#16 クエスト行こうとしたけど…。
クエストには行けません。
~ギルド~
賢者は仕事があると言って、朝早くに出ていったので、ギルドに向かったレオ。
「お久しぶりです。何かいいクエストありませんか?」
レオは受付嬢に聞く。
「そうですね~。これとかどうですか?」
受付嬢が薦めたのはウルフ系の魔物討伐クエストだ。
すると、近くの席に座っていた冒険者がすっと立ちあがり
「おいおい、シャロちゃん。こんな小さな奴にこのクエストは無理だろ?」
と、受付嬢に言う。
その目はニヤニヤと笑っていた。
シャロというのは、受付嬢の名前だろう。今度、詳しく聞いてみてもいいかもしれない。決して口説くわけではない?だって、彼女というか、奥さんいるって言ってもいいもんね…?
「少なくとも、あなたよりはすでに上の冒険者の素質があると思っています。恐らくこの程度のクエストでは何も起きないでしょうね。」
シャロは軽く受け流し、クエストの受注手続きを進めようとする。
「おいおい、シャロちゃん。その言い方はないだろう。えぇ?なんなら、俺と模擬戦でもやってからの方がいいんじゃねぇか?」
ニヤニヤした顔で、そう提案してくる冒険者。
「必要ありませんね。試験官を倒している方ですので。」
なおも、突っぱねるシャロ。
「そんなに小さな奴に本気を出すほど、試験官も鬼じゃないだろ?やっぱり厳しさというものをだな。教えてやる必要があるんだよ。」
ニヤニヤ顔から、少し怒ったような顔に変わる冒険者。
「わざわざそんなことに、闘技場を貸出しする余裕なんて…」
ないと言おうとしたところに、レオが口をはさむ。
「余計なことかもしれませんが、僕は構いませんよ?シャロさん。かわいらしいお名前なんですね。」
出来るだけ、機嫌を損ねないように名前を褒めておいた。
シャロさんと呼ばれたことについては一切気にも留めていないようだった。
「う~ん、アイツ、引き下がりそうにないから頼んでもいいですか?」
悩んだ後、申し訳なさそうな顔をしていうシャロ。
「任せてください。とりあえず、ボコボコにしてしまえばいいんですよね。(プライドを)」
シャロだけに聞こえる声で話すレオ。
「ええ、ボコボコにしてください。(肉体的に)」
意味合いが少し食い違っていることには気づかず、戦闘の流れとなった。闘技場の使用許可が出て、観戦者が多くいる中でのバトルとなったのだった。
~闘技場~
周りには、おそらく暇であろう冒険者の人たちが多く集まっていた。
「社会の怖さを教えてやるぜ。」
さて、見た目と違う事の恐怖を味合わせてやりますか。
そして、両社が立ち面した時点で、戦闘開始の合図があった。
「かかってこいよ!」
そう挑発する冒険者。
「そっちからどうぞ。」
出来るだけうざい言い方で挑発するレオ。
いともたやすく挑発に乗った冒険者は、
「お望み通り、こっちからいってやるよ!」
と、剣を振り上げて突っ込んできたので、
「お疲れ様です。」
と、一言言って、剣を弾いた。
「てめぇ、コケにしやがって…!」
逆上する冒険者。
しかし、怒ったところで能力値が上がるわけでもない。そんなことが起こるとすれば、魔王軍の幹部クラスである『憤怒』を司るといわれているアイツくらいだろう。
この冒険者の場合は、動きが直線的になるというデメリットしかなかったようだ。
またもや、冒険者がかかってくるが…、レオからすれば遅すぎる。
戦士のスキルを使えば、冒険者の一太刀の間に6発は最低でも入れられるだろう。
さっきから冒険者は「なんで当たらないっ!」とか、「避けるなっ!」とかって言っているが、この小さなチビの中が、当時の戦士なのだから当たるはずもない。
だんだんめんどくさくなってきたレオは、相手の剣を持つ方の手首まで接近し、捻って剣を落とさせた。
「分かりましたか?」
そして、こう言った。
相手の冒険者は、まだ、信じたくもないという様子だが事実なのだから仕方がない。
そして、勝者がレオであるというコールを聞いてから、受付にまで戻ったのだった。
判定はシャロがしてくれていたが、終わり次第すぐに受付に戻ったみたいだ。
「もっと、(肉体的に)ボコボコにしてくれてもよかったのですが。」
サラッと、怖いことを言うシャロ。
「あれ、かなりしたと思うのですが?(精神的に)」
最後まで食い違っていた二人だった。
そして、いざ、クエストを受けようとしたその瞬間。
「あっ!お前、あの時のやつじゃねぇか!」
聞き覚えのある声が飛んできた。
「あはは…、お久しぶりです…。」
ものすごく嫌そうな顔をしてしまいそうなところを堪えながら、声が聴こえた方を見る。
