第49話 「ゴルゴーン国最高戦力?/新吉原帰国」
ゴルゴーン国の有識者との会議に臨む鈴空。思惑通りに事を運ばせることができるのか?
久しぶりに新吉原へと帰国する鈴空達。だが、そこに国民の姿はなかった。
あるのは戦闘の跡と、敗北し倒れている龍じいの姿だった。
僕は今、ゴルゴーン国の有識者たちと会議中………
のはずである。
「リュアレ、これは一体?」
僕の目の前にいたのは、レラージュ3姉妹だった。
「ゴルゴーン国は武力国家です。有識者と言いましても、実際国の運営を任されていたのは、一つ蛇頭のタイパン兄様です。彼は政治だけでなく、医療にも長けており、ゴルゴーン様の側近でありながら宰相でもありました。そしてその直属の弟子に当たるのが、我々レラージュ3姉妹です。ですので、現状、この国の最高武力兼知識者となると、我々ということになります」
そうだったのか。なんだか、拍子抜けしたというか、ラッキーだったというか、微妙な気持ちだ。
「じゃあ、一先ず会議始めるぞー」
一気に緊張感の解けた僕は、かるーい気持ちで話しを始めた。
「まず知りたいのは、国民の数、財政、産業水準あたりかな」
先程、宮殿に集まっていた国民だけでも優に100人は下らないだろう。しかも全員女性。それはそれで嬉しい。
「しょうがない。何も知らないあんたに私が教えてあげる!」
メデューが得意げにしゃしゃり出てきた。
「国民の数はざっと1000人程度よ。財政は、国民からの租税で賄っていたわ。まぁ、不自由ない生活が出来ているし、豊かなほうだと思うけど。産業水準については、説明するよりあとで国の中を見てもらったほうが早いわね」
メデューが意外と国のことを知っていて驚いた。それが、今の素直な感想である。ただ、端的過ぎて表面上しか理解できなかった………。
「鈴空様。こちらに書面をご用意致しましたので、目を通してみてください」
リュアレが差し出した書面には、国の内情に関わることが事細かに記載されていた。
そうそう。こうゆうの!これを僕は求めていたんだよ。さすが、リュアレだな。頼りになる。
「成る程。ん?これは………」
僕は、書面上のある一点に興味を惹かれた。それは、この国の武力構図である。
「リュアレ。この国の3大武力ってところなんだが、これって単純に個人の強さを表しているんだよな?」
「はい。それは、一つ蛇頭と二つ蛇頭が生きていた時の資料ですので、彼らも加わっていますが」
彼らが加わっていたとしても、これはどうゆうことなんだ?この書面で通りであれば、一つ蛇頭と二つ蛇頭がいない現在では、国の武力トップは………
「ステーノです。彼女が、ゴルゴーン国の最高戦力となります」
「え?マジか!?あの眠そうにしてたコだろ?リュアレじゃないのか?」
「はい。純粋な戦闘力だけならば、ステーノには敵いません」
人は見かけによらないものだ。まぁ良い。ステーノは自分から国益に絡んで来ようとするような雰囲気のコではないし、一理あっても無害だろう。
「大体のことは、この書面を読んで理解した。本題に入らせてもらっても?」
レラージュ3姉妹は一様に頷く。
「俺達は、これから一旦新吉原へ帰国する。その間にしてほしいことが3つ。1つ、医療者と技術者を集めること。2つ、資金を融通してくれ。3つ、国の防衛の為に、ステーノを頭として国王直属の精鋭を集めた守備隊を編成してくれ。以上だ」
僕のほしいものは、領土、国民、金、武力、技術。シンプルだ。これで、棚から牡丹餅的に全部手に入った。あとは、応用していくだ。
1時間後、僕は新吉原帰国のため、荷物をまとめて宮殿の入り口来ていた。
「リア、西華、常婆。準備はいいか?」
3人は頷く。レラージュ3姉妹も見送りに来てくれていた。僕達は、姉妹にゴルゴーン国を任せ、ポルタ―ドを使用し、新吉原へと引き返した。
僕達は、ポルタ―ドの扉を開け、一週間ぶりに新吉原の土を踏んだ。だが、そこには1人の国民の姿もなかった………。
その時!
「り、龍じい様!?」
西華が叫んだ。正門は無残にも破壊され、その傍で、龍じいが倒れていた。近くには、魔法砲台を放ったであろう跡が数か所と、激しい戦闘を思わせる刀傷が壁や地面に無数に刻まれていた。
「龍じい様!」
リアと西華が龍じいに声を掛け、身体をゆする。息はかろうじてしているようだが、返答がない。
「2人とも、すぐに龍じいをリュアレの元へ連れて行ってくれ!」
スキル『ポルタ―ド』
僕は今一度ポルタ―ドを使用し、ゴルゴーン国への扉を開く。
「リュアレに会って治療を頼んでくれ!俺は、他の国民の安否を確認する。行け!」
リアと西華は龍じいの両脇を支え、急いでゴルゴーン国へ引き返して行った。それを見届けた後、僕はデパートに向け常婆とともに歩き始めた。道中、壁や地面に刀傷はあるものの、死体や血がないことを確認し、いくらか安堵した。
「常婆。この建物の地下にシェルターがある。僕の作戦通り動いていてくれたのなら、そこに皆がいるはずだ。行こう」
僕は、地下へとつながる階段を足早に駆け下りた。
「みんな、無事か!?」
僕は、シェルター用に作られた重厚な扉を開き、中に入ると同時に、安否を確認する。
「あっ!鈴空!」
ルリアが抱き付いてきた。
(国民)
「鈴空様」
「ご無事で良かった」
国民達も僕の周りへ集まってきた。
「みんな無事で何よりだ!龍じいが倒れていて、国の中も戦闘の爪痕があったから、内心ひやひやしたぞ」
29人。国民は全員無事のようだ。龍じいとシューレが指揮をとってくれたおかげか。
「シューレ。ご苦労だったな。よくやってくれた」
「う、うん。と言っても、僕はこの穴蔵に隠れて、指示を出していただけだけどね」
龍じいが倒れてた時点で、僕が考えていた中でも最悪の状況になったのだろうが、それでも死者が0人っていうのは素晴らしい。
「カイザ、ネメア。お前達も良くやってくれたな。礼を言うぞ」
カイザとネメアは、僕のところまで歩み寄ると、泣きながら僕に抱き付いてきた。
「鈴空さまぁ。僕達、なんの役にも立たなくて………」
「そ、そうなんです。龍じい様は、私達を庇って………」
やはりそうか。龍じい………。
「2人とも大丈夫だ。龍じいは今、ゴルゴーン国で治療してもらっている。それにお前達は生きていてくれた。俺はそれだけでうれしいよ。ありがとう」
2人は龍じいの安否を知り、緊張が完全に途切れたのか、その場に泣き崩れた。
「鈴空さまぁ。僕、僕………もっと強くなりたい」
「私もです。もう何も出来ずに逃げるのは嫌」
悔しいだろうな。まだこの間、剣を習い始めたばかりだけど、実践を経験し、何も出来ず、龍じいに助けられた。僕からは国の精鋭部隊と取り立てられ、期待に応えようと必死だっただろう。
「俺も今回の旅で、自分の弱さを露呈したよ。2人と一緒だ。だから、一緒に強くなって行こう。これから国も大きくなる。やがては、世界の頂点に君臨する国だ。守らなければならない人達は増えるだろう。強くならなきゃならない。そのために一緒に力をつけよう」
2人は涙を流しながら、静かに頷いた。
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