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霊体マッサージで女神様を癒やしたら、異世界に飛ばされて異種族の娘たちにモテモテになって困る! 俺はただのおっさん整体師なのに!  作者: カクナノゾム
第五章 古の竜

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第38話 空へ還る竜(上)

 ――空が、広かった。


 火山の爆ぜる音も、地が鳴る音も、もう遠い。

 俺たちは今、紅い竜ラグナの背に乗り、

 風を切って空を滑っていた。


 ミナが身を乗り出して、耳をぴんと立てる。


「み、みて! ユージ! あれ、死霊の森だよ!!」


 下を見下ろすと、そこにはあの淀んだ森があった。

 けれど今の森は、瘴気の影すらない。

 青い光が木々の隙間に揺れ、

 本来の生命の色を取り戻している。


「すご……こんなに遠くまで……来てたんだ……」


 リーネが、息を呑むように呟く。


「前はあんなに怖かったのにゃ……」


 セレスは胸の前で手を組み、小さく微笑んだ。


「美しい森……これが本来の姿だったのですね……」


 風は冷たく、心地いい。

 ラグナの翼が大きくはためくたび、

 雲の切れ間に陽が差し込む。


「癒やし手よ」


 ラグナが低く言った。


「そなたの仲間達は良き者たちだ」


「ありがとう。お前が運んでくれてるのも助かるよ」


「礼は不要だ。

 あの迷宮を抜けた者は、皆、我が翼で空を見る資格がある」


 紅の竜の声は、どこまでも静かで優雅だった。

 背中の鱗は温かく、

 空の色よりも深い紅が輝いている。


 ミナがふと笑う。


「でも、こうやって空飛ぶなんて……ちょっと夢みたいだよね」


「夢じゃないよ、ミナ。ほら、あそこ」


 俺は指を差した。


「街が見える。……もうすぐだ」


 ラグナが旋回し、

 大地へと高度を下げ始めた。


 ◇


 ラグナの巨大な影が、街へとゆっくり降下していく。

 見張り台の上にいたゴリラ獣人のガルムが、目を見開いた。


「うほっ……! 竜……だと……!?」


 兵士たちがざわつき、槍を構える者すらいる。


「り、竜だ! 古竜だぞっ!!!」

「竜が……街に近づいてくる……!?」


 街の中、冒険者や兵士達がざわつき始める。

 槍を構える者、警戒する者――


 しかし次の瞬間。

 ラグナの背に乗った俺たちの姿が見えると、

 どよめきが一瞬で変わった。


「お……おい! あれ……ユージ殿じゃないのか!?」

「ミナもリーネも……何で竜の背中に!?」

「セレスさんもだ!!!」


 警戒が驚きへ、驚きが歓声へと変わっていく。


「ユージ殿が竜を連れて帰ってきた!?」

「すげぇ……なんて光景だ……!」

「竜に乗って帰還するなんて……!」


 ミナが照れたように尻尾を揺らす。


「う、うわ……こんな光景、初めてだよ……!」


 リーネも頬をほんのり染めていた。


「なんか……むずむずするにゃ……」


 セレスは胸に手を当て、

 涙を堪えるように微笑んだ。


「……よかった……無事に帰って来れて」


 ラグナが街の外壁のすぐ前に着地する。

 紅い翼が大地に触れる瞬間、

 兵士たちが一斉に駆け寄ってきた。


「ユージ殿! 本当にご無事で……!」

「戻られたこと、心より……!」


 ガルムが真っ先に駆け寄ってくる。

 その大きな身体が、安堵で震えていた。


「ユージ殿……! 本当にご無事で……!」


 ガルムの目には涙すら浮かんでいた。


「しばらく地震が続いたと思ったら――

 まさか、お前たちが竜に乗って帰還するとはな。

 うほほっ……よかった……本当に……!」


「色々ありまして。……まあ、生きて帰れましたよ」


 俺の言葉を聞いてミナが笑う。


「死霊竜も癒やしてきたんだよ! 山ごと全部スッキリ!」


 リーネも胸を張る。


「グレイフェザーの皆も無事に街に戻ったにゃ!

 さっき入り口で会ったにゃ! これで街も安全だにゃ!」


 セレスは深く頭を下げた。


「ご心配おかけしました……もう大丈夫です」


 兵士たちの緊張はすっかりほどけ、

 街の人々が外壁の内側から手を振りながら迎えてくれる。


「しかしこんなことがあるなんてなぁ!」

「古竜をこんな間近で見ることがあるなんて……!」


 そしてその中心で

 ずっと黙っていたラグナが、

 ふと俺へと視線を向けた。


「癒やし手よ……

 そなたたちが我が伴侶を癒やせた理由……

 ようやく分かった気がする」


 街の人々も、恐怖より驚愕より、

 彼を歓迎するあたたかさを見せていた。


 紅い竜ラグナは、

 ほんの一瞬、寂しげな笑みを浮かべた。


「……さて。ここでの役目は、終わりだ」



〈第38話(上) 続〉


【次回予告】

 別れの時が、迫っている。

 竜が人に明かす、真の名。

 それは信頼の証であり――

 魂の契約。


「癒やし手よ。そなたに、我が真名を伝える」


 紅き竜の、最後の贈り物。


 ──第38話「空へ還る竜(下)」

 おじさん、竜の祝福を受ける。

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