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最っっっ高の転生先だ!

「なろう」二作目の投稿です。

優人(ゆうと)の〝(ゆう)〟は、〝(すぐ)れている〟の〝(ゆう)〟よ。誰よりも優秀でいなさい。優秀な者は群れる必要も、同調する必要もないの」


 物心つく前から、母さんに何度も何度も言い聞かせられた教え。

 これに忠実に従った結果、小学校の入学式から一週間も経たないうちに、俺は嫌われていた。


 五年生になった春、放課後。クラスの人気者がピカピカのゲーム機を振りかざす。


「見ろよ! 昨日発売の新型!」

「えっ、もう手に入れたの?」

「いいなあー」


 同級生たちが群がる。

 窓際の席に座る俺は、ぼそりとつぶやいた。


「……うっざ」


 とたんに視線が集まった。人気者の眉がぴくりと動く。


「は? 優人。今、なんて言った?」

「別に。わざわざ学校に持ってきて、貸してやるわけでもないのに見せびらかすのが気持ち悪くて」


 教室の空気が一気に冷えた。取り巻きたちが口々に反撃を飛ばす。


「空気読めないよなー」

「自分が買えないからって、ひがむなよ」

「もうおまえは一生黙っていろ」


 俺は立ち上がった。人気者の手からゲーム機をひったくり、窓際へ。校庭では、春の日差しを受けた池がキラキラと光っていた。その水面めがけて——


 ポーイッ。ぽちゃん。


 ゲーム機はきれいな放物線を描き、池の真ん中に落ちた。


「おい、優人! 何すんだ!」


 人気者の絶叫。


「そんなに大事なら、学校に持ってくるなよ」


 言い終える前に、一瞬で囲まれた。胸を突き飛ばされ、髪を引っ張られ、床に倒れ込む。あとはさんざんだ。


「優人、マジで性格悪すぎ!」

「ちょっと頭がいいからって」

「あいつさえいなければ、最高のクラスなのに」

「消えてくんねえかな!」


 腹を蹴られ、ゲホッと咳き込んだ。——なんだよ。今、寄ってたかって俺をボコボコにしているおまえらは、性格が悪くないのかよ。


「こらっ! 何をしているんだ!」


 騒ぎを聞きつけた担任教師の怒鳴り声が響いた。クラスメイトたちが一斉に散っていく。

 俺はほっとした。殴られるのが辛かったわけじゃない。劣った連中と同じ空気を吸うこと自体が不快だった。


 〝優人(ゆうと)(ゆう)は、(すぐ)れているの(ゆう)よ〟

 父さんが家を捨ててから、母さんのしつけは厳しくなった。でも俺は母さんが正しいと思う。


 その日の帰り道、俺はクラスメイトに赤信号の横断歩道に突き飛ばされ、死んだ。

 迫りくるヘッドライトに照らされながら、最期に思ったのは——


 俺は悪くない。


 ・・・・・・・・・・


「うっ……俺は悪くない……」

「うんうん。優人(ユウト)くんは悪くないよ」


 うめきながら顔を上げると、そこは道路ではなかった。見知らぬ学校の教室。机に突っ伏す俺を、二十人ほどの生徒がのぞき込んでいる。みんな年上だ。高校生か? 


 視界がはっきりするなり、俺はぎょっとしてのけぞり、椅子ごとひっくり返った。

 赤、青、緑、ピンク、金に銀。うるさい色彩が飛び込んできて、目がチカチカした。すべて生徒たちの髪や瞳の色だ。服装もバラバラで現実離れしている。なんだこいつら。アニメのキャラクターかよ!


「あははっ! 優人ったら。派手に転んじゃって」


 一人の女子生徒が腹を抱えて笑った。目のやり場に困るほどのタンクトップにショートパンツ。外ハネショートの髪は、ミカンのようなオレンジ色だ。派手なのはおまえだろ。


「……まつり、笑いすぎ」


 男子生徒がつぶやく。黒髪に、黒の馬乗り(ばかま)。首からヘッドホンをかけ、スニーカーをはいている。和服の現代アレンジだろうか。どういうセンス? 涼しげな顔立ちが台無しだ。


「優人くん、大丈夫? 怖い夢でも見ていたの? 〝俺は悪くない〟って……」


 最初に声をかけてきた女子生徒だ。青みがかった長い銀髪。やわらかいレースのワンピース。耳は尖っていないが、エルフと言われても信じただろう。転がったままの俺に手を差し伸べる。


「安心して。優人くんが悪いわけないよ。だって、誰よりも優しいんだから」


 俺は立ち上がり、エルフの顔をまじまじと見つめる。瞳も青色だ。


「ここはコスプレ会場ですか?」


 大真面目にたずねると、教室中がどっと笑いに包まれた。なんだよ、バカにしやがって!

