#14 入試2
入試終了。まぁ、受かりますよね…。
~入試二日目~
レオは実技試験を受けるために、再び王都の学校を訪れていた。
前日の実技試験が予定よりも長引いてしまったこともあり、よりスムーズに試験を行える環境が整えられていた。例えば、試験を受ける順番の整理。大きな看板のようなものを用意して、1~最後の順番の人までの受験番号が表にされていた。
「えぇ~と、僕の順番は…、最後か。」
そう呟いて、ふと疑問に思う。
(あれ?受験番号的には、最後になるようなことは何もないと思うんだけど…。)
そう、まるで自分だけはぶられたみたいに、番号が飛び出て最後になっているのだ。
(いや、気にしているわけではないけれども?うん。)
なぜそうなっているのか、理由がわからないレオが首をかしげていると…、
『おはよぉ~、その順番は、あなたの強さを見て、他の人のやる気がそがれる事態を防ぐためだから気にしないでね。』
『俺を一体何だと思ってるんだ?』
『賢者より賢者している、めちゃくちゃ強い戦士。』
『…。もういい。とりあえず分かった。またあとでな。』
そう伝えて、【思念波交流】を切ろうとすると、
『剣の実技試験はきっと楽しめるよ!』
とだけ最後に送られてきた。あまりいい予感はしないが、まぁ、適度な緊張感を保っていこうと改めて思うのであった。強い戦士といわれた後、少しうれしかったのは秘密らしい。
そして、試験の協力者に話を聞けるという、明らかでありながら気付かれない不正を行ってから試験に臨むのであった。
~魔法~
しばらく待った後、ついに、レオの番が回ってきた。まず初めに行うのは、魔法の適性試験だという。聴いたことのある試験だなと思ったので、試しにギルドカードを見せてみると、担当の教員から、
「後で別室に来るように。」
といわれ、試験はほぼ免除という形になった。
別室といわれた理由は、いくつか推測できるが、【全属性保持者】であることや、計測したい内容すべてがギルドカードに示されていたからではないかと思われる。
まさかの不戦勝に近い形で魔法の試験を突破したレオは、不完全燃焼の状態で剣の試験へと向かうのであった。
~剣~
広い闘技場というのが一番近い表現であるような試験会場。
魔法の試験がまさかの方法で突破、合格となったので、早めに剣の試験会場へ来ていた。
そこで見たものは、圧倒的な力によって、受験者が吹き飛ぶ様子だった。当然、試験であるため、ある一定の技量を設定して合格ラインとしているのだろうが、それにしては圧倒的すぎるほどだった。あれで判断できているのか不安になるほどだ。
そして、自分の二つ目の受験者の番になった。待機場所があり、そこからは試験の様子がよく見えた。
するとどうだろう。試験官は一歩も動いていない。一切動かずに、受験者の剣をさばいていた。確かに、剣の腕は年相応といったところだろう。しかし、覚えておいてほしい。この学校のレベルは最高峰。つまり、試験官が強すぎるのだ。
その試験官は男だった。中年のおっさん。しかし、ダサいおっさんではなく、美形、見えている部分全てが引き締まった、ひげが似合う…。そんな具合のイケメンだった。
レオは、その男をじっと見て、言葉を失う。
(勇者じゃねぇか…!?)
そう。なぜか。なぜか、勇者が試験官を担当していたのだ。試験中に、まさかの再会を果たすパターンが多すぎる。仕組まれているのではないかと思ったレオだが、自分の順番がもう少しで来るためそちらに気を持っていくことにした。
(よし分かった。これが、楽しめるという事だな。ずいぶんイケメンになったな…。ひげが似合うとは思わなかったが。)
そんなことを思いながら、自分の順番になったのを確認し、試験会場に入る。
試験官は、いきなり話しかけてきた。
「最後は骨のあるやつだって聞いてるんだが、実際どうなんだ?」
(わお、しゃべり方変わってる!と思いながら、返事をする。)
「分かりません。自分の腕がどのレベルか把握していないので。」
「ほう。なるほど。思う存分試してくれていいぞ。俺は、動くつもりはないがな。」
ものすごく余裕を見せつけてくる試験官。なぜか、少々腹が立ったので…。
「では、胸を借りさせていただきます。」
そう言って、指をパチンと鳴らした。
”【戦士業】Ⅷ”
そして、剣を構える。
「ほう…。まずいかもしれん。動いてもいいか?あと、合格な。」
構えただけで、まずいとすぐに気づく。が、すぐに動く許可を取ろうとするあたりが…。変わってないなぁ…と。そして、合格とか不合格っていうのは、隠すものだからね?機密情報よ?普通に考えて。ま、いいや。
「どうぞ。」
「ありがとう。」
そう言ってにっこり笑った瞬間、レオは一瞬で試験官との距離を詰める。
さぁ、始めようか!!
