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反撃の決意

 ケルベムの言葉に対し、マヤは首を横へ振った。


「いいえ、先生は素晴らしい方ですよ」


「そうかい」


 またなにか言ってくると思ったが、ケルベムはそれ以上なにも言わず頬を緩めた。

 どこか嬉しそうだ。

 ハンナとアヤのほうは、話についていけてないようで首を傾げている。


「けるべむ……なに?」


「わかんない……」


「まあ、お嬢ちゃんたちにはまだ早い世界さね。もう少し大人になったら、私の名を知ることになるだろうよ」


「むぅ? お姉さん、なに言ってんのさ、私たち、もう大人だよ!」


「そうです、結婚だってできちゃいます!」


 ハンナとアヤは頬を膨らませ不服そうに言う。

 するとケルベムは、顔をほころばせ、小動物を愛でるように二人の頭をなでた。

 二人が気持ちよさそうに目を細め、ボーっとしだすと、ケルベムはヤマトへ再び向き直った。


「それで、どういう状況だい? いったいなにをやらかしたら、顧客たちに敵意を向けられるのさ?」


「それが――」


 ヤマトはここまでのことをすべてを話した。

 かつてのパーティメンバーの仕返しのことから、ドグマン家による圧力のこと、誰かが妙な噂を流していること……そしていなくなったシルフィのことを。

 シルフィに持ちかけられたであろう話については、マヤとハンナも知らなかったので、少し取り乱した。


「――なるほどねぇ、事情は分かった。なかなか厄介なことに巻き込まれているわけだ」


「師匠、良ければ、手を貸してくれませんか?」


「断る」


「即答!?」


「当たり前だ。私だってヒマじゃない」


「そうですよね……」


「だから、(かせ)を外してやったんだ」


「さっきも言ってましたけど、かせってなんのことですか?」


「おいおい自覚がないとはな。私がそう教育したとはいえ、そこまで無関心だと私も泣いちゃうぞ?」


「またまたご冗談を。師匠が泣くなんて、天地がひっくり返ってもありえな――」


 ――ガツンッ


「痛っ!」


 ヤマトの脳天にゲンコツが落ちてきた。

 とてつもない衝撃にたまらず涙が浮かぶ。

 すると、すかさず横からマヤが頭をさすってきた。


「よしよし」


「マ、マヤっ、恥ずかしいよ……」


「こほんっ。お前が持ちうる究極の武器。それは、ヤマト・スプライドがケルベム・ロジャーの後継者であるという圧倒的な『ブランド力』と『信用』だ」


「っ! そういうことですか」


「さっきのを見ただろう? この国での私という存在の影響力は、それほどまでに強大だ。もしお前のほうがそれを悪用しようものなら、蹴飛ばして奈落の底に落としてやるところだが、今は緊急事態なんだろう? 特別に私の名を使っていい。とういうか、さっきの情報屋が勝手に流すだろう」


「そうでしょうね」


「後は好きにやりな、バカ弟子。だけど、女一人取り返せないなんてヘマしたら、許さないからね」


「もちろんです。シルフィは必ず、救い出してみせます!」


 ヤマトは拳を握り、師匠の目をまっすぐに見て宣言した。

 ケルべムは満足そうに鼻を鳴らすと、マヤの差し出した書類にサインし、正式にヤマト運用の大口顧客となる。

 彼女が「また手紙よこせよ」と言って去って行くと、ヤマトはシルフィを取り戻すべく、本気の攻勢に出ようと決意を固めるのだった。

 

「もう容赦はしない――」


※ハイファンタジー日間33位になりました!(2/24)


1位を目指しますので、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の率直な評価をお願いしますm(__)m


また、『ブックマーク追加』と『レビュー』も一緒にして頂けると大変助かります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナイスなタイミングで、史上最強の援護射撃 反撃の開始だー
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