その41 ささやかな復讐
食事中の方は、ごめんなさいな内容です。
時間がかかりそうなので第1章で完結にしましたが、間違っていたようなので完結をはずしてます。続きは少し先になります。ご不快だった方、ごめんなさい。
「なんじゃ、この手紙は! 舐めているのか!」
朝から怒るバージルに、マーリンが驚いて声をかけた。彼が見せてくれた手紙で、「本当ね。なんかびっくりします」と脱力するマーリン。
だいたいの内容はこう。
彼女の母グレースが亡くなり、オレット男爵家で家事や勉強を仕込んできた。その期間は安全に守り、目をかけてやったのだから、養育費を寄越せというもの。
マーリンは呆れ、事実を知るバージルはさらに怒る。グレースは「人間だと、もう呆ける年齢だっけ?」と首を傾げ、たまたま近くにいたエルフや森の精霊達は滅してこようか?とマーリンに本気で聞いていた。
ちょっとした混沌である。
こうしてやろう、ああしてやろうと、楽しい(残虐)な意見もちらほらだ。
マーリンはもうそんなに気にしていない。長く尾をひいてきたトラウマは、自分がハーフエルフだと知った時に軽くなった。
「しょうがない。弱い人間の家族くらい許してやろう」ってな感じで。
グレースが死んで男爵家に連れて来られて、一人でこき使われて食事も食べられずお腹を空かすこともあった。父からは放置され、義母には嫌みと折檻、義姉には同じ娘なのに自分だけが愛されているとマウントを取られ、掃除や買い物などを命令された。義兄からは成長すると好色な目で見られた。
はっきり言って最悪としか言えない。
だけどソフトネールだけは、今考えるとテルマスから逃がしてくれた気がした。何度もそんなことが続いたからだ。
やっぱり同じ年頃の義理とは妹が、性的な被害に合うのは嫌だったのだろう。
全体的に思い出し、今さらながらヘビーだったと溜め息が出る。
それでも………。
今はこんなに味方がいるんだと、嬉しくなるマーリンなのだった。
◇◇◇
「ナッカス様。ご所望の家族を調べて来ました。調査書はここに置きますね。それでは私は、畑仕事に行ってきます」
「ありがとう、ハガノミヤ。もう少ししたら、私も行くから」
微笑むナッカスに、ハガノミヤは頭を下げた。
「ナッカス様は、無理なさらないでください。では」
ハガノミヤの表情も明るい。
とてもエルフ国で敵対してきた男とは思えない。
彼もいろんなことを振り切れたのだろう。
彼の調査と、グリードルの植物からの情報で、オレット一家の場所は特定できた。今度は報復を考えるだけだ。
◇◇◇
「なるほど。養育費は出せないが、仕事は斡旋してやろう」
バージルは悪い顔で笑った。
男爵領地での肥料は、主に草や野菜蔓と森の落葉を発酵させたものだった。時々馬や牛の糞を混ぜることはあって、発酵する場所に置き寝かしておくと適当に良い肥料になるが、動物の糞ほどの養分はなかった。
でもオレット一家がいる職場は動物がいる為、大量の糞便がある場所である。完全に発酵する前の大量の糞便、いわゆる堆肥は物凄く臭いのだ。けれど発酵前の堆肥を土の上に置くと、その下に養分が染み込み尚且つ暖まり、土壌の改善に繋がる。
それを運ぶのは、運搬用の足の太い馬である。その為、歩みはわりとのんびりなのだ。
運搬途中はまあ良いのだが、問題は積み込みと積み降ろしである。物凄い臭いがするからだ。何しろ積み込むには、大量に積んであるそれらをかき混ぜるようなものだから。置いてある分には外部がコーティングされているが、動かせば発酵していない部分が強烈な臭気を放つ。
こうして彼らの職場に連絡が行き、バージルはオレット一家を指名する。
「以前にお世話になった方達なので、持って来て頂いたらお礼もしたいのです」と言って。
オレット一家の雇い主は、あいつらでもそんなことあるのか?と、少し感動した。そして彼らには、そのことを内緒にし運搬を頼んだのだ。
「うわぁ、臭い。なんて臭いだ。ゴファ」
「いやあぁぁ、なんで私がこんなことを! もう嫌っ!ウゲッ」
「め、目に、滲みる。酷いよ! オエッ」
なんだかんだと堆肥を荷台に積み込むオレット家の3人。ソフトネールは、事務仕事だからここにはいない。
