04.花代
「ちわっす、花屋でーす。」
来やがったわね。
◇
はい、アコーリスのマスターよ。
半グレの連中、こうして開店前のスナックやバーに、闇バイトで雇った何も知らない若造を送ってよこして、花を置いていかせる。花っていっても上等なもんじゃないわ。バラとかトルコギキョウとかが5~6本くらい適当に見繕って束ねてあるだけ。闇バイト君は花を店に渡したら、逃げるようにして帰っていく。
何でそんなことするのかって?後で半グレ共が「花代」を取りにくるのよ。要は体のいいみかじめ料ね。
「うちは要らないわ。持って帰んなさい!」
「いや、受け取ってもらわないと、俺らシメられるんだけど………」
「今日はダンタリオンちゃんが来る日よ。ぐずぐずしてるとあんたら悪魔に半殺しにされるわよ。」
闇バイト君、花束を店の前に放り投げて逃げてったわ。
この間、花を持ってきた闇バイトと揉めてるところに、たまたまダンタリオンちゃんが来て大立ち回りになったの。闇バイト君は彼女に投げ飛ばされて、這う這うの体で帰っていったわ。多分その後半グレ共に詰められたでしょうね。
でもそれ以来、彼女は半グレ共の間で「要注意人物」扱いになったみたい。なにしろ元アルハンブラの近衛隊長だからね。剣術だけでなく武術は一通りこなせるし、有翼人はあの見た目でも力は強いから、半グレどもが身一つで敵う相手じゃないわ。警察もまめにパトロールしてくれるようになったけど、それでもこうやってしつこく花代集めを続けている。
あいつらのメインの収入源は特殊詐欺とかのはずだから、花代集めなんかそんなに熱心にはやらないと思ってたんだけど、この間の一件で面子を潰されたと思ってるのかも知れないわね。毎日来るようになった。
次は、闇バイトじゃなくて、半グレが直接乗り込んできそう。多分武器を用意して。拳銃はさすがにないでしょうけど、スタンガンか熊スプレーくらいは持ってくるかもね。
◇
「撃った銃がまだ特定できてないんですよ。」
闇バイト君が帰ってしばらくしたら、今度は新宿署の高木さんが店に巡回に来て、ついでに「黒松の会」の村長襲撃事件の捜査の進捗を教えてくれた。
「弾につく傷が銃の種類ごとに違っていて、普通はそれで発射された銃の種類が分かるんですけど、ペタルさんを撃った弾丸についた傷からは、該当する銃が出てこないんです。」
「そうなんだ。」
「もしかしたら、手製の銃かも知れません。今時はそれこそ3Dプリンタで、殺傷能力のある銃が作れますからね。仮にプラスチック製だとしたら、証拠隠滅も難しくないでしょう。」
「撃ったやつは防犯カメラとかに映ってなかったの?」
「一つだけ映っているのがありました。身長170cmくらいの痩せ型の男です。サングラスとマスクをしてフードを被ってたせいで、人相までは分かってません。」
「そう……。」
それだけ言い残して、高木巡査部長は、次の店へと見回りに行った。
さあ、「アコーリス」は今夜も開店するわよ。




