#12 謁見
(遅めの)あけましておめでとうございます。1日に投稿できませんでしたが…。
~朝~
レオは、起き上がった。そう。今日は謁見の日。国王陛下に、演奏を披露させていただく日なのだ。
指をパチンと鳴らしてみる。良かった、衰えていない。当然だろう。スキルの力なのだから。
何度も鳴らす。音階を変えてみる。テンポを速くする。すべてが絶好調だ。
基礎練習を始めよう。正しい音程で鳴らす。複雑なリズムを弾く。
時間は、午前の10時。謁見の開始予定時間は、11時。
レオは、宿を出て王城を目指す。遠くからでも見えるほどの大きな城。王都を目指すことを決めた理由の一つが、そこにある。
~王城~
見張りの兵士が立っている。槍を片手に、道行く人を優しそうな目で見つめていた。
レオは、王城へ入るために、その城門へと近づき兵士に声をかける。
「本日、11時からの謁見を予定している、レオ・マーブルです。入城の許可おいただけませんか?」
「む?ほう。なかなかの青年よ。話は通されとる。謁見の間まで案内しよう。あの者についていけ。」
「ありがとうございます。」
そういって、連れてこられたのはメイド服を着た女性だった。
こういう時に案内するのは、兵士ではないのかと疑問に思っていると…、
「大丈夫じゃ。おぬしが怪しいものではないことも分っておるし、あの者は、城内でもかなりの腕じゃ。給仕も戦闘もな。」
心を読まれたかのような助け舟?に、レオは少々の驚きを見せながらも、入城するのだった。
~謁見の間~
レオが謁見の間の扉の前に立つと、その扉が開いた。
レオは静かに前へと進み、片膝をつき頭を下げた。
「面を上げよ。」
まだ、上げない。
「よい。面を上げよ。」
そして、頭を上げる。
「遠路はるばる、よくぞ参った。我が使節の者が、面白い人材を見つけた。良い娯楽になるだろう。というように報告してきたのでな。ぜひ、その技を見せてもらおうというわけだ。」
「はっ、かしこまりました。自分ではあまり自信がないのですが、二度とない機会と思い、自分の持てる最大限の演奏をさせていただきたいと思います。」
「楽しみにしているぞ。」
「はっ。では、僭越ながら、陛下にお尋ねしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「む?なんだ。褒美の話か?」
「いえ、陛下の好まれる音楽がどのようなものなのかをお尋ねしたく思います。」
レオがこう尋ねると、国王陛下は少し悩むと、ただ一言、こう告げた。
「壮大な音楽だな。」
特に曲を指定することもなく、ただただ壮大と、そう言い放ったのだ。
「少々難しいお題ではありますが、よりよい完成度になるよう、模索しながら演奏してみます。」
最初からかもしれないが、音楽のことを考え始めたレオの頭には、キレイな敬語などという事はほとんど抜け落ちてしまっていたのだった。
考えながらも、たまたま思いついた、素晴らしく壮大な音楽。私たちの言うところの、オーケストラに当たる編成の音楽を奏でることを決めたのだった。
曲のイメージとしては、まるで、狩猟の開始のような、さわやかな平原を風が通り抜けていくような、それでいて、重々しく、巨大な何かが空を飛び、大地を踏みしめ、海を泳ぐような音楽だ。
演奏は、指パッチンによるものだったが、確かに耳に聴こえるのは、角笛であったり、縦笛、横笛の音なのだ。弦の音も聴こえる。これこそが、スキルの効果であり、一人でオーケストラ編成を再現できる面白さなのだ。
そうして演奏が終わり、静寂があたりを埋め尽くし、まるで時が止まったかのような一瞬の間の後、パチパチと、拍手が始まった。最初に手をたたき始めたのは、陛下だった。涙こそ浮かべていないものの、満足げな表情だった。
「素晴らしい演奏だった。まさしく、壮大な音楽であった。」
「ありがたきお言葉。」
「ふむ…、王城の音楽家になる気はないか?」
「…申し訳ありませんが、お断りします。」
「理由を聞こうか。」
陛下の柔らかい雰囲気はそのままに、言葉に重みが宿る。