 笑っていないのは妖精だけだった。熱を測るように、俺の額に手を当てる。


「優人くん、疲れているのかも。保健室に行く?」

「いや、保健室ではどうにもならないくらいの事故にあったんだけれど」

「えっ、事故? いつ? どこで?」


 するとオレンジ髪の女子が割り込んだ。まだ大笑いしている。


心音(ココネ)は本当に冗談が通じないねっ。昼休み中、ずっと席で居眠りしていたのに、どうやって事故にあうのよ」


 まるで俺がクラスメイトかのような口ぶりだ。

 違和感を覚えながら、ふと自分の手を見下ろす。大きい。指が長く、骨ばっている。小学生の手じゃない。


「……は?」


 教室後方に鏡を見つけ、駆け寄り、息をのむ。鏡に映っていたのは、周りの連中と同じ、十代後半まで成長した俺だった。


 顔の造形は元のままだが、瞳は透き通った琥珀色に、髪はミルクティー色に変化。

 服装も違う。大嫌いだった小学校の制服ではない。白シャツに、髪とおそろいの色のカーディガン。清潔感にあふれ、いかにも感じの良い容姿だ。


 叫び声を上げるより早く、チャイムが鳴り響いた。生徒たちが一斉に席に戻る。俺も反射的に流れに乗った。心臓がドンドンと肋骨を叩いている。


 車にはねられて死んだ俺は、どこかおかしな世界に住む年上の俺とすり替わってしまったらしい。不思議なことに、年相応の知識や語彙力まで増えた気がする。


 お、落ち着け。まずは情報収集だ。ここがどういう場所なのか観察しろ。


 扉が開き、担任教師らしき大人が教室に入ってきた。寝癖のついた灰色の髪に、だらけたスーツ。ありえないことに、タバコをくわえている。ドン引きしながら見つめていると、目が合った。


「優人」


 けだるげに名前を呼ばれ、飛び上がる。


「号令は?」

「へ?」

「始業の号令」

「ほへっ……あ……起立、礼、着席」


 クラス全員が俺の合図に従う。ま、まさか、俺って——学級委員長? 照れるっ。

 授業が始まった。


「さて、午前の復習から始めますよ。これは常識ですが、人間の優劣は〝人間性〟によってつけられます」


 常識なんて知らないぞ。人間性? 性格のことか?


「人間性は、それぞれの細胞によって、生まれながらに決まっています。例えば、(シズカ)の人種は〝クール目・寡黙科〟。寡黙であればあるほど評価されます」


 俺の左隣の席、和服野郎だ。窓の外を見ていて、返事もしない。


「まつりの人種は〝パワフル目・おてんば科〟。おてんばであればあるほど評価されます」


 右隣の席、オレンジ髪の女子だ。勢いよく立ち上がる。


「ねー、ハルくん! 座学は飽きたよー。早く実戦に行きたいっ」

「ハルくんではなく、(ハルカ)先生です。ただし、おてんば科としては模範的な発言といえます」

「やった!」


 何、その競技。冗談みたいな褒め方だが、まつりは本気で喜び、飛びはねていた。


「そして優人」


 遥先生にまたもや名前を呼ばれ、肩がビクッと揺れる。


「優人は〝ヒーロー目・優しさ科〟。優しくあればあるほど評価されます」


 へえ。今のところ一番まともかも。——なんて分析している場合じゃない! 俺はたまらず、ズバッと挙手をした。


「つまり、英語や数学の勉強は重要ではないのですか?」

「必要ありません。人間は、何よりも人間性の勉強をするべきです」

「個性……いや、人間性が尖っていればいればいるほど、価値が高いということですか?」

「はい、そうですね」

「他人に合わせる必要はないということですか?」

「はい、そうですね」

「多数派ではなく、少数派である方が正しいと——?」

「優人。具合でも悪いのですか?」


 俺はがくがくと震えていた。恐怖ではない。歓喜だ。かつて感じたことがないほどの。


 前世の俺は、空気を読めなかったわけじゃない。読まなかったのだ。だってバカらしいから。優秀であることよりも、他と同じであることを優先するなんて。だからみんなに嫌われた。


優人(ゆうと)くんの〝(ゆう)〟は、〝(やさ)しい〟の〝(ゆう)〟だもんね」


 後ろの席から、くすりと笑う声。エルフ、もとい心音だ。


 俺は大きくガッツポーズをし、天に突き上げる。


「大当たり——!!!」


 この世界の価値観は真逆だ。俺こそが正解だ。しかも俺は〝優しさ科〟。適当に善行を積めばいいわけだろ。超簡単だ。神様、ありがとう。車にはねられたことは許してやる。


 この転生先、俺にぴったりだ!!!

●●この小説は読者参加型です●●

あなたは自分が何科だと思いますか?

何科の人物に登場してほしいですか?

感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。

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