第44話 「休息」
飢餓 凪翔との戦闘が終わり、帰路に付く鈴空達。
なんとか、常婆救出という目的は果たしが、全員満身創痍だった。
「リア、動けるか?」
「はい。私は負傷していませんので。ですが、メデューとリュアレは動けそうにありませんね。鈴空さんは動けそうですか?」
さっきの技の反動で、体中に痛みが走るが、ゆっくりとなら動けそうだ。
「あぁ。なんとかな」
僕は、紗月を鞘に納め、杖として代用する。
「西華を呼んできますので、鈴空さんは少し休んでいてください」
リアは、足早に蛇王の間を出て行った。
僕は、ホッと一息付き、床に寝転がった。見上げた天井は、真っ暗でまた何か落ちてきそうな雰囲気さえ感じる。
「なぁ、紗月。俺、頭がこんがらがってきたんだが、どうしよ?」
「そうじゃの。ゴルゴーンの領地に入ってから2日。とても2日とは思えないくらいに濃い時間じゃったの」
この2日、命がけの戦いを連日繰り広げ、傷付き、なんとか目的は達成した。だが、それとは別に、また新たな問題が発生した。しかし、今は体の痛みと疲れで思考することすら苦痛だ。
「鈴空さん。西華を連れてきました。常婆も意識を取り戻しています」
リアに連れられ、西華と常婆が蛇王の間に現れた。
「鈴空。今回は助かったわい。礼を言うぞ」
常婆は無傷のようだな。婆さん1人助けるのに、ここまで苦労するとは思わなかったけど、リアが嬉しそうで何よりだ。
「西華ご苦労だったな。ひとまず、リュアレの家まで行くぞ」
僕は、リュアレを背負い、リアと西華はメデューに肩を貸す。怒楽は、申し訳けないが、ここに置いていく他ないな。デカすぎて運べん。
僕達は、来た道を逆走する。
「おっ!そうじゃった、そうじゃった。鈴空、少し寄りたいところがあるのじゃ」
婆さん。ここは一応敵地だぞ。しかもみんな疲れ切っている。
「常婆。今の状況わかってるよな?そんなもんあとにしてくれ」
「すぐ、終わる。面白い剣を見つけたんでな」
面白い剣?人の言葉を話せる面白い剣なら間に合っているが。
常婆は、一つ蛇頭の部屋に戻り、刀を持って出てきた。
「それが、面白い剣なのか?つーか、常婆。それ泥棒だぞ。人んちのもの勝手に持ち出して良いのかよ」
「気にするな。戦利品と思えばいいじゃろ」
さすが、商売人だ。タダではおきんな。
そうこうしている間に、僕達は、順調に、来た道を引き返し、水路から宮殿の外へ出ていた。
「透明化のローブには全員入りきらないし、人目に付くと面倒だ。ポルタ―ドでいっきにリュアレの家まで行くぞ」
そうゆうと、僕は、例のごとく手首にタオルを巻いた。
魔法「ポルタ―ド」
画して僕達は、リュアレの屋敷まで無事たどり付いた。屋敷に戻ると、執事のゼベッタが待ち構えていた。彼女は手際良く、メイド達に指示を出し、僕達の治療をしてくれた。
次の日の朝。僕は、ベッドの中で目を覚ました。窓から差し込む日差しがなんとも心地良い。
「いつの間に寝たんだ?記憶がない。よっぽど疲れてたんだな。それにしても、この抱き枕、温かくて、フワフワしてて、気持ち良いなぁ。お日様の匂いがする」
「きゃっ」
「ん?なんだ?今誰かの声が聞こえた気がしたが………。気のせいか」
「あっ。」
「ん?」
「きゃははは」
「いやッ!いるー!誰だ!どこにいる!」
僕は、飛び起きた。だが、部屋の中には、僕以外誰もいない。確かに誰かの笑い声が聞こえたのに………。おかしいな。僕は、再び横になり、抱き枕に抱き付く。
「きゃははは。鈴空様、こしょばいですよぉ」
「わぁ!西華かッ?どこにいるんだ!?」
「ここですぅ」
突如、抱き枕が動き出した。僕が抱き枕だと思っていたものは、西華の尻尾だった。でも、西華がここにいるってことはまさか昨晩、一緒に寝たのか!?
「せ、西華。なんでお前が、ここにいる?」
僕は、同様を隠しつつ国王としての威厳を持って、西華に尋ねる。
「そんな、野暮なこと聞かんといてください」
何故か西華は顔を赤らめて恥ずかしそうだ。
おいー!なんだその反応はー!いや待て落ち着け鈴空。お前は昨日、疲れ果てて眠っていただけだ。ただそれだけだ。
「西華。質問を変えるぞ。ここで何をしている?お前の部屋は別にあるだろう?」
自分を信じろ!僕は、そんなに積極的で勇気のある人間じゃないはずだ!
「今朝、鈴空様を起こしに来たんですが、なんやうなされておられたんで、声をお掛けしようと近付いたら、急にうちの大事なとこ触ってきよったんです。せやけど、鈴空様ならええかと思い、そのまま起きるまで待っていたら、うちもいつの間にか寝てしまってたちゅうわけです」
なんだ。そうゆうことか。良かった。どうやら一線は超えてないみたいだな。あ、いや、ちょっと待てよ。
「西華の大事なところって、まさか、胸、とか?」
セクハラじゃねーか!完全にアウトだ。上司が、部下にセクハラ………。いや、これはパワハラか?どっちだかわからないが、アウトなのは確かだー。
「うち、尻尾弱いねん」
あーーー。
そっちね。うん。そうだと思った。さっきまでの僕の絶望感を返してくれー!
「はぁ、起きるとするか………」
僕は、未だに、魔法使いへの道を猛進中である。
朝食を摂りに、食堂へ行くとリアとステーノ、リュアレの姿があった。メデューはさすがに、まだか。一番重症だったからな。
「鈴空。この度は、本当にありがとうございました。まさか、あんなことになっていたなんて………。色々とご迷惑をお掛けしましたね」
食堂に入るや否や、リュアレが僕に謝辞を述べた。
「いや、こっちこそありがとう。途中でリュアレが救援に来てくれなかったら、俺達は今頃ここにはいなかった」
ゴルゴーン国のいざこざに巻き込まれたのは事実だが、それは結果論だ。僕達の目的であるところの常婆救出は叶った。リュアレの救援は、本当に助かったし、最後の決め手にもなった。お礼を言いたいのはこっちだ。
「リア。常婆はどうだ?」
僕は、ひとまず席に座り、コーヒーを一口飲んでから、ここにいない常婆について尋ねた。
「はい。おかげ様で、朝から元気です。朝日が昇ると同時に起きて、お休み中だった商売を再開しています」
とんでもない婆さんだな。タフというか、図太いというか。歳をとると、ちょっとやそっとのことじゃ動じないっていうが、あれは本当だな。
「鈴空さん。常婆が鈴空さんに話があると言ってました。食後にわたしの部屋に寄っていただけますか?」
「あぁ」
こっちも常婆には、聞きたいことがたくさんある。それに、今回の借りはデカいからな。新吉原の資金調達に一役買ってもらうとするか。
僕は、食事を摂り終わり、リアの部屋へと向かった。
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