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ワケあって、異世界審査通っちゃいました  作者: 蜂月 皐
第4章「ゴルゴーン編」
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第43話 「捨て身の攻撃」

飢餓 凪翔の圧倒的なまでの戦闘力に気圧される鈴空達。

援軍として現れたリュアレの作戦も飢餓には届かなかった。

追い詰められる鈴空達………

リアは、床に横になって意識を失っているメデューの前に出て、両腕を左右に開く。それは、飢餓に対し、メデューを守るという意思表示。


「腹が減って減ってしょーがねーんだ。もう抵抗するなよ」

飢餓の圧倒的なまでの力の前に、彼の言葉は、リアに死刑宣告のような印象を与える。それでも彼女はメデューを守るため、体勢を変えず、その場を離れようとはしない。


「ったく、不適合者共が歯向かってんじゃねーよ。反吐が出るぜ」

飢餓は、面倒臭そうにリアの右腕を掴み、持ち上げる。


「ん?お前………、適合者か!?何故お前のような弱そうなヤツが俺に適合できる?」


飢餓の動きが一瞬止まる。そして、リアの顔を覗き込んだ飢餓は、嬉しそうに笑みを浮かべた。


「お前のその眼、余殃眼かッ!わはははッ!こいつは驚いた!どおりで適合するわけだぜ!」

余殃眼だと適合する?どうゆうことだ?


「あ、あなたには関係ありません。腕を離して!」

リアは、必死に抵抗する。


「暴れんじゃねー!濁って光を失っているようだが、それは確かに余殃眼だ。おい、お前、名前は?」

今度は、無言で抵抗するリア。


「話さねーなら、まずは後ろの蛇の女を焼き殺すぞ。おらッ!名前を言え!」


「リア………」

「フルネームは?」

「あ、アンテローグ………」

それを聞いた、飢餓は、高笑いをした。


「リア、お前は、『ララ』を知っているな?」

その名前を聞いた途端、リアの表情が明らかに強張った。


「何故あなたが、その名を知っているのですか?」

リアは、冷静に問いかけたつもりだろうが、声は震え、動揺は隠せていなかった。


「やはりビンゴかッ!ララの血縁者かッ!そう言うことなら話は別だ。お前は連れて行く」

なっ!どうゆうことだ?ララって誰だ?いや、今重要なのは、そこじゃない。理由はどうあれ、リアは、渡せない。僕は、床に投げ捨てられた紗月を手に取る。


「主様」

紗月が話しかけてきた。

「今、わしには、石曜眼のスキルが付与されておる」

え?

「飢餓がお前を鞘から抜いたときは、付与の力は感じなかったぞ。刀身も錆びたままだった」

「それは、ヤツがワケあり装備を使用できないからじゃ。それにわしは、主様の剣。主様以外には、刀身を変えぬ」

成る程。あいつは、まんまと騙されたわけか。紗月のヤツやるじゃん!忠実だわ。


「よし。そうゆう事なら、この付与されたスキルで飢餓を叩き切る!」

「主様よ。『唐花』は使うな。リアにも怪我を負わせてしまうぞ」

唐花は、居合いの抜刀術。飢餓に掴まれているリアごと切ってしまうことになる。となると………。


「紗月。俺は、唐花以外の技は、まだ完全にマスター出来ていない。力を貸してくれ」

紗月と僕は、一蓮托生(いちれんたくしょう)。僕が出来ない部分は、彼女に補ってもらう他、今は手段がない。

「主様の身体への負担は大きいが良いかの?」

「問題ない。リアを(さら)われるわけにはいかない」

「承知」


僕は、紗月を抜き、構えた。飢餓に気付かれないように、背後に忍び寄る。背後からの攻撃は卑怯?いやいや。飢餓の戦闘力のがチートだろう。


「いくぞ!紗月!」


花龍式『(ひいらぎ)・石曜』

「悪鬼を遠ざけろー!!!」


紗月の刀身は光を放ち、相手の目を(くら)ませる。それは、同時に自分の視界も奪う。まだ、この技をマスター出来ていない僕には、光の中で剣を振るうことは出来ない。そして石曜の剣。それはずっしりと重く、僕の身体の自由を奪おうとする。だが、そこからは紗月の出番だ。紗月のスキルは、自分のテリトリー内であれば、生物を感知できる。あとは、紗月に身を任せ、無理矢理に僕の身体を動かしてもらう。


「いっけぇ!」

だが、切りかかる瞬間、薄っすらと飢餓が視界に入ったかと思うと、膝を曲げ上空へ飛び上がろうとするのか見えた。


「さっきから、チカチカチカチカ眩しいんだよ!」


マズい!

飢餓のあのスピードで上空へ飛ばれたら、斬撃はおろか、光の範囲内からも脱出されてしまう。紗月に身体を無理矢理動かしてもらっている僕は、身体能力の限界を超えて動いている。攻撃を繰り出したあとは、動けなくなるだろう。だが、もう止まれない………。飢餓の不敵な笑い声が微かに聞こえ、僕は、この攻撃の失敗を悔やむ。しかし、その時、


「ふざけんじゃ、ないわよ………。ゴルゴーン様や(かしら)たちを殺られて、挙句の果てに、姉様まで………。ここで黙ってられるわけないじゃないッ!」


「ヤツを上空へ飛ばすなー!!ヴァナライアー!!!」

火傷を負い、意識を失っていたメデューが、勝負所の匂いを嗅ぎつけたのか、覚醒する。彼女の叫びに、大蛇が呼応し、飢餓の足に絡みついた。


「なにッ!この蛇女、まだ動けたのか!」

次の瞬間、僕の刃は、リアの首を掴む、飢餓の腕を切り落とした。


「ぬッグァァァ!俺の手が、手が………」

切り落とされた飢餓の腕は、床を転がり、切り口から石化が始まった。


「冗談じゃねーぞ!俺は、ただ蛇を狩りに来ただけなのに、こんなところで片腕を失い、石化まで………」

飢餓の石化は、止まることなく、既に肩まで進行していた。


「クソッ!これじゃ割に合わねー。一旦引くぞ、龍のおっさん!」

龍のおっさん!?ま、まさか仲間がいたのか?気付かなかったぞ。


突如、飢餓の目の前にローブを被ったデミヒューマンが現れた。外見は、龍じいに類似している。龍じいと同じ種族か?彼は、一つ蛇頭の遺体を背負い、飢餓とともに姿を消した。

読んでいただきありがとうございました!

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