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鈴蘭の客人  作者: 稲葉 鈴
王都
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子爵夫人であるというナターリエさんに先導されて、

 子爵夫人であるというナターリエさんに先導されて、伯爵令嬢で騎士でもあるトリクシーにエスコートされて。私は確かに鈴蘭の女神さまに招待されたお客様だけれど、それでもこの度私が持つことになった肩書はトリクシーのはとこだ。貴族の家系のお嬢さんだけれど、本人は騎士でもなければ貴族でもない。

 お城に来て、こんなことになるはずではない、立ち位置である。うん、今の私もそうだね?

 とはいえ。まあ、まあ、その辺りの事を考え出すと面倒なことは確かなので、心を無にして頑張って廊下を歩いていきたいと思う。

 私達がお借りしている客室も、陛下方王族の皆さんが暮らしている一角にあるという。すなわちプライベートスペース。そのため近衛兵の皆さんはあまり配備されていないというけれど。


「ほら、あの庭にいるよ。噴水の側に」

「本当だ。いた」


 こっそりと、トリクシーが教えてくれる。

 絶対に、私一人では気が付かないから、という理由だ。そしてそれはとても正しくて、トリクシーに教えてもらえるまでは同じ景色を見ていたはずなのに気が付けていない。

 彼らは王族の皆様が気兼ねなく過ごせるようにとひっそり警備しているのだろう。だから、騎士じゃない私が気が付かなくても、問題はないはず、だ。


「殿下方も、ある一定の年齢からは手斧を皮切りに武器を学ばれるからね。気が付くのも練習にされているのだと思うよ」

「……なるほど」


 設定上私も気が付かないのはまずいのでは? と思わなくもないけれど、それはあくまで設定上のお話であって。実際の私は気が付くはずもないのだ。平和な世界で暮らしてきましたので。

 まあ設定上で突っ込まれたら「(気が付いていましたけれど)それがなにか?」って対応をすればいい、と思っている。出来るかどうかは別の話として。

 そんな遊びを間に挟みながら、長い廊下をてくてくと歩いて、食堂へと到着した。前回はその名も晩餐室だったけれど、今回は食堂だという。多分、トリクシーたち家族と食べていたようなところだと思う。調度品とかの質は別として。

 いやトリクシーのお城も凄かったんだよね。多分。全然こっちの世界の調度品についてとか知る前の話だから、いや今も詳しくはないけれど。それだってお宿でシャルロッテさんから聞いて知ったくらいなので。

 うん、全然まだ何も知らないですね、私。


「ご到着です」


 両開きの恐らく重厚な、と形容詞が尽きそうなドアの前で、ナターリエさんが足を止める。そのドアのところには二人の騎士様が体験した状態で立っておいでだ。ナターリエさんの言葉に頷き、片方がドアをノックして少し開けて、中に言葉を伝えた。

 ナターリエさんは脇にすっとどいて、私達にそっと微笑みかけてくれる。

 ドアは一回閉まって、それから今度は中から開いた。


「お入りください」

「ありがとう」


 中にいたのも騎士様で、制服はおそらくドアの所にあっていたのと同じものだ。おそらく。だって色合いとか同じだし。

 トリクシーが鷹揚に答えて、私を促して入室する。

 ドアが、背弧で音もなく閉まった。


「よく来たね。空いている席に座っておくれ」

「ご招待ありがとうございます」

「ありがとうございます」


 部屋の中には小さいシャンデリア。壁紙は落ち着いた色合いだし、皆様先日と違って、多分めちゃくちゃいい布でお仕立てになっていらっしゃるのだろうけれど、なんか日本語おかしい気がするな。まあいいや。それでも、先日よりは普通よりの服装である。

 大きなテーブルの、正面の席にお座りになっていらっしゃる白髪の陛下は同じ白いシャツ。座ってらっしゃるからよく分からないけれど、下もそれほどきらきらはしてなさそうだ。どうだろう。キラキラのズボンはいていたら。陛下の音わりにお座りの、プラチナブロンドの王妃様は肘くらいの袖のチェックのシャツが見えている。白地に黒のチェックだ。

 テーブルの両辺、両脇に座っていらっしゃる殿下方も、陛下と同じような白いワイシャツ姿だ。むしろ、一番仰々しい格好なのは、トリクシーじゃなかろうか。

 王子妃のお二人は、薄ピンク色のトップスと、クリーム色のトップスだ。なんか色々と近世ヨーロッパ風な気がするけれど、染色技術は進んでいるようだ。いや当時も色とりどりのドレスとかあったんだっけ?

 トリクシーが椅子を引いてくれて、そこに座る。トリクシーは自分で椅子を引いて座った。脳内でトリクシーの叔父様が嘆いているけれど、まあ、ほら。ここは何でも家族ぐるみのお付き合いをしている場所だそうだから、良いのだろう。多分。


「それじゃあ」


 殿下のお一人がどこかに向かって手を振る。多分、これを合図にごちそうが出てくるのだろう。

 まず供されたのは食前酒。薄青い色の小さなぐい飲みサイズのものに注がれて出てきたのは、透明なお酒だった。香りは何だろうこれ。


「ハーブのキーデルレンに桃で風味を付けたものになります」


 なるほど桃。でも私の中の鑑定さんが「お前の知っている桃とは違う」と教えてくれているので、違うのだろう。


「少し強いから、一気に飲んじゃダメだよ」


 食前酒は小欲増進のために飲むものだから、舌の上で転がすようにして。と、片方の殿下が教えて下さる。どっちの殿下だろうか。

 ええと、お隣に座っていらっしゃるのが、薄ピンクの髪の毛の王子妃様だから、ええと。コローナ様だ。ということはお隣は第一皇子殿下のカミル様。するり、とその情報が出てきた。

 鑑定さんがさっきレベルアップしたっぽい結果だろうか。確実に覚えていなかったのに、思い出せた、ということは。


「ありがとうございます。カミル殿下」

「お、覚えてくれたのか」


 ふ、と、殿下が相好を崩された。

 前回の晩餐会の時、思いっきり覚えてません。って顔してましたね。私。これは。

 とりあえず微笑んで交わしておく。まさか王子妃様の髪の毛の色で覚えましたとは、言いづらい。殿下方はどちらも、陛下か王妃様に似た髪の色なんですもの!

 つまり! どっちも! 白っぽい!

 日本人にこれは見分けは無理ですね。無理ですよ。

お夕飯会が始まりますが、残念今回の更新はここまでです。

また来月お会いしましょう。


次回ちょっと書いてあるんですが、手を加えたくなってしまったので今回の更新に含まないことにしました。

『<a href="https://ncode.syosetu.com/n1603jh/">勇者に負けた魔王は異世界で返り咲こうとダンジョンを送り出した</a>(https://ncode.syosetu.com/n1603jh/)』の新エピソードが書き終わらなくて。

ダンジョン作るの楽しいですね。

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