7話 二人きりのデート1 出発
前回の続きです。
誕生日当日、私こと天使 明日菜は、自宅前で戸惑っていた。
「ど、どういうことよっ!?双葉!!」
『それが急に、弟達のお守りをまかされてさ』
「琴羽もいるの?」
『弟達につかまってさ、連れていけって煩くて、だから行けそうにない。あんたは、そっちの事気にしなよ』
『せっかくの、デート楽しみなよ。明日菜』
双葉から代わった琴羽がそんな事を言う。
「…………っ!!」
私は改めて自覚させられる。
「り、凜くんだけじゃ……ちょっと待って、二人って事は、一樹くん達は!?」
――緑川 一樹――凜くんの、親友で……
『あぁ、あのトラブルメーカーは、補習、斗真は、巻き込まれてんでしょ?』
――桃生 斗真――双葉が言ってた様に、一樹に、よく巻き込まれている。
…………補習って何をやったのかな?
ちらりと、トラブルメーカーの、もう一人のメンバー、凜を見ると彼は。
くくっ、と笑いを堪えていたりする。
…………理由知ってるのね。
明日菜が、考えていると。
『じゃあ、そう言う事だから、健闘をいのる』
「あ、ま…………」
待ってと、明日菜が言い終わるまえに、電話が切れた。
……もぅ…………。
「どうだった? その様子だと、来れないか」
凜が、明日菜を伺う。
「双葉は弟くん達のお守りで、琴羽も一緒みたい」
「で、あの二人は補習と?」
「そうみたい。何か知ってる?」
明日菜は凜も当事者じゃないのか? と、その目が問うている。
「理由は、知ってるけどな、まさか今日捕縛されるとはね」
知らなかった。と、凜は言った。
「捕縛したなっちゃんに敬礼、一樹たちに黙祷」
――なっちゃん、雨宮 七海――私達の担任で、なっちゃん、ななみ女史、と呼ばれていたりする。
「な、何て言うか、まだ生存の可能性も…………」
明日菜は、哀しげに、目を伏せる。
「さあ、いざ行かん、彼らの犠牲を無駄にしないように」
そう言って、明日菜の手を取り歩き出す。
「あ……」
小さく呟く、明日菜の顔に朱が差す。
「えっと、結構、薄情だよね?」
「んー、ある意味、美人教師と居られるんだから、そう考えれば、あいつらも浮かばれるだろ……きっと」
明日菜は目をパチクリさせて、くすっ、と笑う。
「男子ってどうしようも無いね。なんだか面白い」
「ただ、子供なだけだと思うけどな」
そう言って凜が笑うから、明日菜も釣られて一緒に笑う。
それからしばらく歩き駅に着いた。
ホームで電車を待つ間、明日菜達は他愛のない話をして、時間を潰す。
そんな中、明日菜は少し不安に思う。
……今日の私の格好……変じゃないよね?
それとも興味無いとか? 何の反応もないし……。
「…………」
「なに?」
凜の視線に気付き、どうしたのか問うと。
「そう言うの、新鮮だなって。明日菜って姿勢いいから、良く似合ってると思って見てた」
「!!」
ジッと、見るもんじゃないよなわりぃ、と言って照れ隠しに外方を向く。
一方、明日菜はというと。
え、似合ってるって…………。
「なんつーか、見惚れていたら言うタイミング逃した」
………………う、そ……だって、こう言うのに冷めた感じだったのに……。
「あ、ありがとう……」
明日菜は、嬉しさでたまらなくなる。
……まだ今日は始まったばかりなのに、このままじゃ、
ドキドキで溺れそうだよぉ………………。
電車がホームに入り、電車に乗ると二人はドアの近くに立つ。
「それで、こんな早くから何処へ行くの?」
「ついてからってことで」
……意地悪だ、けど……今だって、私を庇う立ち位置にいてくれる。私は、男性が苦手だ、その理由を知ってるから、守ってくれているの…………?
揺れる身体が時おり彼に触れる。
無言の一時が、心地好く過ぎていく。
甘い優しさにときめき、溺れ逝く心。
でも、少し切ない気持ち。
どうでしたか?楽しんでいただけたでしょうか?
楽しんでいただけたなら、嬉しいです。
それでは、8話 二人きりのデート2 で、お会いできますように。