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瞑想世界112
一人ぼっちは寂しいよと、僕は言った。
成美ちゃんの涙が複眼になり、夢として滴る世界。
僕は成美ちゃんの悲しみそのものとなり、村瀬への恋心に胸こがれる。
成美ちゃんの恋心を喰らう村瀬は、夢の片手間に、嘲笑うジェットコースターさながらに、激しく回転する冷笑のレール坩堝と化して行く。
成美ちゃん涙である僕は独りごちる。
「寂しい」
村瀬が冷酷に答えた。
「俺はお前など愛していない。死ね」
僕である成美ちゃんの涙は、悲しみにそのラインダンスを止めてしまう。
死ぬように止まった時間の中で、涙のラインダンスも止まり、はかなく寂しさを湛える。
踊る涙の調教師たる田村が言った。
「恋した涙では狂った村瀬に風穴は開かないぞ」
僕は涙から空洞のホールに変身し、言った。
「一人ぼっちは寂しいよ」




