ほぼ同窓会
●●この小説は読者参加型です●●
あなたは自分が何科だと思いますか?
何科の人物に登場してほしいですか?
感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。
俺は魔法の盾を出現させた。迷わず真白と日向先生の方へ駆け出す。遥先生はタバコをくわえて傍観していた。おいっ、加勢してくれよ!
そのとき、鈴のような声が降ってきた。
「よそ見しないで」
俺の行く手をはばんだのは、三年の担任、桃実先生だ。その瞳を真正面から捉えたとたん、ドキン、と心臓が痛んだ。
……え。とんでもない美人だ。バンビのような大きい目。長いまつ毛。濃いピンク色に潤む唇。スタイルも完璧。運命かもしれない。吸い寄せられるように、顔と顔が近づく——
スパーン! 後頭部を軽くはたかれ、はっと我に返った。
「だから言ったでしょう。桃実先生の目を見るなと」
遥先生があきれた声を出す。
「桃実先生は〝チャーミング目・魅了科〟の聖人です。目が合っただけで精神をむしばまれますよ」
「妖怪みたいな言い方はやめてください、遥センセ」
桃実先生が、ふふっと笑った。背後から隼人先輩が投げキスを送る。
「桃ちゃーん! 一生、俺たちの先生でいて! 養って! 大好き!」
「こら、先生と呼びなさい」
「はーい!」
桃実先生にたしなめられると、あの隼人先輩すら、しっぽを振る犬のように従順になる。
遥先生が皮肉っぽく笑った。
「生徒をしっかり手なづけているようですね」
「しつけは得意なんです。あなたと違って」
俺は気が気ではなく、視線を泳がせていた。遥先生がこちらをじろりと見る。
「何をそわそわしているのかな」
「いえ、その、桃実先生から目をそらしているところです」
「気を強く持てば、抗えるはずですよ」
「……たぶん無理です」
「情けない坊やですね」
遥先生がため息をついた。モモ色の煙が輝き、俺の元に流れ着く。両目をおおわれた。煙のアイマスクだ。
「な、何ですか、これ」
「応急処置です」
「見えませんが」
「桃実先生と目が合わないでしょう」
「いや、誰とも目が合いませんが」
「文句ばっかり……」
再び、特大のため息。俺が間違っているのか?
役に立たないという点では、隼人先輩も良い勝負だった。すっかりバズーカを下ろし、夢中で桃実先生を応援している。
「いけいけ桃ちゃん! 押せ押せ桃ちゃん!」
「隼人、武器をかまえなさい!」
桃実先生が、がらにもなく声を荒げる。三年生は〝桃ちゃんコール〟の大合唱だ。何なんだ、この学年。普段の授業はどうやって成り立っているんだろう。
「生徒より目立つ気ですか? 桃実先生」
「生きているだけで目立ってしまうんですよ、遥センセ」
煙に視界を奪われたまま、俺はもたもたと盾をかまえた。とにかく守りに徹しよう。遥先生をかばえば、優しさで武器が育つ。
しかし、細長い縄のような何かが胴体に巻きつき、あっという間に引きずられた。艶やかな髪が頬をくすぐる。
「優人は私を攻撃できないわね。だって優しいんだもの」
見なくてもわかる。桃実先生の武器によって、吐息がかかる距離にたぐり寄せられたのだ。間髪を入れず、右手から強烈な殺気が飛んでくる。
「隼人、今よ!」
桃実先生の声。迫りくる気配は隼人先輩か。無我夢中で盾を振り上げる。
そのとき鼻を抜けたのは、モモの香りだった。これは隼人先輩じゃない。遥先生だ!
姿勢を低くし、前方へあてずっぽうに頭突きをした。不意打ちに桃実先生がよろける。俺の体をしめ上げていた縄の力が弱まり、抜け出した。
目の前が明るくなり、見えたのは、桃実先生を後ろから羽交い絞めにする遥先生だった。左腕で動きを封じ、右手で目をおおっている。タバコの煙が二人を取り巻いていた。
「俺の生徒を魅了するのはやめてください」
「あらやだ、身に覚身えがないです」
身動きの取れないまま、桃実先生がくすくすと笑う。足元にはムチが転がっていた。桃実先生の武器だ。
「遥センセ、タバコ臭すぎ。おかげで優人が罠に気づいちゃったじゃないですか。同士討ちが見たかったな」
桃実先生が拘束されたことに憤慨し、隼人先輩がわめく。
「やい、桃ちゃんを放せ! どうせトドメを刺せないくせに。この、ズボラ教師!」
他学年の生徒にまでこの言われよう。苦笑いせざるを得なかった。
「この人は平気でトドメを刺すわよ。遥センセと私は、高校生の頃からずーっと相性が悪いの。私が魅了できないのは、彼だけだもの」
けだるさ科の聖人の細胞は、魅了科の力をはねのけることができるらしい。
「まさか。桃実先生には誰もかないませんよ」
遥先生がやれやれと首を振る。すると、桃実先生のこめかみにピキッと青筋が浮かんだ。
「三年間、学年一位だった遥センセに言われると、無性に腹が立つわ」
桃実先生の容赦ない蹴りが、遥先生のすねにヒットする。パキッという嫌な音がした。ゆるんだ腕の隙間で体を柔らかく折り曲げ、さらに遥先生の腹を膝蹴り。遥先生は受け身を取れず、地面に叩きつけられたまま起き上がらなかった。
「桃実先生、折れましたよ。今の音、聞きました? これ、確実に骨までいっちゃってます」
遥先生が足を見下ろす。桃実先生は無視を決め込んでいた。
ここで正義ちゃんのアナウンス。
「前半戦、終了です。これよりハーフタイムに入ります」
骨折した遥先生を前に、俺はぼう然と立ち尽くしていた。ここ、本当に教育機関?
人間性まとめ
桃実先生/チャーミング目・魅了科




