」
自分の国を誉められて、嬉しくない王族はいないよね。
私がそんなことを思ってにやにやしてると、ルーカス王子が少し頬を赤くして。
「……ドレス、似合ってる」
「ふふっ」
「なんだよ」
「何も、ありがとうございます。ルーカス王子」
言い方がかわいかったから、なんて言ったら絶対に怒るもんね。
なんて思ってると、曲が終わった。
私とルーカス王子が、最後の礼をしていると私達のところに誰かが近づいて来る足音が聞こえて、そちらを見ると…。
「アオ姫、次は俺と踊ってくれますか?」
アンドリクス・スフィーリアだった。
「え、えぇ、喜んで」
少し驚きながらも、なんとか反応することが出来た。
差し出されていた手をとると、ルーカス王子がすっと離れていったのが分かった。