「はい。まず、この芸は職業としてではなく、小遣い稼ぎ程度にしか考えていないものです。もし、それが十分なレベルに達していたとしても、他の音楽家たちに胸を張れません。それに、私の音楽は、角ばった音楽です。正確ですが、それ故に表現があまり出ないのです。」
陛下は、頷きながら話の続きを促す。
「また、私が今希望する職業として、冒険者があります。少々腕に自信があるものでして。」
そして、陛下が納得したように顔を上げた。
「どうりで急にギルドマスターから話をさせてくれと、申し出があったわけだ。」
レオは、苦笑いを浮かべていた。
「うむ。わしは面白かった。食事の時間だ。ギルドマスターも来る。一緒にパーティと行こうじゃないか。」
「ありがたきお心遣い。」
そして、食堂へと案内された。
大きなテーブルに、真っ白なテーブルクロスが敷かれ、その上には豪華な食事が並んでいた。まさしく王の食事という感じだった。勇者パーティ所属時代のゆっくり食べれるときの食事に似ていた。
「さてと、ギルドマスター。いったい何の用事かな?」
「そんな堅苦しいしゃべり方じゃなくてでいいだろうよ?友達よ?」
ギルドマスターは、王に向かって、さも当然のようにため口だった。
「来客中ぞ?いくらなんでも…。」
来客の位によって、王は素を見せるかどうかを決めるという。
「その話だが、それこそが、この場を設けておらった理由だ。」
顔を険しくしてギルドマスターが話を切り出す。
「む?どういう事じゃ?」
「レオの正体。ここでなら明かしてくれるのではないか?なぁ?」
「えぇ。もとよりそのつもりでした。」
「ふむ、わしはよく分かっておらんのだが?」
レオの功績を知らない王は話に取り残される。
「まぁ、聞いとけって。」
ギルドマスターにそう促され、レオは話し始める。
「私は、勇者パーティで戦士を務めていました。しかし、魔王の最期の攻撃で死に、勇者の持つ転生のスクロールによって転生しました。」
「なんと…。それが事実だとすれば、確かにワシも素で話していいどころか、敬う必要まであるくらいじゃ。」
「やっぱり…とは言わんが、あの強さも納得だ。」
あまり驚いていない二人に、動揺を隠せないレオ。ふつう逆だと思うのだが。
「あまり驚かないのですね?」
むしろ疑問にまで思うレオ。率直に質問を投げかけた。
「ああ、それは…、」
「君の代の、勇者から報告を受けていたんだよ。そろそろ転生した戦士がいるだろうと。まさか、君とは思わなかったがね。」
王とギルドマスターが、顔を合わせて苦笑いを浮かべた。そして、王が褒美の話を持ち出した。
「そうじゃ。わしは十分満足したから、褒美をとらせよう。何がいい?さすがに爵位とかは厳しいが…。」
すると、いきなりギルドマスターが話をさえぎってきた。
「それだが、爵位も可能になるかもしれんぞ?」
レオと王は、二人して疑問の顔だ。
「初クエストで、上級種3体、初級中級あわせて、64体。快挙だ。それに、いくらゴブリンとはいえ、これだけの討伐は難しいんだぞ?」
上級種の上は確かにあるが、ソロで三体の同時討伐はすごいらしい。
「とにかく、褒美の希望は何かあるか?」
「では、勇者へ連絡をお願いします。」
「そんなものでいいのか?それならもう一つくらい、いいぞ?」
王は、少々気が抜けた感じになっていた。
「あぁ、でしたら、王都の学校に通おうと思っていて、入学試験にもう少しで行くので、便宜ではないですが、少々話を通していただいたらと。筆記さえ受かれば、あとは実技ですので。」
「確かに、受かるかどうかの心配よりも、学校の先生の心労の心配をしたほうがよさそうだ。」
そう言って、王とギルドマスターは笑いあった。
そうして、謁見は終了したのだった。
一番の報酬は、ギルドマスターや王と良い関係を持てた(仲良くなれた)ことだろう。
入試は、明々後日だ。
えぇと、まぁ、分かるかもしれませんが、モ〇スターハ〇ターの曲あたりをイメージしていただいたらと思います。
演奏家は生演奏。レオのスキルは、シーケンスソフト、打ちこみ音源がイメージとしてはあっているかなと思います。




