第41話 「天井からの落とし者」
ついに常婆を発見した鈴空達。
だが、リュアレとの約束を果たすため、リアが動く。
リアを守るため、鈴空は一つ蛇頭とゴルゴーンの行方を追う。
「ここが、一つ蛇頭、『毒蛇のタイパン』の部屋よ」
先程僕達がいた、両端に扉の付いた通路を抜け、階段を1つ上がったところにその部屋はあった。装飾豊で、重厚そうな扉が、いかにもこの国最強の守護者の部屋という雰囲気を漂わせていた。
「一応、皆、戦闘態勢を整えておいてくれ」
なにか嫌な予感する。空気が重い。息苦しい。心拍が上がり、喉が渇く。それでも、立ち止まっているほど僕は、臆病者ではない。ここまで来たのだ。あとは成るように成るだけ。僕は、深呼吸をし、扉に手を掛けた。
ゴゴゴっ(扉が開く音)
扉が開き、部屋の中が露わになった。全員が戦闘態勢を維持している。
「常婆ー!!!」
突如、リアが叫んだ。部屋の中には、椅子に括り付けられた常婆がいた。僕達は常婆に駆け寄る。
返事はしないが、息はしている。外見上、怪我もしてないようだ。リアは膝を付き、常婆を縛っているロープを切り、拘束を解く。僕的には、もう目的の常婆は見つけたのだから、このまま引き上げても良いくらいだ。
「常婆、ごめんなさい。私達まだやらなければならないことがあります。もう少しだけここで待っていてください」
リアは、立ち上がり扉の方を向いた。常婆の身を一番に案じていたリアがそう言うなら、僕達がここで帰るわけにもいかないか。それにしても、折角見つけた常婆をここで1人残していくのは気が引けるな。
「西華。すまないが、ここで常婆の面倒を見ていてくれないか?」
「お安い御用です」
あとは、一つ蛇頭の安否確認をするのと、謎のヒューマンについての情報だな。あ、あとゴルゴーンもだな。
「リア、メデュー、怒楽。先へ進もう。部屋にいなかったということは、ゴルゴーンのところか?」
「あんた達の目的は、達成されたでしょ?もう帰ってもいいのよ」
メデューは、僕達を付き放そうとするような目で訴えてきた。
「まぁ一応、リュアレとも約束したしな。ここまで来たら、最後まで付き合ってやるよ」
僕は、善人じゃない。義に厚い人間でもない。普段なら、ここで帰っていてもおかしくない人種だ。誰だって自分の命は大事だろう。リュアレと約束したとはいえ、魔法やスキルが使えないこの状況下で、これ以上、ここに長居するのは、どう考えたって得策ではない。だが、それでも僕が、詭弁を発したのは、結局のところ『リアを守るため』という使命感に後押しされた結果だ。先のレラージュ3姉妹との闘いのときに助けられたからではない。僕の野望のため、ケモ耳は、リアは放っておくことはできない。
「すまないな。となると、あとは『蛇王の間』だ」
「鈴空良いやつー!頼むぞー!」
怒楽の怒り顔から、感謝の言葉が出るとは、いささか不気味な心地だ。とはいえ、怒楽が居てくれていることは戦力的にありがたい。方向性を一致させた僕達は、蛇王の間へ向け、一つ蛇頭の部屋をあとにした。
「ついた!ここよ!この扉の向こうが、ゴルゴーン様のいらっしゃる、蛇王の間よ」
さっきの一つ蛇頭の部屋にあった扉の3倍はあるだろう。装飾もド派手だ。
「まずは、私が入ろう」
「よーし!お前達付いてこーい!」
怒楽が先陣を切って蛇王の間へと足を踏み入れた。僕達も彼に続く。蛇王の間は、縦にも横にもとにかく広く、空気が冷たい。ひんやりとしている。その1番奥に王座があった。だが………
「だ、誰もいないのか?」
注意してあたりを見渡すが人影は見当たらない。
「もぉー!一体なんなのよー!」
痺れを切らしたメデューが癇癪を起したその時!
ドチャッ!
薄暗い天井から何か大きな物が落ちてきた。僕達は、天井からの落とし物を確認するために近付く。
「に、逃げろ………」
どうやら生き物のようだ。だが、もはや虫の息だ。
「タイパン兄!」「「タイパン様!」」
二人の蛇のデミヒューマンが叫ぶ。これが、一つ蛇頭?既に血まみれで息絶えそうなんだが。一つ蛇頭は、この国最強の守護者だよな。それが、この有様ってことは、彼以上の者がここにいるのか?おいおい。勘弁してくれー!そんなの無理ゲーだろー!
「メデューと、怒楽か……。ゴルゴーン様は死んだ。お前たちは直ぐにここから退却しろ。国民を守れ……」
一つ蛇頭、タイパンは息を引き取った。
「に、逃げるぞ」
怒楽が、怒りに震える声で指示を出す。その傍らで、恐怖に怯え、状況に絶望しているのはメデューだ。
「タイパン兄……。ゴルゴーン様が死、んだ?なにそれ。わけわかんないよー!」
ドーーーン!!!
また天井から何かが落ちてきた。しかし、今回は、一つ蛇頭の時の落下音とは明らかに違い、上手く着地したような音を発した。床から立ち昇る土埃の中、僕達のほうへ歩みを進めてくる者がいる。僕達は、態勢を立て直す。
「お前達は何者だ?俺の食事に手を出すなぁ」
まだ、土埃の中にある人影から、飢えたような渇きに満ちた枯れた声が聞こえてきた。その声は、その場に存在する全てのものに恐怖を与え、同時に動けなくさせた。本当の恐怖を目の当たりにした者の末路は、ただその場に静止する。純粋で単純な人の心理。身体が言うことを聞かない。僕達はまるで、時が止まったかのように、立ち尽くし、土埃の中の人影を注視することしかできなかった。
読んでいただきありがとうございました。
是非、感想、ブックマークをお願いします^^




