第52話 「鬼神 修羅/明刀の後継者」
リアのワケありを知った鈴空。ララの救出を目標に据える。
しかし、新たな強敵の出現を龍じいから聞かされることとなる。
「今回の襲撃者は、女のヒューマンでおじゃる。おそらくは異世界人。そして、鬼血刀を持っていた」
「なんじゃと!?」
紗月が、珍しく慌てて大声を挙げた。
「ということは、まさか鬼族が動き出したのか?」
「うむ。そう考えるのが、妥当でおじゃるな」
鬼族?デミヒューマンか?
「なんだよ?鬼族ってヤバいのか?」
「主様、鬼族が動き出したということは、この世界の勢力図が変わる」
そんなに!?紗月の言葉に驚きもしたが、でも………
「鬼族ってデミヒューマンだろ?デミヒューマン大3亜にも入っていないじゃないか」
デミヒューマン大3亜は、天狗を筆頭に、人龍、ゴルゴーンだ。ゴルゴーンが死んだ今、勢力図は多少変わるかもしれないとは思っていたが、やっぱりその影響なのか?
「鬼族は、特別な種族だ。数も少数、国も持たぬ。じゃが、個々の強さで言えば、天狗をも凌ぐ。デミヒューマンで随一じゃ」
どうゆうことだ?そんなに強いなら、デミヒューマン大3亜に入っていてもおかしくないだろう。
「鬼族は、普段大人しい。それゆえに、無害。自分達から何かを仕掛けようという種族ではない。天狗や人龍、ゴルゴーンのように、国があり、民が多くいるわけでもない。だからデミヒューマン大3亜には入っていなのじゃ。ただ、鬼族が動き出したということは、現れたのじゃな?」
現れた?襲撃してきたやつのことか?でも女の人1人だけだろ?
「そうじゃ。修羅道の異世界人でおじゃる。既に、鬼血刀を持ち、わしを退けるほどの力を持っていたでおじゃる」
修羅道?ということは、
「鬼神 修羅………。か」
「ほう。まさか、お主が知っておるとは驚きでおじゃる」
「あぁ。常婆から聞いた」
確か、自分の強さを誇示して、世界中の人種を殺すかもっていう戦闘狂だ。超危険人物だ。
「龍じい、良く生きてたな………」
「それが、こんな状態になるまで必死に戦った者に対する言葉でおじゃるか?」
龍じいは笑いながら答え、そして続ける。
「やつは、鈴空、お主と戦いたいと言っておった。近いうちにお主たちは巡り合うでおじゃる」
俺は、戦いたくないぞ。そんな身勝手なやつは御免だ。龍じいでも敵わないやつなんて敵に回したくない。今度こそ命を落としかねない。
「なぁ、龍じい。それって俺に勝ち目あるのか?」
「正直わからないでおじゃる。やつには鬼族も付いておる。鬼族は、鬼血刀の使用者に服従し、共に戦う。今のままの新吉原では、ひとたまりもないでおじゃるな。じゃが、こちらにも同じく鈴空がおる。紗月もいる。そして余殃眼もある。どうにもならない敵ではないでおじゃる」
僕は、何もチートスキルないのだが。余殃眼に関しても今は使用不可なんだが。どうすんだよー。
「鈴空も含め、カイザ、ネメアを鍛えるでおじゃる。そして、もう1人、わしから推薦したい者がおるのじゃ」
龍じいからの推薦?
「誰だ?」
「癒華でおじゃる」
「え?癒華か?それなら、さっき俺直属のパーティーにヒーラーとして迎え入れたばかりだぞ」
「おぉ!そうでおじゃったか!なら話は早いでおじゃる。あやつは、才能がある」
「才能?」
「うむ。明刀『癒合』じゃ。フォス・グラムの使用していたベンケイの一振り。癒華なら使えそうでおじゃる」
明刀か。そういえば、龍じいから探すように依頼を受けていたっけ。でもまだ見つけられていないな。
「龍じい。すまない。その明刀なんだが、まだ………」
言い訳けさせてくれ。そんな刀探している余裕なかったんだ。
「明刀『癒合』探してきてくれて、ありがとうでおじゃる」
え?