レオの剣が、試験官の左脇腹を狙って振るわれる。しかし、それをあっさりと上に弾き、そのまま上から剣を振り下ろす。その振り下ろされた剣を、自分の体に沿わせるようにして下に受け流し、手首を返してまた一閃する。しかし、またその剣を受け止め、次の技につなげる。
こうした動きが、目で追えないほどの速さで繰り出される。
そうして、試験官との激しい斬りあいが一段落し、また言葉を交わす。
「なんか、ものすごく既視感のある技なんだが、試させてもらってもいいか?」
「どうぞ。」
「では、遠慮なく。」
そうして繰り出された技は、これまでよりも、とびっきり遅く繰り出された相手の左肩から右の脇腹にかけてを斬る(ように見える)技。
しかし、この技は知っている。戦士時代に練習した、秘密の技だ。
この技の実態。それは、遅いように見せる剣。を繰り出し、その裏で大量の剣撃をお見舞いする技だ。
つまり、遅い剣に合わせて剣をふるおうものなら、その裏で繰り出された剣で無数のダメージを食らうというわけだ。これを知っているだけでは、対処法は分からない。しかし、一緒に練習した俺なら知っている。
まず、遅く見える剣は、あくまで残像であり、そこに当たり判定はしばらくない。つまり、その裏の剣を見極める必要があるのだが、この技は人間の構造上の限界に差し迫る技であるため、軌道が確定する。
まず、突きが三連で飛んでくるので、身体の脇を通り抜けるように、軽く当てて軌道をそらす。そして、次に、見えている残像の逆から一発分の斬撃が来る。それを、しっかり弾く。そのあと、上から下に振り下ろした後、その剣をまた下から上に切り上げ、最初にみえていた軌道にあわせて左肩から右脇腹に斬撃が来るので、弾かず避けて、最後の一撃のみ受け止める。
そして、技による暗号の照会をしたような形になって、試験官がこういう。
「よし分かった。試験監督、試験は終わりだ。決着が長くなる。当然だが、合格だ。あと、受験生。お前は後で…、」
そこまで言いかけて、ちらっと、遠くを見るようなそぶりを見せた試験官。
「図書室に来い。」
そういった。恐らくだが、ナルがいたのだろう。
そして、剣の試験も合格で終わったのだった。
~図書室~
レオが図書室に入った時、試験官だった人物。勇者はすでに到着していた。また、ナルも座っていた。
「お疲れ様~!!」
いつものテンションで、ねぎらってくれるナル。
「びっくりしたぞ、お前がレンだったんだな!」
そう言って笑う勇者。
「今は、レオ・マーブルだ。間違えるなよ、カイ・クロムウェル?」
レオは、あきれたように伝える。
「なぜ、フルネームなのだ。しかし、その体躯であの威力とは末恐ろしいな。」
笑いながら、それでいて最後の部分は少し真剣みのある声で言う。
「スキルに恵まれてね。しっかり卒業できれば、また冒険者ができそうだ。」
そんなことを、ぼやくと…。
「いや、成長さえすればできるだろ?お前なら。」
そうツッコみながら苦笑いする勇者が、そういえば…と切り出し、
「俺らは、元勇者、元僧侶、元賢者だから、そこだけよろしく。」
と、レオに伝えた。
「引退か?」
とレオが聞くと、
「そんな感じだが、一応、魔王を倒したら、その倒した時のパーティは勇者じゃなくなって、先生的な立場になるそうだ。」
と答えた。
「そうか。まぁ、安全で平和なのはいいことだ。ところで、僧侶は?アイツが揃えば、全員なんだがな。」
そう言って、レオは笑った。
「学校ではさすがに勤めてないなぁ。まぁ、すぐに会えるさ。俺の奥さんだしな。」
カイが笑う。
「やっぱりそうなったかぁ~。」
予想通りだ。と、レオも同調する。
と、置いてけぼりだったナルが話をし始める。
「全員揃ったら、またみんなでパーティー組んで何かしない?」
「いいね。それ、俺も思ってたんだ。」
と、レオも、カイも賛成する。
こんな感じではたから見れば、外部の先生方と生徒という関係だが、本人たちの間では旧友という、面白い雰囲気の場が出来上がっていた。図書室だが、試験終わりに使うものなどいないので、少し騒いでも大丈夫だったのが幸いだろう。
こうして、転生後のレンが、レオとして元勇者たちに出会っていくのだった。まさか、試験でこんなにも出会えるとは思っていなかったが。
しばらく会っていないと話題が尽きないもので、一人増え、三人になるだけで再び、図書室が閉まるギリギリまで笑い声が響いていたという。
そして、その日の夜、レオはナルに話しかけ、宿まで来てもらうのだった。
一体何をする気なんでしょうね?まぁ、大丈夫でしょう。