馬車での一連の事件の時に一緒にいた冒険者だった。
「お前、名前も聞かずに行きやがったし、俺も聞けてなかったからな!会えてよかった。アイツら、強いと思ったら、懸賞金がかかってたんだ。まぁ、賞金首だったってことだ。」
見つかったことを心底嬉しそうに話す冒険者。二人には、自然と視線が集まる。
「あはは、急いでいたもので…。」
レオは、何とかしてこの場から去りたいと思っているが、そう簡単に話が終わりそうにない。
「俺は、アースだ。お前の名前も聞かせてくれよ。」
人がいることなどお構いなしといった感じで自己紹介をしてくるアース。
「僕は、レオです。すみませんが、クエストを受けたいので…。」
失礼すると伝えようとするレオ。
しかし、アースに賞金を分けないといけないから、少し待てと言われてしまった。そして、二人はギルドの隅の方で、座って話すことになった。
「いや~、まさか、賞金首だったとは。お前がいなかったらあそこで終わってたかもしれんな。そうそう、その賞金なんだがな、100金貨だ。」
100金貨という量に、レオは驚いた。白石貨10枚で、銅貨1枚。銅貨10枚で、銀貨1枚。銀貨10枚で、金貨1枚だ。
※補足。こちらの世界換算で、白石貨(オリジナル硬貨)1枚が、10円。銅貨1枚=100円。銀貨1枚=1000円。金貨1枚が1万円。となります。ちなみに、これより大きな値は、その都度特殊な手法がとられるものとお考え下さい。
「それでだ、お前がアイツらを捕まえたようなものだろう?だから、全部持っていってほしいぐらいなんだが…。」
少し悩んだようにいう冒険者。それを聞いて、なんとなくレオも察する。
「あはは、別にそんな心配いらないですよ。半分に分けましょう。盗賊の注意があなたに向いていてくれたおかげだったんですから。」
そういうと、冒険者も安心したような顔になる。
「ははは、いくら俺でも、やっぱり金を見ると欲が出ちまってな。しかし、流石に割に合わねぇ。6…いや、7割は持って行ってくれ。」
冒険者はそういうと、金貨をきっちり30枚と70枚に分けて30枚を自分の懐にしまった。
「ありがとうございます。これだけあれば少しは楽に生活できます。もっとも、あまりお金のかからない生活はしているのですが。」
レオは、ぺこりとお辞儀して礼を言うと、ニコッと笑った。
「いやいや、それでも持っとくべきだ。ほんとにありがとうよ。臨時収入が入ったから、まぁ、いいことに使うことにするぜ。それじゃあな。」
要件が終わった冒険者は、スッと立ち上がる。
「ありがとうございました。もし、またどこかで会えば。」
と、再開することを期待すると、
「またなんか困ったら言えよ。これでも、上の方の冒険者やってるからな。」
と、きめ台詞をつけ足して、帰っていった。
きっと、私の方が上になると思います。そんなことを思いながらも、その背中を頼もしく思うレオだった。
「…、はっ!クエスト受けないと!」
思わず口から思ったことがこぼれてしまうほど焦ったレオ。急いで受付に向かう。
「なんか災難でしたね。」
やんわりと察して声をかけてくれるシャロ。
「まぁ、そんなことありますよ。まだクエスト残ってますか?」
半ば開き直ったかのような返事をして、クエストについて尋ねる。
「まだありますよ。ウルフ系の討伐ですよね。しかし、少し時間が遅くなってしまいました。この依頼、期限が今日までなので、あまりお勧めはしません。」
申し訳なさそうな顔になるシャロ。
「あぁ、そうですか。ちなみに、19時に閉まるのであってますか?」
時間について確認を取るレオ。
「はい、しかし、クエストの完了報告だけは、19:30までは受け付けています。」
シャロは丁寧に補足する。
「分かりました。受けます。」
そういうレオ。
「絶対に、失敗しない方がいいですよ。今のランクだと、冒険者ランク剥奪のかなりギリギリまで落ちてしまいますから。」
シャロは、かなり心配したように言う。
「分かりました。素早くいってきます。」
そして、レオはすぐにギルドを出た。
目指すは、ウルフの出没する平原。
さて、行こう。そう思ったときに、頭に念話が届いた。
『今から何するの~。』
当然ながら、ナルからだった。
『時間に余裕のない、ウルフ種の討伐だ。』
そう答えると、面白そう。と返事が来た。
『一緒に行くか?』
試しにそう聞くと、
『もちろん!時間無いんでしょ。手伝うよ!』
と聞こえた瞬間…。
目の前に現れたのは、間違いなくナルだった。
まさかのナル乱入。どうなるでしょうね?