「いや、だから」
「目が覚めたら、枕元に置いてあったでおじゃる。後ほど、リュアレとやらに聞いたら、一つ蛇頭が所有していたものじゃったそうだの。一つ蛇頭も医療に精通していたと聞いた。『癒合』は、治癒の刀でもある。そういう者の元に、巡る運命を持つ刀なんじゃろう」
まさか、ゴルゴーン国の宮殿を出るときに、常婆が一つ蛇頭の部屋に寄り道していたのは、この刀を持ち帰るためだったのか?あの婆さん………。どうして、食えない婆さんだ。
「常婆に礼を言っておくよ」
僕は、そう言い残し、龍じいの元を後にした。
「鈴空様!」
帰り際、リュアレが僕を引き留めた。
「どうかしたのか?」
「鈴空様に言われていた、医療者と技術者、それと資金の調達ができましたよ」
リュアレの仕事の早さに感服する。
「医療者に関しては、私の直属の医療チームになりますので、即戦力となるでしょう。技術者も腕に覚えのある優秀な者達です。資金は、1000000000Gほど集まりました。宮殿にあったものですが、ゴルゴーン国は既に新吉原です。使ってもらって差し支えないでしょう」
とんでもないな。これが国というものの力なのか………。
「ありがとう!助かるよ。では、早速だが、医療者と技術者に新吉原への出発の準備を整えて、宮殿に集合するように声を掛けてくれ。俺もすぐに宮殿へ向かう」
「承知しました。それと、鈴空様に1つお願いがあるのですが………」
(「ほらっ」)
「ちょっ、ちょっと姉様待って。まだ心の準備が………」
リュアレの後ろから、現れたのはメデューだった。なにやら、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
「鈴空!私も一緒に連れて行きない!あんた達弱いから、私が特別に守ってあげるわ」
どうやら、メデューは僕達と一緒に新吉原に行きたいらしい。しかし、相変わらず上から目線なヤツだ。
「鈴空様、すいません。礼儀の無いコで。気持ちを汲んでやってください」
リュアレは、メデューの頭に手をやり、頭を下げさせた。
「あぁ。問題ない。メデュー、よろしくな。ちゃんと俺を助けてくれよ」
「任せときなさい!私が行く以上、あんた達に後悔はさせないわ!」
リュアレは、頭を下げた。きっと、妹をよろしくお願いします、という意味だろう。リュアレの苦労を察するよ。この姉妹じゃ、リュアレがしっかりするわけだ。
「じゃ、メデュー荷物取ってきてくれ。すぐに宮殿へ移動する」
スキル『ポルタ―ド』
僕達が宮殿に到着すると、既に医療者、技術者達が待ち構えていた。
「皆、集まってくれてありがとう!早速だが、俺と一緒に新吉原へ来て、君たちの力を貸してくれ」
僕は、ポルタ―ドを使い、扉を開いた。
しかし、ちゃんと全員女性だな。ゴルゴーン国だから蛇のデミヒューマンばかりと思っていたが、人種は様々だし、目移りしちゃうな。
新吉原に到着した彼女たちには、今、新吉原で建造に取り掛かっている物について詳しく説明した。その後、適材適所で人員を割り振り、作業に入ってもらった。
3日後---
新吉原に、スパ、病院、コンビニ、デパートが出来上がっていた。
後は、仕事内容だな。必要物資は、ゴルゴーン国から調達できるもので賄えるだろう。僕は、シューレに頼み込み、スキル分岐器を改良して、ポルタ―ドを誰もが必要なときに、好きなだけ使用できるようにしてもらっていた。これで、新吉原とゴルゴーン国を瞬時に移動出来る。
こうして、新吉原は、改めて、国として動き始めた。
さて、そうなると、次に必要なのは、国を守るための武力もとい、軍事力の強化だ。龍じいも戻ってきたし、始めるとするか。課題は山住み。だが、着々と国としての形を成してきた新吉原を見て、僕は、やる気をみなぎらせた。
読んでいただきありがとうございましたm(__)m
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