表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/77

華出井 葵(12)と願いの井戸 47

 呼ばれた気がして振り返ると、京護が居た。

 ドアを少しだけ開け、明らかに助けを求めるような顔を出している。 

「連君、逃げてきたのか」

 京護は屋敷に戻って来る甚八を見上げて、少し拗ねた顔を見せる。

「トイレ。…………嘘は言ってないから。服は…………」

「決められたんだ。良いんじゃないか。アレより、というか病衣と比べちゃいけないな」

 ゆったり目の黒のパーカーと黒のデニム。手に持っていた葵から預かったパズルは、パーカーのポケットに入れたのだろう。前部分にふくらみがある。

 甚八は、さほど服に興味が無い。相手が女性であればまた別だが、子供服の良し悪しは分からない。

 それは京護も同じだった。

「おれ、お母さんが用意する服しか着て来なかったし、それで不満も無かったからよく分からなくて。これ、お父さんのせいなんだ」

「どういう事?」

 呼ばれたから出てきたようなタイミングで、影がシュルリと、京護の首から出てきた。


【オナジ おんな ニオウ におう オナジ】


 甚八はぎょっとして、辺りを見回す。誰もいないのを確認して、廊下の隅に移動する。

「お父さんが、飽きて出てきちゃいそうになって。適当なのを着てごまかしてたら、ずっとこうなっちゃって。

 あ、話すって言ってもおれにだけ聞こえるようにはしてたよ」

「僕に聞かせるって事は、情報か確認をしたいのかな。

 飽きるのが予想通りにしても早いな。連君は、おんな、て誰の事を言っているのかは分かるの」

「うん…………ひいおばあ様て、葵君が呼ぶ人」


【におう ニオウ におい おなじ オンナ】


【あれも オナジ くう ニオイ】


「くうが食べる食うなら、嫌な振りしてくるなあ。 ご隠居様が匂うの?」

 誰かに聞かれたら怒られるので、加齢臭ではと思ったのは心の内に留めた。

 京護は、辺りを見回し、誰も居ないのを改めて確認した。

 そして小柄な身を、甚八の懐に入れるように近づく。

「葵君も匂いのこと言ってた。あの、おれになんだけど。…………おれ、臭いのかな」

 恥ずかしそうにしているのは、どうしてなのか。

 自分にとって好ましい人に、体臭を言われるのは気になる。

 甚八は「ちょっとごめんね」と言ってから、微かに嗅いだ。

「第二次成長期の男子としては、恐らく標準的かな。朝シャワー浴びたからか、むしろ清潔だよ」

 成長期の話までされると思わなかった京護は、思わず自分の手を鼻に寄せて嗅ぐ。

「良かった。けど、やっぱりおれには分からない」

「匂いの意味はなんだい。連君とご隠居様の匂いが同じだって、ソレが言ったの?」

「ううん」

 京護は、甚八に耳打ちした。

「ご隠居様のどこからか、葵君のパズルと同じ匂いがするって」

 言われた内容は当然、気になる。

 興味がそそられることを伝える前にと、甚八は京護に助言した。

「連君は、ひいおばあ様呼びで良いんじゃないか。葵様のいとこなんだし」

「う」

 設定を忘れていたわけではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