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27・藤森部長の圧迫面接

「小川君」


兼業農家のおじさんが、重々しく呼びかける。


「そこへ座りたまえ」


私は内心で滝汗をかきだした。何の警戒も見せずに、素直に座る小川主任。

その席はさっきまで調査官が座っていた席だ。今度はこちらサイドが取調べみたいになっている。


「部長、コーヒー淹れてきましょうか?」

「頼む」


部長は机に両肘を付いて、重ねた両手で口元を隠し、小川主任をガン見している。

なんだか地響きが聞こえそう。こーゆー時は、逃げるにしかず。給湯室へ脱出することにした。




城野先輩が逃亡してしまった。


出来るだけ平静を装って、藤森部長と向き合う。藤森部長は、大山田先輩方が言ういわゆるゲンドウスタイルで、こちらを睨め付けておられる。

農家の装いをしたラスボス感がすごい。目からビームくらい、簡単に打てそうだ。


「情報の方は落ち着いたのかね」

「いえ…山は越えたようですが、先は長そうです」

「記録の提出は、まだ続く感じかね」

「ええ。過去三年分のデータなので、それなりに掛かるかと」

「今日、この後は?」

「情報に戻ります」


思わずため息が出る。望月邸に城野先輩と戻るのは絶望的だな。明日も休日返上で作業になるだろう。


「ところで今日の昼のこと、出来るだけ詳しく話してくれないかね」

「はい」


俺は椅子の上で姿勢を正す。入社面接越えの緊張感だ。藤森部長の視線に、丸裸にされてる気分になる。


「本日は城野先輩の付き添いとして、望月副社長宅に訪問しておりました」

「なぜ?」


城野先輩の訪問目的は、元ベテラン社員に復帰をお願いすることだ。

「なるほど」


納得したとは言い難い険しさで、藤森部長は頷いた。


「単刀直入に聞くが、城野くんとは結婚前提なのかね」


ええっ!?なんですって!?


「え……城野先輩と誰が、ですか」

「小川君しか居ないだろう」


小川君しか居ない…頭の中でそのフレーズが繰り返される。


「そんな……そんな幸せなことって、あります?」

「付き合ってるのじゃ、なかったのかね?」


怪訝そうな顔になる藤森部長に既視感を覚える。そういえば昼間にも望月邸で見たな。


「残念ながら」

藤森部長の眉が下がる。


「もしかして、君の片思い……?」

「もしかしなくても、そうです」

「そうか……大変失礼した。申し訳ない」

「いえ……」


血の涙を流しながら応える。

藤森部長は咳払いをして調子を変えた。


「いや、すまない。城野君を今、さらわれたら困るのでね。失礼ながら踏み込ませて……」

藤森部長はまた咳払いをした。同時にふわりとコーヒーの香りがする。この会話はマズイ。必死で話題を切り替える。


「藤森部長は兼業農家でいらっしゃるのですか?」

「あ、あぁ。義理の兄が農家でね、繁忙期などは出来るだけ手伝っているんだ。」

「今は……何でしょうか?」

「サツマイモの収穫が始まったんだがね、今年はあまり出来が良くない。」


コーヒーを配る城野先輩を横目に、ひたすら芋トークで場を繋ぐ。

今年の出来不出来から、暑すぎる夏の話、芋の品種に義姉オススメの調理法まで……。


コーヒーカップが空になったところで、城野先輩が沈黙を破った。


「もう四時ですけど、お昼ごはん、どうします?」


その後3人でコンビニへ行き、情報への差し入れを含め、爆買いした。もちろん、経費で。

大山田先輩と河野先輩が「女神降臨…!」と本気で泣いていた。

藤森部長も居たんだが、ストレスと空腹で気付かなかった、ことにしておく。

次回、その頃のインコとジンは…

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