口をタオルで覆うが、慣れていない3人は吐き気を隠せなかった。何とか積み込み、堆肥の荷台後ろの人が乗る部分に腰掛ける。勿論そこも、すごく臭かった。
その馬の横を、ランナーズが少し離れて馬に乗り様子を見ている。馬は慣れているので、指示の通りに進んでいく。
途中オレット家が気づかないうちに、転移魔方陣を通りオレット男爵領へ移動していた。
ブルラベリ達にとっては、永遠にも似た長い時間だった。
指示された場所に堆肥を降ろし、何とか仕事は終了した。疲れきった一家に、何処からともなく現れたバージルが礼を言う。
「お疲れ様でした、皆さん。お手紙での希望は、養育費でしたっけ。申し訳ありませんが、今はまだ借金後の男爵領を元の状態に戻すことでいっぱいでしてね。その代わりに、お仕事を多く依頼することならば出来ると愚考致しました。とても良い堆肥ですね。今後もよろしくお運び下さい。あ、そうそう。皆さんに男爵家の方だとばらしませんからご安心下さい。………ずいぶん恨まれていらっしゃるようですしね。気を付けてお帰りくださいませ。これは自領のジュースで御座います。どうぞ喉を潤して下さい。では、これで」
「あ、あぁ、そんな………」
「これが、慰謝料なんて………」
「ジュース1本、だけ………」
「美味しいよね、このジュース」
ランナーズは臭いに慣れているから気にならず、ゴクゴクとジュースを飲み込んだ。他3人は口に出来ず、持ち帰るのだった。
「おおっ。ジュースを貰ったのか。男爵領のうまいよな。良かったな」
そう言って雇い主は笑っていた。
嫌みではなく本心からだった。
雇い主はずっとここで働いている為、そんなに臭いは気にならなくなっている。
「飲んだら荷台洗っておけよ。それで今日の仕事は終わりだ。移動時間あるから楽だったろ? ふははっ」
嫌みではなく、本心です。
堆肥を水で濡らすと、さらに臭気が強くなる。
「「「オエッ、ウゲッ、ボゲェ」」」
と、3人は嗚咽しそうになりながらも、綺麗に洗いあげた。
ランナーズという監視がいたからだ。
本心は、放り出したい気持ちでいっぱいだった。
結局バージルからは後3回依頼があり、雇い主からは特別給金が上乗せされたオレット一家。バージルが多めに堆肥料金を支払ったからだ。
「良い堆肥です。これからもよろしくお願いしますね」
「それはありがたい。こちらこそ、よろしくお願いします」
今回のことで、暫くマーリンに絡むことは止めようと思ったオレット一家(ソフトネール除く)だった。
ソフトネールはそもそも先に手を退いていた。お陰で事務職一直線である。その日他の家族の臭いについては、ランナーズから事前に聞いていたので触れなかった。
カレーライスじゃなくて良かったねと、余計な親切心を家族に送るソフトネールだった。
それを聞いたマーリンは思った。
「あれ、臭いよね」と苦笑いだ。
グレースが生きていた時、一緒に手伝いに行ったらしい。
暫くその仕事してないなぁと、遠い目をしていた。
乙女には、仕事後の臭いの方が気になったようだ。
「でもね、すごく良い野菜出来るからね! 大事な仕事よ」
男爵領には使っていない土地だけはたくさんある。
もしかしたら、世界樹も立派に育つかも?
ナッカスに、堆肥を使ってみるか聞こうと思うマーリン。
復讐云々はもう忘れ、私の領地の為にお疲れ様と素直に感謝するのだった。
(マーリンは優しいな。俺ならもっと辛い罰をと思うんだが)
そう嘆息し、夕食の準備を始めるバージル。
やっぱりカレーライスではなかったようだ。
(第1章 完)
取りあえず、オレット家への復讐?は何となく完了しました。ソレルのことや裏の悪い組織のことは、今後時間が出来たら書こうと思っています。その時はまた、よろしくお願いします。
読んで頂き、ありがとうございました(*^^*)
7/24 19時 日間ヒューマンドラマ(連載中) 38位。
7/25 10時 日間ヒューマンドラマ(連載中) 20位。
12/19 8時 日間ヒューマンドラマ(完済済)17位、14時9位。 19時にまさかの3位でした。スゴく嬉しいです。
ありがとうございますヾ(*≧∀≦)ノ゛♪♪♪




