第43話 「捨て身の攻撃」
飢餓 凪翔の圧倒的なまでの戦闘力に気圧される鈴空達。
援軍として現れたリュアレの作戦も飢餓には届かなかった。
追い詰められる鈴空達………
リアは、床に横になって意識を失っているメデューの前に出て、両腕を左右に開く。それは、飢餓に対し、メデューを守るという意思表示。
「腹が減って減ってしょーがねーんだ。もう抵抗するなよ」
飢餓の圧倒的なまでの力の前に、彼の言葉は、リアに死刑宣告のような印象を与える。それでも彼女はメデューを守るため、体勢を変えず、その場を離れようとはしない。
「ったく、不適合者共が歯向かってんじゃねーよ。反吐が出るぜ」
飢餓は、面倒臭そうにリアの右腕を掴み、持ち上げる。
「ん?お前………、適合者か!?何故お前のような弱そうなヤツが俺に適合できる?」
飢餓の動きが一瞬止まる。そして、リアの顔を覗き込んだ飢餓は、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「お前のその眼、余殃眼かッ!わはははッ!こいつは驚いた!どおりで適合するわけだぜ!」
余殃眼だと適合する?どうゆうことだ?
「あ、あなたには関係ありません。腕を離して!」
リアは、必死に抵抗する。
「暴れんじゃねー!濁って光を失っているようだが、それは確かに余殃眼だ。おい、お前、名前は?」
今度は、無言で抵抗するリア。
「話さねーなら、まずは後ろの蛇の女を焼き殺すぞ。おらッ!名前を言え!」
「リア………」
「フルネームは?」
「あ、アンテローグ………」
それを聞いた、飢餓は、高笑いをした。
「リア、お前は、『ララ』を知っているな?」
その名前を聞いた途端、リアの表情が明らかに強張った。
「何故あなたが、その名を知っているのですか?」
リアは、冷静に問いかけたつもりだろうが、声は震え、動揺は隠せていなかった。
「やはりビンゴかッ!ララの血縁者かッ!そう言うことなら話は別だ。お前は連れて行く」
なっ!どうゆうことだ?ララって誰だ?いや、今重要なのは、そこじゃない。理由はどうあれ、リアは、渡せない。僕は、床に投げ捨てられた紗月を手に取る。
「主様」
紗月が話しかけてきた。
「今、わしには、石曜眼のスキルが付与されておる」
え?
「飢餓がお前を鞘から抜いたときは、付与の力は感じなかったぞ。刀身も錆びたままだった」
「それは、ヤツがワケあり装備を使用できないからじゃ。それにわしは、主様の剣。主様以外には、刀身を変えぬ」
成る程。あいつは、まんまと騙されたわけか。紗月のヤツやるじゃん!忠実だわ。
「よし。そうゆう事なら、この付与されたスキルで飢餓を叩き切る!」
「主様よ。『唐花』は使うな。リアにも怪我を負わせてしまうぞ」
唐花は、居合いの抜刀術。飢餓に掴まれているリアごと切ってしまうことになる。となると………。
「紗月。俺は、唐花以外の技は、まだ完全にマスター出来ていない。力を貸してくれ」
紗月と僕は、一蓮托生。僕が出来ない部分は、彼女に補ってもらう他、今は手段がない。
「主様の身体への負担は大きいが良いかの?」
「問題ない。リアを拐われるわけにはいかない」
「承知」
僕は、紗月を抜き、構えた。飢餓に気付かれないように、背後に忍び寄る。背後からの攻撃は卑怯?いやいや。飢餓の戦闘力のがチートだろう。
「いくぞ!紗月!」
花龍式『柊・石曜』
「悪鬼を遠ざけろー!!!」
紗月の刀身は光を放ち、相手の目を眩ませる。それは、同時に自分の視界も奪う。まだ、この技をマスター出来ていない僕には、光の中で剣を振るうことは出来ない。そして石曜の剣。それはずっしりと重く、僕の身体の自由を奪おうとする。だが、そこからは紗月の出番だ。紗月のスキルは、自分のテリトリー内であれば、生物を感知できる。あとは、紗月に身を任せ、無理矢理に僕の身体を動かしてもらう。
「いっけぇ!」
だが、切りかかる瞬間、薄っすらと飢餓が視界に入ったかと思うと、膝を曲げ上空へ飛び上がろうとするのか見えた。
「さっきから、チカチカチカチカ眩しいんだよ!」
マズい!
飢餓のあのスピードで上空へ飛ばれたら、斬撃はおろか、光の範囲内からも脱出されてしまう。紗月に身体を無理矢理動かしてもらっている僕は、身体能力の限界を超えて動いている。攻撃を繰り出したあとは、動けなくなるだろう。だが、もう止まれない………。飢餓の不敵な笑い声が微かに聞こえ、僕は、この攻撃の失敗を悔やむ。しかし、その時、
「ふざけんじゃ、ないわよ………。ゴルゴーン様や頭たちを殺られて、挙句の果てに、姉様まで………。ここで黙ってられるわけないじゃないッ!」
「ヤツを上空へ飛ばすなー!!ヴァナライアー!!!」
火傷を負い、意識を失っていたメデューが、勝負所の匂いを嗅ぎつけたのか、覚醒する。彼女の叫びに、大蛇が呼応し、飢餓の足に絡みついた。
「なにッ!この蛇女、まだ動けたのか!」
次の瞬間、僕の刃は、リアの首を掴む、飢餓の腕を切り落とした。
「ぬッグァァァ!俺の手が、手が………」
切り落とされた飢餓の腕は、床を転がり、切り口から石化が始まった。
「冗談じゃねーぞ!俺は、ただ蛇を狩りに来ただけなのに、こんなところで片腕を失い、石化まで………」
飢餓の石化は、止まることなく、既に肩まで進行していた。
「クソッ!これじゃ割に合わねー。一旦引くぞ、龍のおっさん!」
龍のおっさん!?ま、まさか仲間がいたのか?気付かなかったぞ。
突如、飢餓の目の前にローブを被ったデミヒューマンが現れた。外見は、龍じいに類似している。龍じいと同じ種族か?彼は、一つ蛇頭の遺体を背負い、飢餓とともに姿を消した。
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