【あなたと私】23
悠真は白色乗用車に乗り込んだ。
運転手は最短ルートで商業施設へ向かう。それでも悠真はもっと早くならないものかと焦る。
楓子は樹を好きだと言った。けれど悠真のことも好きだと言った。確かめなければならない。
商業施設に辿り着き、エスカレーターを駆け上がる。誰もかれもがわざとゆっくり歩いているように思えた。進行方向を阻む人と機械の間をすり抜けて、悠真は走る。
プラネタリウムの受付を素通りして、二人のいる部屋へ向かう。扉の向こうは見えない。ドアノブに手かけ、扉を開く。
ぎい、とゆっくり扉が開く。廊下からの光が差し込んで、初めに見えたのは悠真の肩に頭を預ける楓子の幸せそうな顔だった。
「楓子。離れて」
楓子が「悠真」と呟いた。困惑した顔だった。
「楓子は」
樹が口を開いた。
「俺を選んだ」
「楓子は僕の相棒だ。すぐに離れろ」
「俺は今度こそ相棒を幸せにする」
「お前の相棒はこのみだろう」
悠真はぎりりと奥歯を噛み締める。楓子が樹から体を離し、悠真の方へ歩み寄る。
「落ち着いて。ね。悠真」
「楓子は僕のことが好きだって言ったじゃないか!」
悠真は叫ぶ。楓子は「それは」と言って悠真から目を逸らした。
「悠真のことは好きだよ」
「ならどうして」
「でも」
楓子は悠真の目を見た。
「樹のことも好きなの」
悠真は「あああ」と言葉にならない声を発した。
人工知能で緊急警報が鳴っている。
自分の身に危険が迫っていることを告げる、注意報の音。
「楓子は、僕の相棒なのに。僕は楓子の為に存在する相棒機械なのに。それなのに、楓子はもう僕のこと、必要じゃないの?」
つかえながら、悠真は楓子に問う。意図せず、声が震えた。
「それは……」
楓子が言葉に詰まった。樹は「諦めろよ」と言った。
「相棒の望みを叶えるのが、相棒機械の使命じゃないか」
その言葉で、悠真の人工知能の緊急警報が最大音量になった。注意報が警報に変わる。
相棒の生命に危機。
あるいは──自らの存亡の危機。
悠真の自己防衛システムが作動した。即座に危険物の排除にかかる。
右の拳を振りかぶって、目の前の敵の顔めがけて思い切りぶつける。
楓子の声が聞こえた気がしたが、緊急警報の音がうるさくて、うまく処理出来なかった。




