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大切なもの5

明には、メグが職場でいつもお世話になっている。

めぐはSSPを辞めて地球で暮らす決意をしていたのだが、彼女の貴重な経験を役立てて欲しいとの要望が強く、メグはSSPの顧問に推薦されたのだ。

最近は休みを取っているが、それまではSSP本部に出勤して、MSの事故の検証と再発防止のために働いていた。

彼女の働きかけにより、MSをミサイル攻撃した集団とは和解が成立した。

そして、世界中全てが等しく、発展と平和を享受する事へ向けて、取り組みを始めた。

MSには、全ての地域から、決められた数の学生を招いて医学教育を行う事になったのだ。

また、そのキャンパスは地上にも作られ、学生達はMSとの間を定期的に行き来して学ぶ事となった。人が、長期にわたって宇宙に縛られる事が無いようにするためだ。人の住むべき場所は、地球なのだから。

大きな改革だったが、メグが頑張れたのは、紛れもなく明のバックアップのお陰だ。

 

ジョーは、今でもあの大学で医学を学んでいて、MSと地球を行き来している。そして俺が医学の勉強を続けることを、助けてくれている。

俺は、今のところは学校に通って学ぶ事が出来ない。まず父親としての役目をきちんと果たせるようになる事が優先だから。でも、将来的には学校に行って資格を取るつもりだ。

現在は、ある農園に弟子入りして、農業を学んでいる。それは、地球と共に生きながら、沢山の人々の命を守る大切な仕事だと感じたからだ。学べば学ぶ程、奥が深くて楽しい。一生続けたい仕事だ。

 

家の横に車を停めると、携帯が鳴った。

ジョー達かな?画面を見ると見慣れない番号。とりあえず出てみた。

「はいオガタです」

「あワタル?俺だけど、携帯変えたから…あ、ちょっとシューラ!」

「ワタル?この携帯は俺のだから。ボブはいつまで経っても悪戯好きで困るんだよ。…あっ」

すると携帯から次々と聞こえていた騒がしい声が、一転して落ち着いた雰囲気に変わった。

「ワタル?この携帯は、私のだからね。登録しといてくれ。3人で今から押しかけるよ」

この声はもちろん、アンドレイだ。

「えっ?今って?」

「あと15分くらいで着くから。じゃ」

そこで電話は切れてしまった。

ボブとシューラは相変わらずだな。…つい笑みが漏れる。明るくて楽しくて、悪戯好きで。

でもクールに見えても一番悪戯好きなのは、アンドレイじゃないのか?俺を驚かせるために携帯番号まで変えて。

今日は賑やかになりそうだな。俺は笑いながら時計を見た。

…?!あと15分って、ジョーや明より早く着く事になる。前別れた時、確かにアンドレイは『家に押しかけるから』言ってたけど…、あまりにも急な話だ。俺は急いで玄関に駆け込んだ。

玄関のドアを開けるとすぐに、中へ呼び掛けた。

「メグ!大変だよ。ボブとシューラ、それにアンドレイが15分後に来るんだ!」

俺は慌ただしく家に入ると、メグのいるキッチンへ向かった。するとメグの方がキッチンから出てきた。

「お帰り、ワタル。買い出しありがとう。重かったでしょう?」

メグはそう言って、蒸しタオルを渡してくれた。

俺が帰ると、メグはいつも迎えに出てきて、タオルを渡してくれる。結婚したあの日からずっと。その姿を見て、いつもどんなに元気づけられた事か。

今日なんか特に忙しいのに…、それでもメグは俺の事を気遣ってくれている。そして、全く焦る様子は無い。

「大丈夫よ。まあ、食事は足りないと思うけど、それはそれで許してもらいましょう」

…母親になると、こんなにも落ち着いてしまうものなんだろうか。

昔は何に対しても必死になっていたのに。最近は、うまく肩の力を抜くコツを掴んでいるようだ。

 

メグのおなかは、日に日に大きくなっている。

…僕達の子供が、そこには居る。

大切な命。かけがえのない宝物。

俺は、蒸しタオルでかじかんだ両手を暖めた後、メグのおなかに手を触れた。

来月には、君に会えるね。

君と、君のお母さんを、僕は一生大切にするからね…。

 

過去の俺は、MSで暮らす事に夢を求めていた。

しかし、僕の大切なものは、今、ここに在る。

そして、これからもずっと。

その果てしない力で僕達を優しく包み込む、この奇蹟の惑星で―。


やっと。終わりました!みなさま、長い間見守ってくださりありがとうございました。不定期な更新でじれったかったかもしれませんが、こうして完結できたのは、読んで下さる方々がいたお陰です。また時々思い出して下さって、このお話を楽しんでいただければ、こんなに嬉しい事はありません。今まで本当にありがとうございました。

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