第40話 「二つ蛇頭」
メデューの手引きで、ゴルゴーン宮殿に潜入した鈴空達。
魔法やスキルを封じ込められ、穴だらけの潜入を余技なくされる。
敵との遭遇を危惧する鈴空達だったが……。
「ちょっとー!あんた達大丈夫なのー?一体どこにいるのよー!」
メデューのヤツ、間違った道案内しやがったな。ここは明らかにハズレの部屋じゃねーか!
「メデュー。お前に言われた通り、廊下に出て、すぐ右手の部屋に入ったら、首が二つある蛇のデミヒューマンの部屋だったんだが………」
なんで、いきなりこんなピンチに見舞われなくちゃいけないんだ。しかも、こいつの雰囲気………。相当手強そうだぞ。
「双頭………。あ、あんた達、それ左の扉よ。方向間違えてるんじゃないわよー!バカじゃないの!」
いや、俺達は確かに床の穴を出て、すぐ右手の部屋に………。
「おいメデュー。右手って、お前から見た右か?もしかして俺達から見たら左だったんじゃないのか?」
「………」
やったな。メデューのやつ完全にやりやがった。
しかし、とりあえず今は目の前の敵をどうにかしないとか。
「あー、ゴホン!お、俺は鈴空。後ろの2人は俺の仲間だ」
「鈴空………。お前の懐にいる蛇………。それよこせ」
「蛇よこせー!蛇よこせー!断んじゃねーぞ!さっさと渡せー!」
二つの頭が、交互に話す。こいつメデューの連絡用の蛇がほしいのか。そうだ。こいつで取引きできないかな。
「渡しても良いが、その前に、お前の名前も教えてくれないか?」
「………」
「怒楽」
「そうか。怒楽。お前、この蛇がほしいのか?じゃあこいつ渡したら、俺達を見逃してくれ」
取引きだ。いや、取引きにもなってないか。もし、怒楽が本気で僕達を襲ってきたら、いとも容易く、懐の蛇を奪えるだろうから。それくらいの威圧感をヤツからは感じる。だが、この場を平和的に、誰も傷付くことなく、やり過ごすには、コレが最良の策だろう。
「わかった」
「しょーがねーな!蛇、蛇ー!」
いいのかッ!こいつはラッキー!メデューの蛇だし、あいつに責任を押し付けよう。
二つの首の上には、それぞれ違った顔が付いており、違った反応はするが、同じ意見を言ってくる。一方は、怒ったような顔。もう一方は、ケラケラと笑いながら楽し気な顔だ。僕は、蛇を手渡した。すると、ガチャっという音とともに、部屋の扉が開いた。扉の前には、メデューが顔を赤くし、頬を膨らませて待ち構えていた。
「あんた達、私の大切な蛇を、あいつに渡したわね。私の許可なしに、あんなヤツにぃー」
「お前が、間違った部屋を指示したからだろう。それくらいの責任は取ってくれ」
メデューは悔しいそうだ。だが、僕達は、魔法もスキルも使えず、ほぼ丸腰状態だ。危うく、命を落としていた可能性だって否定できない。
「メデュー」
「メデューだ!メデューだ!」
怒楽がメデューに気付いた。
「ぬ、怒楽。ひ、久しぶりね。あの、その蛇、私のだから返してほしいなぁ………なんて」
なんだ?メデューのやつ、僕達に対する態度とは明らかに違うな。これがデレなのか!?
「メデュー、お前、こいつらを手引きしたな」
「手引きー、手引きー!いけないんだー!」
「ち、違うのよ。怒楽。これには色々と理由があって」
焦る、メデュー。これはデレではないな。ただのビビりだ。
「おい、メデュー。こいつお前の知り合いか?一体何者なんだ?」
まさか、こいつが一つ蛇頭じゃないよな?
「怒楽は、『双頭の二つ蛇頭』。私達、レラージュ3姉妹より上の階級の守護者よ!」
道理で。それで、メデューやつビビッてたのか。ま、俺もかなりビビッていたからメデューのことを言えないが………。
「怒楽。そ、その蛇はあなたにあげるわ。それから、私がここに来た理由だけど、リュアレ姉様から聞いているでしょ?」
怒楽は、メデューから蛇をもらうと、首を刎ね、滴る血をグラスに注ぎ、一気に飲み干した。これって、共食いか?蛇って確か、あまり共食いはしない生き物だったはずだよな。
「怒楽は、特殊なスキルを持っているの。蛇の生き血を飲むことで、身体能力を向上させる。蛇が共食いをするケースは極めて稀よ。私の知っている中では、彼だけ………。だから嫌だったのよぉ」
確かに、できれば、この光景は見たくなかった。生々しい過ぎて若干の吐き気が僕を襲う。
「リュアレからの話か………。するとこいつらが、お前達に勝ったという輩か」
「輩ー!お前たちの命を救った輩ー!」
「そうよ。屈辱的だけど、心外だけど、間違えないわ。それと、今回はタイパン兄に用があってこいつらを連れてきたのよ」
命の恩人に対して、随分な言い方をしてくれるな。相変わらず、僕達に対する態度はツンツンだ。
「メデュー。そのタイパンって言うのが、一つ蛇頭か?怒楽よりも当然強いんだよな………?」
二つ蛇頭でも、この威圧感。一つ蛇頭になんて会って、僕はその場に立っていられるのだろうか。
「タイパン様は、最近めっきり姿を見せない」
「ゴルゴーン様のお姿も、最近めっきり見なーい!」
側近なのに近くにいない?どうゆう側近だ?ゴルゴーンもか?2人で夜逃げでもしたのか?
「リュアレ姉様も、タイパン兄と最近連絡が取れないと言って心配していたわ」
「メデュー。ひとまず、一つ蛇頭のところに連れて行ってくれないか?ここでじっとしていても現状は変わらない。行けば何か解るかもしれない」
「では、私も一緒に行こう。鈴空。お前達は、ここではスキルも魔法も使えまい」
「三つ蛇頭を助けてくれたお礼だー!一肌脱いでやるー!」
僕達は、頼もしい仲間、もとい助っ人を得た。何はともあれ、今の僕達には情報が必要だ。常婆に関する情報。なんでも良い。少しでも手がかりになるなら、敵とでも手を組んでやる。それが鈴空流だ。
画して、僕達5人、奇妙なパーティーは、一つ蛇頭の元へ歩みを進めることとなった。
読んでいただきありがとうございました!
是非、感想をお願いします^^




